「腕貫探偵」の次はこれ!西澤保彦さん「ぬいぐるみ警部の帰還」

3月29日は「腕貫探偵」シリーズの著者、西澤保彦先生の
トークショー&サイン会が本の学校で行われます。
ドキドキわくわくです。

西澤先生の「腕貫探偵」シリーズ以外のユーモア
ミステリーを読んでみました。
「ぬいぐるみ警部の帰還」(東京創元社)です。
昨年の6月に発売された作品です。
「ミステリーズ」に収録された作品が1冊にまとまりました。

ぬいぐるみ警部

「腕貫」さんの世界にすっかりなじんじゃったはまさきですが、
ぬいぐるみ偏愛のイケメン警部、なかなか素敵でした。
眉目秀麗で、どんな修羅場でも動じない、20代の若き警部・
音無美紀(よしき)。あまりの美貌に、聞き込みで出会う女性は
警部になんでも話しちゃう。彼の部下の女刑事・則竹佐智枝は、
捜査中にも関わらず、妄想をかきたてられる一人。ミステリ小説
オタクの江角刑事、その相棒・桂谷刑事とともに殺人事件に
挑みます。
美貌の警部は、ちょっとトロイ?かなと思いきや、
江角刑事お墨付きの名探偵!現場にのこされた「ぬいぐるみ」
から鋭い洞察力で事件解決の手がかりを発見・・・・。
ぬいぐるみにのみ反応する音無警部に思わず笑っちゃう。
「ウサギの寝床」「サイクル・キッズ・リターン」
「類似の伝言」「レイディ・イン・ブラック」
「誘拐の裏手」の5編の短編集。
どの作品もぬいぐるみが重要な役割を果たしています。
小物をこんなに効果的にミステリーに使うなんて!凄いです。

「腕貫探偵」シリーズの次に読むならこの作品をおススメ。
4月中旬に発売される、「ミステリーズ!(64)」から
「ぬいぐるみ警部」シリーズの連載が始まりま~す。

『ぬいぐるみ警部の帰還』
著者:西澤保彦
出版社:東京創元社
価格¥1,500(税別)

乾くるみ「新装版 塔の断章」は謎解き恋愛ミステリーの決定版!

[乾くるみさんと言えば、「イニシエーション・ラブ」です。
ミステリーなの恋愛小説なのか?
でも最後の一行で物語の全てをひっくり返しちゃうくらいの衝撃。
先日、テレビで芸人さんが紹介して、またまた注目度アップ。

そんな乾さんの「謎解き恋愛ミステリー」を読みました。
それが「新装版 塔の断章」です。

塔の断章

お腹の子の父親はあなたよ・・・。
別荘の尖塔から転落しした美貌の社長令嬢・香織。
その悲劇が起きたのは、ある小説のゲーム化を企画するメンバー8人が
別荘に集まった夜だった。
父親は誰なのか?本当の死の理由は?
小説家の辰巳まるみとゲーム化を企画するチームリーダー
天童が、香織の兄、秀一の命で事件の夜集まったメンバーから
詳しい事情を聴いてゆく。そして辿りついた真実とは?
恋の激情と嫉妬が交差し人間を狂わせる・・・。
男女の愛憎の果てに起きた事件なのか?

乾マジックと言われる手法で、読者を完全に騙してしまう
乾ミステリー。
今まで読んだ乾作品は全てその手法にはまり、騙され続けたはまさき。
今回は絶対に騙されないぞと、冒頭のシーンから一行たりとも
気を抜かず読んだというのに・・・・。
読み終わったら、あれれ・・・普通に終わったけど。
乾マジックとはどこに・・・?
と思いながら読み終わって3日後、気になって冒頭から読み返したら
おおおお~っとこれは、こんなところで騙されていたとは!
しかも、はまさき、読み終わって3日も経ってわかるとは、とんだ鈍感
あほだあ~。
それとも、それだけ乾さんの騙しのテクニックが上手かったということ?
う~ん。くやしい。
でもそこが乾くるみさんなのです。
今回もやられた・・・・。です。

『新装版 塔の断章』
著者:乾くるみ
出版社:講談社(文庫)
価格:¥552(税別)

新たな女性刑事登場!『警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結』

昨年から人気の女性刑事ものです。
『警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結』シリーズ、第1弾『フェイスレス』。
昨年の6月に発売されたばかりの新シリーズで、著者は沢村鐡さんです。

深町秋生さんの『組織犯罪対策課・八神瑛子』シリーズの美貌の凄腕悪徳女刑事や、
吉川英梨さんの『女性秘匿捜査官・原麻希』シリーズの猪突猛進型のちょっと痛い
女刑事とは違い、ごくごく平凡で地味な設定の女性刑事。
でもどことなく芯の強さを感じさせる、ひたむきな女性刑事として
描かれていて、とても好感が持てました。

フェイスレス

ある大学で爆破事件が起こり、外国人留学生から評判の悪い
教授が殺された。捜査本部ができ、墨田署刑事課の一柳美結巡査も
捜査に加わることになった。
爆破現場近くにいた、講師の佐々木忠輔と彼に学んでいる留学生
たちに事情聴取をする美結。話から、佐々木講師は爆破犯人を
目撃したという。しかし顔はわからない!それはどういうことか?
佐々木講師は、相貌失認症という先天性の傷害を持っていたのだ。
佐々木講師への疑惑が深まる中、第2の爆破事件が起き、中国からの
女子留学生が行方不明になってしまう。
一方、捜査本部では国際的サイバーテロ‘C’の名前が被疑者として
浮上していた。

サイバーテロリストVS中国マフィアの抗争か?
佐々木忠輔の天才的頭脳、留学生たちの怪しい経歴、
捜査するうちに浮かんでくる、数々の謎。
だれが、何のために爆破事件を起こしたのか?
本当に狙われたのは誰なのか?

刑事課の捜査、公安の事案、複雑に絡み合い
ゆき詰まる殺人事件の捜査。突破口はあるのか?

めまぐるしく展開する物語は斬新さが際立ち
かっこいい。
そしてヒロインは誰からも愛されるひたむきな女刑事。
彼女がどう動き、いかに成長するのか?
シリーズを重ねるごとに謎が解き明かされていく・・。

超おススメの警察小説です。

『フェイスレス 警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結』
著者:沢村鐡
出版社:中央公論新社(中公文庫)
価格:¥724(税別)

「腕貫探偵」シリーズ最新刊発売!西澤先生をお呼びしてイベントもやります!

待ちに待った!腕貫探偵シリーズの最新刊が発売になりました!
タイトルは、『探偵が腕貫を外すとき 腕貫探偵巡回中』です。
新刊刊行を記念して、著者の西澤保彦先生をお呼びして
『西澤保彦さんトーク&サイン会』を開催します。
場所:本の学校今井ブックセンター2F多目的ホール
日時:3月29日(土)午後4時~
入場無料です。上記の新刊をお買い上げの上、お申込みできます。
「腕貫探偵」シリーズについて色々お話して頂きます!
詳細はこちら↓

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さてさて、はまさきはこの新刊を読みました。
待ってたよ~腕貫~。と思わず一言。
今回も短編集です。ものすごく面白かったです!

腕貫新刊

第1話「贖いの顔」は、宅配会社で配送員をしている青年が出会う、恐ろしい出来事。
毎年同じ日、同じ時間に彼が配達するビルで飛び降り自殺が起こる。
近いうちにその日がやっってくる。彼はその恐怖に耐えきれず、会社をやめる
決心を弟に打ち明けている。場所はけっこうお高いハンバーガーショップ。
そこへ、絶世の美女が風変わりな男とやってくる・・・・。

第2話「秘密」は、ある男性が亡くなり、その葬儀にやってきた男。
なんとその男と亡くなった男性の関係は、ありえないものだった!?
不倫の果てに女性を殺した男。しかしその夫は男の代わりに
警察に自首したのだ。なぜ?ずっと心にしまっていた男だったが
抱えきれずに、風変わりな市民サーヴィスの男性に打ち明けてしまう。

第3話「どこまでも停められて」は、孤独で投げやりな生活をしているある男性。
事業は上手くいきお金はある。なので、高価なマンションに引っ越しす。車はないが
不動産屋に頼み込まれ、駐車場は借りた。だが、日々アルコール漬け。
それを心配した友人が、車でも買ったら、酒を飲まなくなるんんじゃない?
と言ったがどこ吹く風。だが、ある日から男性の借りている駐車場に
毎日違う車が停められるようになった。不気味に感じた男性は
友人に相談するが、埒があかない。そんな時、腕貫をした風変わり男性の
もとへふらふらと・・・・・。

第4話「いきちがい」は、~十年まえに学校の校庭に埋めたタイムカプセルを
掘り起し、記念パーティーを開こうと、住吉ユリエが派手なパーティーを企画した。
そのために念の入った招待状をクラスメートに送った。だがその日に集まったのは
数人。当時、担任の先生も呼び派手にお祝いしようとしていたが。
そんなとき、担任の先生を迎えに行ったクラスメートの男性が変死体で見つかった。
それからとんでもない過去に導かれる・・・・

鋭い洞察力で謎を解決する!
我らが腕貫探偵の今回の活躍も鮮やか!!!
そしてこのラストがめちゃめちゃ良いですよ~
腕貫&ユリエのその後はどうなるのか・・・
次回も絶対に楽しみです。

『探偵が腕貫を外すとき 腕貫探偵巡回中』
著者:西澤保彦
出版社:実業之日本社
価格:¥1,200(税別)

警察小説の王道!「警察庁から来た男」

佐々木譲さんの警察小説、北海道警シリーズ第1弾『笑う警官』の続編の
形となる、第2弾『警察庁から来た男』がものすごく面白かった!
タイトルがいいんです。「警察庁」から来た男はいったい何だ!というのか?
本を開く前から気になる!気になる!

警察庁から来た男

北海道警察本部に警察庁から特別監察が入った。
監察官は、警察庁の若きキャリア、藤川警視正だ。
藤川は、半年前、道警の裏金問題の為に百条委員会で証言した津久井刑事に監察の協力を要請した。
一方、札幌大通署の佐伯刑事と部下の新宮刑事は、
ホテルでの部屋荒らしの捜査を進めていた・・・・。

この作品も「笑う警官」に続き、道警に巣食う不正を暴くというもの。
百条委員会で証言した、津久井は「裏切り者」のレッテルを
貼られ、閑職に追いやられていた。
藤川警視正に協力することにより、さらに孤立するが、
佐伯刑事始め、前作から引き続き登場する仲間たちが津久井&藤川をサポート。
今までの警察小説では、警察庁キャリアというとダメ警察官?というイメージ
だったが、藤川警視正は警察官としての正義を全うすべく、突き進んでいく。

正義の男・藤川の描写が、この作品を前作以上に面白くしている。
彼の信念が、巧妙に仕組まれた不正の実態と、その背後にある大きなものを
炙り出してゆくのだ。
現場の刑事とキャリア警察官の思いが一つの方向性へと向かっていく
過程がスリリングな展開の中に、味わい深く描かれていて、
最後の一ページまで目が離せない。

警察小説の醍醐味が思う存分味わえる作品です。

『警察庁から来た男』
著者:佐々木譲
出版社:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
価格:¥629(税別)

骨太の警察小説『刑事の骨』

ずっと以前に永瀬さんの「退職刑事」を読み、
心に残っていました。
そして今回は「刑事の骨」というタイトルに惹かれ、読んでみました。
冒頭から、ハラハラドキドキの圧迫感。凄いです。
冒頭とクライマックスに大きな山があり、読み応えはたっぷりです。

刑事の骨

1993年、連続幼児殺人事件が発生。
捜査本部で指揮を執っている不破は、ノンキャリで、
出世した辣腕刑事だ。
3人目の被害者について、犯人から直接捜査本部に
電話があり、犯人との交渉に指揮官である不破が当たった。
しかし、不破は犯人との交渉で大失態を犯してしまう。
同じとき、不破の同期で、万年ハコバンの田村は警邏中だった。
雨の中、高校生二人連れに職質をかけた後、近くの電話ボックスで
妙な男を発見。田村はその男に職質をかけた。
だが、その男は田村を見るなり電話を放り、脱兎のごとく
駆けだした。田村が職質をかけた男こそ、不破と電話で話していた
連続幼児殺人事件の真犯人だったのだ。
電話口で不破からその旨を聴き、「ぶち殺せ~」と命令された
田村は、射撃の腕前だけは評価されていたので、逃げる
犯人を追いつめた。しかし、射撃を手順通りに踏んだため
真犯人を取り逃がしてしまったのだ。
その後、4人目の犠牲者が出てしまい、警察の信頼は失墜。
不破の命令はそのまま録音されていた上に、犯人との交渉が
酷い有様だったため、不破は捜査の指揮権をはく奪され、
窓際に追いやられてしまう。さらに田村も犯人を取り逃がしたと
して、刑事になるチャンスもすべて失い、ハコバンで通すことになった。
その後、犯人の行方は杳として知れず、17年の歳月が過ぎ去った。
ここが、冒頭の山場。すごい迫力と緊迫感で、忘れられないシーン。

後半は、田村が不破の元を訪ね、その夜に変死を遂げるところから
始まる。田村が何のために自分に会いに来たのか・・・?
時効が成立してしまったが、17年前に不破と田村の失態で
取り逃がした、連続幼児殺人事件の真犯人を追いつめようと
していたと推察。田村の無念を晴らすために、不破は刑事としての
矜持を取り戻し、真犯人をつき止めようと奔走する・・・。

退職した同期の元警察官が、自分の人生を取り戻すために
真相を暴こうとする。その執念と、クライマックスの
激闘がしびれる!!
大興奮の警察小説です。面白かったです。
警察小説好きでも、まだ読んでいない人にぜひ読んで欲しい1冊です。

『刑事の骨』
著者:永瀬隼介
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥750(税別)

今野敏さんの文庫最新刊「軌跡」は傑作短編集。

今野先生の短編集が発売されました。
角川文庫から初だと思われます!
「軌跡」です。
短編の中で、該当するタイトルはないので、
単行本未収録の短編を集めて今野先生の作品の
‘軌跡’としてつけられたタイトルだと思います。

軌跡

第1話「老婆心」は、「刑事調査官」シリーズ。島島コンビが活躍する警察小説。
大島巡査部長&湯島巡査が管内で発生した殺人事件を、心理調査官の島崎優子
を加え島島島トリオで解決してゆく。捜査本部が立った直後、妻から
「母親が倒れた」との連絡が入り、仕事か母親か苦悩する。方や、
島崎心理調査官も上の空でおかしい。それぞれ悩みを抱えながら捜査するが・・・・。
母の気持ちを知った時、タイトルの意味がすとんと落ちる・・。
上手いなあ~今野先生って。この「老婆心」は新潮文庫の、警察小説アンソロジー
『鼓動』に掲載されている、「刑事調査官」の第2弾です。
また読みたくなってしまった!

第2話、第6話は空手の物語。
第4話「タマシダ」はSFホラー。
さえない会社員のアイディアからヒット商品が生まれたが、
会社員はそこから狂気へと堕ちていく・・・。
とても不気味だったけど、奥が深くてとても面白かった。

第5話「生還者」もSFもの。

何でも描けちゃう今野先生の魅力がたっぷりと詰まった
贅沢な1冊です。

『軌跡』
著者:今野敏
出版社KADOKAWA(角川文庫)
価格:¥520(税別)