前代未聞の誘拐事件!「ハーメルンの誘拐魔」

中山七里さんの新刊「ハーメルンの誘拐魔」を読みました。
ノーマークだったので、新刊台で見つけた時は凄く嬉しくて
思わず買ってしまいました。

「刑事 犬飼隼人」シリーズです。

ハーメルン

中学3年生で記憶障害を発病した少女が失踪した!
病院帰りにほんの数十分、娘から目を離した隙の事だった。
娘は記憶障害のため、自分の居場所もわからない。
地図を読むことも出来ない。
母親が近くの交番の巡査とさんざん探した挙句、
見つかったのは、少女の学生証と中世の伝承「ハーメルンの笛吹き男」が
描かれたポストカードだった。
これは明らかに誘拐・・・!!
だが、いくら待っても誘拐犯から身代金を要求する連絡が
入ることが無かった。

この誘拐事件のサポートとして、捜査一課の犬飼刑事と
なぜか犬飼を嫌っているとしか思えない、女性刑事・高千穂が
捜査に加わった。
そして、少女が子宮頸がんワクチンの副作用で記憶障害に
陥っていたことが判明する!
さらにその経過を少女の母親がブログに綴っていた。
そのブログは、同じように子宮頸がんワクチンの副作用で
苦しんでいる少女たちや家族の支えになっているようだ。
また、母親は被害者対策の会のとりまとめ役となり、
集団訴訟の準備をしていることも判明した。
犬飼たちは、もしや、その訴訟を反対する何者かが誘拐したのでは?と疑う

またしても、国の政策がからんだ嫌な事件・・・?
厚労省、製薬会社、子宮頸がんワクチン勧奨団体、医者
たちの邪な思惑に少女たちが犠牲になっている・・。

ところが、その数日後今度は女子高校生が下校途中で行方不明に
なってしまう。そこには「笛吹き男」のポストカードと
携帯電話が残されていた・・・。
さらに驚くべきは、その女子高生は子宮頸がんワクチン勧奨団体の会長の
娘だった・・・・。

ワクチンに関わる被害者と加害者家族がそれぞれ行方不明に!
誘拐犯の意図が全く読めない捜査本部。
やがて、ワクチン被害を訴えるために全国から集まった5人の
少女たちも行方不明になってしまう!
その直後、「笛吹き男」と名乗る犯人から70億円と言う莫大な
身代金の要求が届く・・・・。

子宮頸がんワクチン接種による副作用はリアルなニュースでも
度々聞こえてきた。しかし、このところ全く聞かなくなってしまった。
それはやはり、もみ消されているのか?
薬害エイズ事件のときのような事件がまた起こり始めているのか?
リアルにそう疑ってしまう。
この作品はミステリーと言う名を借りた、告発本ではないのか?

物語の中で少女たちが国に対して切々と訴えるシーン。
その慟哭が胸に突き刺さる!

事件の真相はおそらく、読んでいるともしかして・・・と思う。
だが、クライマックスはやはりどんでん返しの帝王にしてやられる・・・・。

『ハーメルンの誘拐魔』
著者:中山七里
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,600(税別)

心にじわ~っと響くミステリー「戦場のコックたち」

本屋大賞にノミネートされている、
ミステリー小説「戦場のコックたち」を読みました。

昨年暮れに発表された「このミステリーがすごい 国内編」で
第2位にランクイン。
さらに「週刊文春ミステリーベスト10」では第3位にランクインした、
注目の作品です。
2段組みの連作長編ですが、長さを全く感じさせない
心に沁みるミステリーでした。

戦場のコック

第二次世界大戦、ヨーロッパはナチスドイツを中心とする
枢軸国に蹂躙されていた。見かねたイギリスとフランスは
連合軍を作り枢軸国に応戦。しかしイギリスも爆撃され、
静観していたアメリカがいよいよ参戦することになる。

そんな時代、田舎の雑貨店で家族平和に暮らしていた
ティモシーは、少しでも家計を支えようと志願兵となる。
料理が得意だったティモシーは、コックという特技兵として
ノルマンディー上陸作戦で、フランスに降り立った。

G中隊のコックは、ティモシーのほかに、南米出身のディエゴ、眼鏡のエド。
ティモシーにとっては彼らが家族同然だ。
だが、死と隣合わせの日々が続く・・・・。

そんなある日、G中隊の機関銃兵・ライナスが予備のパラシュートを
集めているのを知る。
パラシュートは貴重品だ。、一体何のために・・・。
いつも寡黙で思慮深いエドが推理し始めた・・・・。

この些細な事件から、一晩で消えた600箱もの粉末卵の謎や
軍が待機所として借りた家の家主の自殺事件、ディエゴが怯えた幽霊事件の謎・・・
など戦場で起きたささやかな事件の真相を明らかにしてゆく。

戦争という非日常の中で、常に死を意識しながら、
また仲間の死に衝撃を受けながら、ティモシーたちは日常を生きている。
その過酷な日々の中でも〈日常の謎〉は存在する。
それらを連作短編という形式で紡いでゆく異色のミステリーだ。

この作品の魅力は、謎解きの面白さだけではない!
彼らが遭遇する戦闘の描写のリアルさ、
戦闘の合間の仲間たちとの温かい触れ合い。
助け合い、かばい合い、命を繋ぐ。
その場面場面に人のぬくもりのようなものが感じられ、
心にじわ~っと沁みてくるのだ。

戦争を題材にしながら、ある意味で人が死なないミステリーという
稀有な作品。

『戦場のコックたち』
著者:深緑野分
出版社:東京創元社
価格:¥1,900(税別)

名探偵・法月綸太郎の名推理 傑作「頼子のために」

法月綸太郎さんは、島根県出身の推理作家さん。
デビュー当時から読んでいてめちゃめちゃ
面白い本を書く人だな~と感心していました。

ところで最近、名探偵ブーム。
しかも、昭和の名作の名探偵がテレビや映画で
続々映像化され、嬉しい限り!
御手洗潔、火村英生などその代表作。
でもそこに、法月綸太郎がいない!?残念!!!

ではでは名探偵・法月綸太郎のシリーズ最高傑作と
呼ばれる「頼子のために」を紹介!
はまさきの一番好きな作品です。

頼子のために

17歳の愛娘・頼子が殺された。
通り魔事件で片付けようとする警察に疑問を抱いた
父親の西村は、秘かに犯人を突き止め相手を刺殺し
自らも命を断ち犯人への復讐を果たす。・・という
手記を残していた。

そして、その手記通りの事が起こってしまった。

西村の手記は、警察のみならず関係者に様々な余波を
もたらした。
この事件が公になれば、警察のメンツはつぶれる!
それを危惧した警察上層部は、ある奇策を思いつく!
そしてその旨を知らされた、警視庁の法月警視は
早速行動に移した。
その手記を読んだ、法月警視の息子で推理作家の法月綸太郎は、
事件解明に乗り出す!

冒頭の鬼気迫る西村の手記から、物語にいっきに引き込まれる!
そして、法月綸太郎の推理で徐々に明らかになる事件の過程と真実。
だが、その真実はあまりにも信じがたいものだった。

娘を殺された父親と母親の慟哭、そして復讐という
構図がガラガラと崩れていく・・・。

度肝を抜く真相とはこの物語のためにある!?
長く心に残る作品。

『頼子のために』
著者:法月綸太郎
出版社:講談社(文庫)
価格:¥590(税別)

「生活安全課0係 ファイヤーボール」はやばいくらいに面白い!

富樫倫太郎さんの警察小説「SRO 警視庁広域捜査専任特別調査室」
シリーズが大変面白く、ほかに警察小説シリーズはないのかなと
思ってたいたところに「生活安全課0係」がドラマ化というニュース!
なんと富樫さんの作品ではありませんか!
これは読まなければと思い、早速読みました。
(テレビ、視られないのが残念!)

面白い!面白い!面白い!すんご~く面白かったです!

生活安全ファイヤーボール

杉並中央署生活安全課に突如誕生した「なんでも相談室」。
通称0係。
署内の役立たずが集まる部署。
そこへやってきたのが、科警研の「犯罪行動科学部捜査支援研究室」で
犯罪行動心理学を研究していた、キャリア警官・小早川冬彦警部だ。
‘キャリアの警部なのになんでこんな掃き溜めに!?’
とはみ出し者たちはいぶかるが、当の小早川は全く意に介さず!
一人楽しそうに仕事をしている。

なんでも相談室には、どうでもよい事件が次々と寄せられる。
メンバーは全くやる気を起こさないが、冬彦に引っ張られて
様々な事件とかかわり合うことに。
冬彦は、ちょっとオタク系で、周りの空気が読めずマイペース。
だが、人間の行動心理学を研究していたため、人の心を読むことが出来る。
凄い得意技で超優秀だが、言わなくても良い事を言ってしまうので
反感を買うこともしばしばだ。
しかし、冬彦は人一倍正義感が強く、心優しい人物。

ある日、管内でボヤ事件が発生した。
どんなことにも興味を抱く、冬彦はボヤ事件の現場に遺された
残骸から、連続放火事件を疑う・・・。

犯罪行動学を駆使し、冬彦が連続放火魔のパターンを絞り込み、
過去のデータと行動心理学で犯人をプロファイリング
していく過程がとても面白い!
さらに、人の様々なしぐさや動きでその人が考えていることを
あててしまう。こんな刑事がいたら、犯人なんて一発でわかる!
そういうシーンが多く描かれていてほんとに面白かった。

富樫さんの作品は「SRO」にしてもこの「生活安全課0係」に
しても、報道されている実際の事件を彷彿とさせる。
実にリアル。自分も捜査している。そんな感じにさせてくれる。

『生活安全課0係 ファイヤーボール』
著者:富樫倫太郎
出版社:祥伝社
価格:¥800(税別)

余韻の残るミステリー『王とサーカス』

このミステリーがすごい2016年版で国内1位になった
米澤穂信さんの「王とサーカス」を読みました。
この作品、本屋大賞にもノミネートされています。

昨年も米澤さんの作品「満願」がこのミス1位になり
2年連続は珍しく快挙です。

王とサーカス

読み終わった後、余韻が残りしばらく切ない気持ちになりました。
なんと奥の深いミステリー作品だと思いました。

ネパールのカトマンズを舞台に、2001年にネパールで
実際に起きた王宮事件を背景に描いたミステリー。

ミステリー的な展開はなかなか訪れない。
100ページあたりまでは、主人公のジャーナリスト・大刀洗万智が
どのようなきっかけでネパールにやってきたのか?
そのネパールで出会った人たちとの何気ない交流が描かれている。
だが、この冒頭は後に重要な意味を含んでくる。

王族一家が王子によって射殺されてしまう事件が起こってから
俄然面白くなってくる。

王宮で起きた王族一家殺害事件の余波でカトマンズ市内は混沌としていた。
日本から旅の取材のためにカトマンズを訪れていた大刀洗万智は、
この事件をスクープするため、取材を開始。
ホテルの支配人・チャメリの知り合いで、王宮で警護の
任に就く軍人・ラジェスワルを紹介してもらう。

万智はラジェスワルに王宮事件の詳細を聞くが、ラジェスワルは、
その件について一切語らなかった。
仕方なく帰路につく万智。そして、カトマンズには夜外出禁止令が出た。
翌朝、万智は王宮近辺に取材に出向く。だが得られるものはあまりなく、
市内の様子を撮影し戻るところに、ラジェスワルの死体を発見する!
彼の背中には「INFORMER」という文字が刻まれていた。
一体、誰が何のために・・・!?
王宮事件の取材の傍ら、万智はラジェスワルの殺害の真相を追うことに!

ミステリー小説に、社会派色をプラス。
貧困にあえぐカトマンズの下層の人たちの心の叫びが物語の
ドンでん返しに繋がっている。
2重3重に張り巡らされた伏線。それが解明されたとき、悲しい真実が暴かれる!

途上国の真の姿も知らず、何を求めているのかも忖度せず、
大国は自らの価値観で善意を施す。
しかしそれは大国の驕りであり、途上国からしたら「ほっといてくれ!」
それが真実の想いかも知れない。

『王とサーカス』
著者:米澤穂信
出版社:東京創元社
価格:¥1,700(税別)

「怪盗探偵山猫」も真っ青の面白さ!「確率捜査官・御子柴岳人」

神永さんの作品「怪盗探偵山猫」がドラマ化されて大ヒット!
はまさき、「心霊探偵八雲」シリーズが大好きすぎて、
他のシリーズはまだ読んでいない。読もうかなと思っていたら、
ミステリー小説読書会の参加者さんから
「確率捜査官」シリーズをオススメされました。

「確率~」とついているから、きっと難しい数式とか
出てくるのではと思い、数学が超~~苦手なはまさきは敬遠して
いたのですが、そんなこと気にならないくらい面白いと
太鼓判をおされました。

読んでみたら、いや~、ほんとに面白かった!
プラス、八雲ファンにはたまらないおまけつき!でしたよ!

確立捜査官

取調中に起きた暴行事件が原因で、
新米女性刑事・新妻友紀は、警視庁世田町署内に
新設された〈特殊取調対策班〉に異動となった。

〈特殊取調対策班〉とは効率的で正確な取り調べ方法の
検証を行うのが主たる目的だ。
その対策班は、地下1階にあった。まるで倉庫のような乱雑さだ。
友紀がその対策室で出会った男は、御子柴という数学者だった。
なぜ数学者がここにいるのか?といぶかしむ友紀。
そこへ、警視庁きっての落としの名人と言われた権野が顔を出す。
〈特殊取調対策班〉はこの3人が主たるメンバーだ。

御子柴は、警察の常識を叩き込まれた友紀に、「バイアス女」と命名。
さらに、刑事の勘とやらも、すべては確率で実証できると言い切った。
友紀は、そんな御子柴に反論するが、常に「黙れ!バイアス女」と
斬って捨てられる。
御子柴のいう「確率」で取調の効率をあげるということはいかなる事か?

取調の時はサングラスをかけ、チュッパチャップスキャンディを
なめながら友紀の横に貼りつき、容疑者に奇妙なゲームをさせ
この確率は~と言いながら容疑者を不安に陥れる・・・
変人でありながら、イケメンの数学者、御子柴岳人。
友紀はこの変人数学者とペアを組み実際の取調に挑むことに・・・。

読んでみると面白い!それも、眼からウロコの面白さだ。
「確率」って凄い!と思わず言いたくなる。
しかも八雲と晴香もちらっと登場し、思わず「お~」!!
今後の展開が楽しみ!

シリーズ第2弾『確率捜査官御子柴岳人 2』が単行本で発売中!

『確率捜査官御子柴岳人 密室のゲーム』
著者:神永学
出版社:KADOKAWA(角川文庫)
価格:¥600(税別)