バチカン奇跡調査官シリーズ、短編集第4弾「天使と堕天使の交差点」

大好きなバチカン奇跡調査官シリーズです。
短編集もなんと第4弾!!
いつものロベルト&平賀、ほかにチャンドラ・シン博士、
ビル・サスキンス捜査官、そして青年司祭・ジュリア
が登場します!

イタリアの宝石店に現れる、処刑された女性・
ベアトリーチェの幽霊を払うためエクソシストを呼んだ店主。
バチカンの神父・ロベルトと名乗ったが
それは偽ロベルトだった。その汚名を晴らすべく、
平賀とロベルトは、宝石店に向かう。
そして二人はベアトリーチェと思われる霊と遭遇
するが・・・・?

ロベルトと平賀、またバチカンを翻弄する、
美貌の青年司祭・ジュリア。彼は上司である
ルッジェリのために豪奢な宴を催す。
しかし、その宴に出された豪華な食事には
恐るべき秘密が隠されていた・・・。
神をも恐れぬ、ジュリアの奸計に絶句する!

FBI捜査官ビル・サスキンスの前に現れたのは
美しき秘密工作員、エリザベート。
彼女は、ウオーカー博士が追う陰謀にビルの両親が
関与していると疑い、さらにFBIに巣食う
イルミナティの動向を探るため、ビルに接触を試みた。
しかし・・・・!二人はどうなる・・・!?

チャンドラ・シン博士は、熱心なジャイナ教徒だ。
ジャイナ教で最も守らなければいけないことは
非暴力・不殺生である。
ある日シン博士は、仕事中のうっかりで、ねずみに
怪我を負わせてしまう。パニックに陥ったシン博士。
彼が助けを請うたのは、ロベルト・ニコラス神父だった。
いつもクールで感情を読み取れないシン博士。
しかし、博士の人間的魅力がたっぷり味わえる一編。

今回は、偽ロベルト事件から端を発した幽霊騒ぎや
チャンドラ・シン博士の意外な一面、ビル捜査官の
近況、そして天使の貌をした悪魔・ジュリアの
恐るべき所業が描かれる・・・。

ユーモアとシリアスとホラーがミックスされた
極上の短編4編が収録!
文句なく面白いです!!

『バチカン奇跡調査官 天使と堕天使の交差点』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥640(税別)

怖すぎる!「家」の恐怖を描く!「スイート・マイホーム」

発売後から、今までにない怖さ、おぞましさということで、
話題になっている、ホラーミステリー、神津凜子さんの
「スイート・マイホーム」(講談社)を読みました。
小説現代長編新人賞受賞作です!

スポーツインストラクターの賢二は、冷え性で悩む妻のため、
1台の大きいエアコンで家中を暖められる、「まほうの家」と
銘うった新居をを購入した。

だが、入居後まもなく夫の友人や、妻の友人のこどもから
家が怖いと言われる。妻も時々家の中で他人の視線を
感じるようになり、赤ん坊の瞳には、不気味な影が
映り込む!さらに地下室では長女が何者かに捕まり
泣き叫ぶ!そしてついに関係者の一人が怪死を遂げる……。

幸せを絵にかいたような家族。しかし夫には決して
妻に言えない秘密があった….。
妻は、表面的には良い妻、良い嫁、良い母親であろうと
務めている。
しかし、そのひずみはやがて家族の間に暗い影を落とす。

家に潜む狂気が、妻・子どもたち・夫の兄弟までも蝕んでゆく…..。
冒頭から漂う怪しげな不安感。
その不安感は読み進めると恐怖に変る!暗い影は、人間の狂気か、
それともモンスターか?最後の最後まで気が抜けない。
イヤミスもホラーも超えた、おぞましいミステリー。
新人離れしたストーリー展開に脱帽です!

『スイート・マイホーム』
著者:神津凜子
出版社:講談社
価格:¥1,500(税別)

最凶の悪女、さらにパワーアップ!「ふたたび嗤う淑女」

中山七理さんの新刊「ふたたび嗤う淑女」を読みました。
「嗤う淑女」で登場した最強の悪女。彼女がパワーアップし、
再び人々を翻弄します。
人を陥れるその手練手管に背筋が凍ります・・・。

女性活躍推進を掲げる、国会議員・柳井耕一郎の
資金集めの隠れ蓑として立ち上げられたNPO法人。
その女性事務局長は、募金活動でも資金が集まらず、
柳井の秘書から何度も叱責を受けていた。
秘書に強烈なライバル心を持っていた事務局長は
同僚の女性から投資の話を持ちかけられる・・・。

社会情勢に不満を持つ人々の心を言葉巧みに操り
信者を集める宗教法人。信者からお布施と称して
多額の財産を集めていた。しかし次第に信者の
数が減り、金策に行き詰まった副館長は、信者の
一人から耳寄りな情報を得るが・・・・。

柳井耕一郎の後援会会長である不動産屋の社長は、
半年前に入会してきた男の口車に乗せられ、
都議会議員選挙に立候補することに。そこで
彼から紹介を受けたのは、当選請負人だった・・・。

国会議員・柳井の周りに集まる金に操られる人間たち。
彼らが引き合わされた投資アドバイザー「野々宮恭子」。
しかしその正体とは!?

欲望にかられたあさましい人間たち、その人間
たちを翻弄し地獄に突き落とす女。
その女がいかにして彼らを死地へと追いやるのか?
女の手腕は恐ろしいほどに見事だ。
そしてその女に騙された人間たちの末路は悲惨だ。
しかし、同情すら覚えない。

この作品はそこまで冷徹に人間の愚かさを描いている。

どんでん返しの帝王が放つ、恐怖の逆転劇!!
読みだしたら止まらない、イヤミスの極致!

『ふたたび嗤う淑女』
著者:中山七里
出版社:実業之日本社
価格:¥1,600(税別)

鳥肌物の面白さ!「カササギ殺人事件」

2018年の日本のミステリーランキング、
海外部門で4冠を達成した「カササギ殺人事件」。

読み終わった時、なんだかざわざわして鳥肌が
たってしまった。
凄い本に出会った時、私の体はそのように反応してしまう。

人気脚本家のアンソニー・ホロヴィッツが
「シャーロック・ホームズ」シリーズ
「007」シリーズ(いずれも財団公認)
以外で描いたオリジナルミステリー作品。

構想15年、面白いミステリーを描くぞ!という
著者の思いがすべて詰まっている!

上巻は、探偵・アティカス・ピントを主人公とした
クラシカルな展開と謎解き。アガサ・クリスティを
彷彿とさせる推理小説だ!

下巻は上巻の続きかと思いきや、読者は見事に騙される!
この設定!この展開に絶句する。
そして、絶句したままグイグイと読ませられる!!

ひとつの作品で二重の犯人当て(フーダニット)!
複雑にからみう人間関係は、人間の裏の貌を浮き彫りにしてゆく。

緻密に仕組まれた伏線の数々、そして暗号解読・・・。
アガサ・クリスティへのオマージュが炸裂だ!

こんなミステリー小説を今まで読んだ事がない。

アガサ・クリスティを愛して止まない著者の仕掛けた壮大な
トラップに酔いしれること間違いなし!

『カササギ殺人事件 上下』
著者:アンソニー・ホロヴィッツ著/山田蘭訳
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:上下各¥1,000(税別)

大人気!「後宮の烏」第2弾『後宮の烏2』発売!

シリーズ化を期待していた、白川紺子さんの
『後宮の烏』(集英社オレンジ文庫)。
第2弾が発売されました。

嬉しい~~~~。

後宮の妃でありながら、決して帝とは情を交すことのない
特別な妃・烏妃。

しかし、ある事件がきっかけで、時の皇帝・高峻と
出会い、彼らは「友」となった。
高峻の周りでは、烏妃と会うなど不吉だと言う。
しかし、高峻はなぜか烏妃・寿雪と話をすると
心が癒されるのだった。

第2弾の内容は、少年宦官の幽鬼出現の謎、、
自殺した妃に仕えた宮女の幽鬼の訴え、
烏妃暗殺未遂、妃付宮女惨殺事件など、
烏妃・寿雪がその謎を暴く。

幽霊・ゾンビ・妖怪・謎の仮面など
次々と異形のものが現れる!

不気味で謎めいた事件の数々は、この物語の雰囲気に
ぴたりとあてはまり、他の後宮小説と比較して
異彩を放っている。それがこの作品の際立った魅力で
そこにはまってしまう。

また、烏妃・寿雪を気づかう皇帝・高峻のさりげない
優しさが胸キュンだ。
決して「恋」に発展させてはならない、二人の関係。

烏妃をしばる「烏漣娘娘(にゃんにゃん)」とは
何か?
そして、烏妃暗殺を目論んだ、烏漣娘娘が恐れる
「梟」とは何者か?

数多の謎を残し、物語第3弾に繋がるか!?

『後宮の烏 2』
著者:白川紺子
出版社:集英社(オレンジ文庫)
価格:¥620(税別)

慟哭の展開!羽州ぼろ鳶組シリーズ第4弾「鬼煙管」

羽州ぼろ鳶組シリーズ第4弾「鬼煙管」を読みました。
言葉に尽くせぬ面白さ!

京都で起こる奇怪な連続殺人を止めるため、
長谷川平蔵が最も信頼する、江戸の火消し、
松永源吾を京都に呼んだ。
松永は武蔵、星十郎とともに京都に赴く。

その京都では、葬儀の最中に死体から発火し
火事になったり、生身の人間から突如火が発生し、
大やけどを負い死んでしまう!という事件が
次々と起きていた。

京の人たちは「妖怪」の仕業だと言い、誰も
近寄らず、助けようとしない。
江戸とはあまりにも違う民衆心理に、松永たちは
とまどうばかり。

さらに、長谷川平蔵も京都の奉行所のあり方に
憤りつつ、その中でも必死に己の職を全うしようと
していた。そんな長谷川の姿に部下たちの心も動く。

奇怪な事件の犯人を捕らえようと必死に動く平蔵。
不気味な火事をとめるために、松永らは奔走する。
やがて、浮かびあがってきた犯人像。
だが、その陰には京都西町奉行の長谷川でさえ
手出しすることの出来ない大物の存在があった。

哀しい過去を持つ平蔵の息子・銕三郎は、悪を絶対に
許すことは出来ない。その想いが先走って、父・平蔵や
松永とも衝突することがしばしばあった。

京で繰り広げられる不気味な火付と殺人事件を、
松永・平蔵親子・武蔵、星十郎が追う!

シリーズ史上最もミステリー性が高い作品で
謎解きの部分もとても面白かった!
そして、2巻「夜哭鳥」との繋がりも興味深い。

次は第5巻を読みます。

『鬼煙管 羽州ぼろ鳶組④』
著者:今村翔吾
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥700(税別)

残虐非道盗賊VS.ぼろ鳶組!シリーズ第3弾『九紋龍』

大好きなシリーズ、「羽州ぼろ鳶組」第3弾は
「九紋龍」です。最強の男が登場します。

大阪で悪辣な強盗を追いつめるため、火付盗賊改の
長谷川平蔵は、京都から大阪へ出張っていた。
だが彼らは平蔵の動きを察知、江戸へと向かった。

江戸では、火事と非道な押込み強盗が続けて起こっていた。
その奇妙な偶然に、星十郎らは火事を起こし、その隙に
皆殺しの押し込み強盗を働いているのではと疑う。
長谷川平蔵が負っていたのは、その残虐非道な強盗集団・
千羽一家だった。

そんな中、新庄藩火消・通称〝ぼろ鳶〟組頭・松永源吾は
火付けを止めるべく奔走する。
だが藩主の親戚で、御連枝様こと戸沢正親は、国元の領民や
藩の財政事情から火消の削減を宣言。
正親の嫌がらせとしか思えないような態度に、松永は怒り心頭となる。

一方現場では、九頭の龍を躰に刻み、町火消最強と
恐れられる「に組」頭〝九紋龍〟こと辰一の乱入で
大混乱に陥っていた。
なんと辰一は野次馬狩りをおこなっていたのだ。
辰一はなぜそんなことをするのか?

次々と起こるピンチ!絶対的な危機に、どうなる!?ぼろ鳶組!

極悪な押込強盗軍団とぼろ鳶組の闘いに、新之助の剣が悪を斬る!

そして、九紋龍こと辰一の熱き火消魂が加わり、
怒涛の消火シーンは圧倒的な臨場感!

果たして千羽一家を捕えることが出来るのか?

ぼろ鳶組の支えは、松永源吾の妻、深雪だ。
今回の深雪の働きには舌を巻く。
また夫婦の間には新たな展開が!
強盗と火事・・・。すさまじい闘いのあとの心の癒しは
やはりこの二人のエピソード・・・。

巻を追うごとに面白さが増してゆく、羽州ぼろ鳶組シリーズ。
第4弾もほぼ読了!

『九紋龍 羽州ぼろ鳶組③』
著者:今村翔吾
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥700(税別)