スイーツとともに極上のミステリーを。『ショコラティエの勲章』

おしゃれなスイーツがふんだんに登場する、洋菓子も和菓子も大好きという人におすすめの、ロマンチックなミステリーの短編集です。絶対にスイーツを食べながら読みたくなる!!!

絢部あかりは、老舗の和菓子店「福桜堂」神戸支店で売り子をしている、スイーツ大好きの女性。父親が和菓子を作っていたのがきっかけで、和菓子だけでなく、洋菓子にも造詣が深い・・・?
あかりは、バレンタインの季節、「福桜堂」の2軒隣にある、洋菓子店『ショコラ・ド・ルイ』で不思議な万引き事件に遭遇する。
それがきっかけで、ルイのシェフ・長峰和輝と親しくなる。物語が進むうちにこの二人が急接近! しかし、あかりさんと長峰さんの関係は、苦みの利いたチョコレートみたい。大人~の関係?

ボンボン・ショコラ、ガレット・デ・ロワ、クリスマス・ケーキ、アイスクリーム、パフェなどなど、お菓子に隠された人々の幸福な思い出や切なる願いを、繊細にそしてミステリアスに描いた、とても美味しい7つの短編集。

その中でもはまさきが特に好きなのは『7番目のフェーヴ』。
友人の結婚式のお祝いに、ガレット・デ・ロワを贈ることにしたあかりたち。その中にフェーヴを入れて。
そして、6つの「ガレット・デ・ロワ」を贈ったのだが、なぜかフェーヴがひとつ多かったのだ。
7番目のフェーヴはいったいどこからきたのか・・・?
友人から相談を受け、あかりはその謎を解くことに・・・・。
なぜこの話が好きかというと、何度読んでも、お菓子がわからなかったから。
ガレット・デ・ロワってどんなスイーツ・・・?

はまさき、普段あまりスイーツは食べないんです。
時々めっちゃ食べたくなると、和菓子です。
特にみたらし団子が好きなのですが。和菓子にまつわるミステリーも読んでみたい!

『ショコラティエの勲章』
著者:上田早夕里
出版社:角川春樹事務所
価格:¥762(税別)

藤木稟さんのデビュー作「陀吉尼の紡ぐ糸」が角川ホラー文庫で登場です。

『バチカン奇跡調査官』シリーズの藤木稟さんのデビュー作が角川ホラー文庫で発売になりました。『探偵・朱雀十五の事件簿 陀吉尼の紡ぐ糸』です。
表紙のイラストがちょっと恐い・・・。
「バチカン」シリーズの原点ともいえる作品です。

舞台は昭和初期。日清・日露で大勝した日本が、中国大陸に目を向け始め、陸軍の発言力が増した頃の物語。
神隠しをテーマにした複雑怪奇な人間模様、そこで繰り広げられる男女の恋情。軍の思惑もからんだ殺人事件・・・。
神隠しの因縁まつわる「触れずの銀杏の木」の下で発見された男の死体。
しかしその直後、死体は消え去ってしまう。今度も神隠しなのか・・・?
一方、気の弱い新聞記者の柏木は、吉原担当の記者として、吉原の自衛組織の頭を務める、盲目の美青年・朱雀十五に出会う。
朱雀は元検事。そして今は吉原御用達の弁護士として、吉原を守っている。
キレすぎる故に、凡庸な人たちをコケにして楽しむ、ちょっとサディスティックな性格の持ち主。
気の弱い柏木を放っておけず、ついついいじわるに手を差し伸べてしまう・・・・。
このコンビとても良い感じ。
神隠しから次々と起こる不可解な事件を、朱雀十五はその怜悧な頭脳で解き明かしていく。

設定された、時代背景の詳細さ、神隠し伝説、宗教など、著者の博学ぶりも伺える、バチカンファンなら絶対にはまる、藤木ワールドが堪能できる、ホラーミステリーの傑作です。
第2弾『ハーメルンに哭く笛』も発売中です。

『陀吉尼の紡ぐ糸 探偵・朱雀十五の事件簿1』
著者:藤木稟
出版社:角川書店(角川ホラー文庫)
価格:¥743(税別)

言葉にできない感動・・・『私を知らないで』白河三兎

会社の同僚に薦められて読んだ、メフィスト受賞作家・白河三兎の描き下ろし長編『私を知らないで』。が素晴らしかったです。
デビュー作は、ユーモアチックなミステリー作品らしいです。何の予備知識もなく読み始めましたので、この作家がどういう系統の作品を描くのか全然わからず・・・・。でもそれだから良かったのかも・・・。

物語がどこへ向かうのか・・・?最初から謎だらけ。ミステリーなのか?青春小説なのか?恋愛小説なのかわからないまま、あまりの文章の美しさに何の抵抗もなく読んでしまいました。

転勤族で何度も転校を繰り返している中学生の黒田慎平は、新たに転入したクラスで自分の居場所をつくるため、静かに人間関係を探っていた。
この教室のボス猿は誰だ?一番苛められているのは・・・?苛められているというほどのことでもないが、まったく空気のような存在にされてしまっているのが、誰もが一目で美しいと思ってしまう、新藤ひかり。なぜか「キヨコ」と呼ばれている・・・。
慎平はひかりの美しさと、凛とした潔いたたずまいに惹かれていく・・・・。

今どきの中学生はそんなことを考えながらクラスにいるのか・・・。自分の甥っこの気持ちがこのシーンでちょっと理解できたりして・・・。
真平がクラスに溶け込んだ頃、新たな転入生がやってくる。
彼の名前は高野。
周りの空気をまったく読まない(読めない?)彼は、ストレートにクラスメートに突進していく。
そして「キヨコ」を守るために立ち上がるのだ。そんな高野に巻き込まれていく慎平。

謎めいたキヨコ。慎平が彼女を探ろうとするするシーンはミステリーチックで驚きの展開。
そして暗くてつらい過去を持つキヨコ。祖母と二人暮らしなのに、祖母の姿が見えない・・・いったいどこへいったのか?こういう謎もミステリー作家だから非常に上手い描き方。

ガラスのようにもろく、しかし残酷な十代の子供たちの心を美しすぎる言葉で紡いでいく。
そしてラストの着地点は、だれも想像だにできない!!あまりの感動で涙がとまらない!!
こんなに美しい小説読んだことがありません!ぜひぜひ読んでほしい。

『私を知らないで』
著者:白河三兎
出版社:集英社(文庫)
価格:¥650(税別)

有栖川有栖の人気シリーズ「臨床犯罪学者」がイラスト入りで再登場!

有栖川先生の作品は読みたいけどなかなか読めずにいました。
ところが、なんだか気になるイラストの表紙で、さらにタイトルが「臨床犯罪学者~」ときて、思わず手に取ってしまいました。それが有栖川作品を読むきっかけになりました。
この作品は、講談社文庫から『46番目の密室』と言うタイトルでも発売されています。
でもはまさきは、こちらの『臨床犯罪学者・火村英生の推理Ⅰ 46番目の密室』の方が好きです。

大学で、社会学を教える助教授・火村英生。彼は明晰な頭脳で難事件を解決し、「臨床犯罪学者」とよばれている。
そんな火村にいつもからかわれているのが、大学時代の大親友で推理作家の有栖川有栖だ。
あるクリスマス、二人は大御所推理作家・真壁聖一の別荘に招かれる。親しい仲間たちとクリスマスを祝う毎年恒例の行事だ。
火村・有栖のほかには、新進の女流若手推理作家、同じく男性推理作家、そして、真壁付の3人の編集者と、真壁の妹母娘。そして理由があって真壁が面倒を見ている男子高校生。
わきあいあいでパーティーが終わり、それぞれが割り当てられた部屋に入っていくと、不気味な光景があった。
しかしその夜はただのいたずらでということで片付いた。
有栖は深夜目覚めてしまい、ふと外を見ると雪の上に妙な足跡を発見。
泥棒か!?と不安になり、階下へ降りて行った。
1階のフロアで無事を確認するが書斎で妙な物音がした。
思わず書斎のドアを開けた瞬間、頭に衝撃を食らった。
そして有栖は気を失う前に、燃え盛る炎に包まれた暖炉に頭を突っ込むようにして倒れている人間を見てしまった・・・・。
密室で起こった事件を火村の推理で見事に解き明かす!
臨床犯罪学者・火村英生と推理作家有栖川有栖のコンビが活躍する、記念すべきシリーズ第1作がイラスト付きで登場です。
臨床犯罪学者、推理、軽井沢の別荘、密室、名コンビ・・・・などなど、ミステリー大好き人間にはたまらないキーワードがたくさん!そしてものすごく面白いです!

『臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室』
著者: 有栖川有栖
出版社:角川書店(ビーンズ文庫)
価格¥705(税別)

今野敏先生の最新刊は『同期』第2弾『欠落』。文句なく面白い!

待ちに待った今野先生の新刊が発売されました。しかも『同期』の第2弾!!
るんるんですぐに読んでしまいました!!

前作『同期』では、警視庁捜査一課の花形部署にいながら、今ひとつ刑事としての自覚が足りない宇田川刑事が、突然懲戒免職になり、さらに殺人事件の容疑者にされた同期の蘇我刑事を救うために奔走する。
その過程で、刑事としての覚悟と矜持を、先輩の植松&土岐刑事から厳しく、そして時には優しく教わり、一人前の刑事として成長していくストーリーだった。
土岐刑事が刑事としての本分とは何かを語ったシーンはものすごく胸に響いた。
はまさきは、この作品の中で土岐刑事が一番好きになりました。

さて『欠落』は、人事異動の話から。
土岐刑事が警視庁の特命捜査対策室に異動になり、宇田川はちょっと嬉しい。
さらに宇田川、蘇我ともう一人の同期の女性警官・大石陽子が警視庁捜査第一課特殊捜査係に配属になった。通称‘SIT’だ。
人事異動のあわただしさも落ち着いた頃、立てこもり事件が発生した。‘SIT’の出番だ・・・。
宇田川は同期の初の大仕事に期待しつつ、心配というちょっと落ちかない気持ちになった。
ところが、人質立てこもり事件は急展開を見せる。
女性捜査員が主婦の代わりに人質となったのだ。その女性捜査員とは大石。
犯人は大石をつれ、逃走してしまう。事件の長期化を心配する宇田川たち。
そこへ女性の変死体が発見されたとの連絡。まさか!大石が!?
蘇我に続き、またまた宇田川の同期の危機!?
女性の変死体発見ということで捜査本部が出来、宇田川たちは自分たちの捜査をすることになる。そうして調べていくうちに、似たような女性の変死事件が起きていたことに気が付く。
もしやシリアルケースではないのか・・・・?
新たに相棒となった、すっぽんの佐倉刑事。そして植松・土岐とともに迷走する捜査本部に風穴を開けるべく、宇田川は刑事としての本分を全うしようと動き出す!
衝撃的でスカッとするラストまでいっきに読める面白さ。
そしてそれだけではない何かをいつも感じさせてくれる!
このシリーズを読んでいると、自分に与えられた職務に忠実であれ!と植松・土岐に本当に言われているように感じる。
心がかっこいい刑事たちの奮闘に今回もやられました!!

『欠落』
著者: 今野敏
出版社:講談社
価格:¥1,500(税別)

ハリーポッターの次はリアル社会を描く!『カジュアル・ベイカンシー』

ハリー・ポッターシリーズで、世界中の読者を魔法の世界へ導いてくれた、J・K・ローリングが12月に新作を発表しました。
タイトルは『カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 Ⅰ・Ⅱ』(講談社)です。
ローリングが初めて描いた、大人向けの小説です。
イギリスの小さな田舎町で起こる事件をちょっとミステリーチックに描いていたりします。
イギリスの小さな街・パグフォード。その地方自治組織議会・パリッシュカウンシルの議員だった、バリー・フェアブラザーが急死した。
その死をきっかけに立て続けに事件が起こる。
Ⅰでは、パグフォードの住人達の人間模様と人間関係が詳しく描かれています。
上流階級を自負するモリソン一家、モリソン家と対立するジャワンダ医師。
バリーの親友だった、中学校の副校長コリン・ウオール。その息子のスチュアートと、プライス家の息子アンドルーとの関係、同級生の女子など様々な人々が登場します。
彼らの心の闇、本音と建前の微妙な心の機微。
人間のエゴむき出しな部分までこれでもかと描かれ、ハリーポッターの著者とは思えないほど。
リアルな現実社会を非常に冷徹な目線で描いています。
Ⅱでは、バリーの死で空席となった、議席を巡って大人たちが対立。
その対立はティーンエイジの子どもたちに暗い影を落とし、ないがしろにされた子供たちは、小さな復讐を大人たちに行います。
子どもたちの復讐でさらに対立が悪化する大人たち。
このエゴにまみれた大人たちに救いはあるのか・・・・!?
そして犠牲になるのはいつも子どもたち。
ラストに用意された結末に涙が止まらない・・・。
ラストの怒涛の展開は、さすが世界のストーリーテラーです。
読んでいくうちにページをめくる手が止まりません!!

登場人物が多いので、今井オリジナルの登場人物相関図を作成致しました。
店頭でパネルになっていたり、チラシとして配ったりしています。ぜひご利用ください。

『カジュアル・ベイカンシー 突然の空席 Ⅰ Ⅱ』
著者:J・Kローリング
出版社:講談社
価格:各¥1,500(税別)

『バチカン奇跡調査官』シリーズ最新作!メインキャラの秘密が明らかに!

あけましておめでとうございます。ミステリーブログ、今年もよろしくお願い致します。
お正月休みは読書と駅伝に夢中でした。
箱根駅伝を観つつ、CMの合間合間に本を読んでいました。器用な私・・・????
今年初めに紹介するのは、藤木稟さんの『バチカン奇跡調査官』シリーズ最新作、『天使と悪魔のゲーム』です。シリーズ初の短編集です。
短編集といえどもあなどれませんよ!!平賀、ロベルト、ジュリア、サウロ神父、ローレンなど、このシリーズに欠かせないメインキャラクターの過去や秘密が明らかになる!!それがとても面白い!『バチカン奇跡調査官』シリーズファンにはたまらない1冊。

第1話「日だまりのある場所」は、ロベルト・ニコラスの少年時代が描かれている。
心を病んでいたロベルトが、少年時代にサン・ベルナルド寄宿学校で出会った上級生。
彼との友情がロベルトの心を癒す。
やがて、バチカン宮殿で、ロベルトは平賀と運命的な出会いを果たす。
第2話「天使と悪魔のゲーム」は、奇跡調査の時に平賀が頼みにしている、ローレンの物語。ローレンと平賀の出会い、そして信頼関係がどのように結ばれていったのか・・・。謎に包まれたローレンの正体が明らかになりますよ。
第3話「サウロ、闇を祓う手」は、高名なエクソシスト(悪魔祓い師)で知られる、サウロ神父。平賀とロベルトの上司でもある。サウロがいかにしてエクソシストになったのか?サウロ神父の孤独な過去、そして悪魔との生死をかけた闘い!悪魔祓いのシーンは圧巻です。
第4話「ファンダンゴ」は、美貌の青年司祭として、ロベルトと平賀に会うが、実は悪の秘密結社‘ガルドウネ’の一員。悪魔のような司祭、ジュリアの秘密が明らかになります。

心温まるエピソードあり、悪意の余韻を残す恐いエピソードもありと盛りだくさんの『バチカン奇跡調査官』シリーズ最新作です。

『バチカン奇跡調査官 天使と悪魔のゲーム』
著者: 藤木稟
出版社:角川書店
価格:¥552(税別)