「大江戸科学捜査八丁堀おゆう」第7弾!妖刀の行方!

江戸と現代を往来する、元OLの関口優佳・
通称おゆう。
江戸で起きた事件の謎を現代の科学捜査で
解き明かす!
めちゃめちゃ面白い時空探偵ミステリー。

その第7弾は、妖刀・村正の行方を追う!。

貧乏長屋に小判が投げ込まれるという
事件が多発していた。
江戸で十手持ちの女親分・おゆう
(現代では関口優佳という平凡な女性)
は、鼠小僧が現れたと胸をときめかせる!

ところがちゃんと調べてみると、鼠小僧
出現は、この事件の翌年なのだ。
えええ~っとおゆうは驚く。
実際、岡っ引きたちの前で、ぼそっと
「鼠小僧」って言っちゃったし、
歴史を狂わせてしまうのでは・・・?と
心配したが・・・。

そんな事で悩んでいると、鵜飼伝三郎と
おゆうたち江戸の岡っ引きたちが
旗本の御用人に内々に相談を持ち掛けられた。

なんと、あるお屋敷に侵入した賊に、
金二十両と、脇差し、それもただの
脇差ではない、妖刀・千子村正を
盗まれたというのだ。

表沙汰にはできないため、鵜飼や
おゆうたちも秘密裏に捜査を開始。
やがて、長屋に金二十両を投げ込んでいた
犯人に行き当たる。

鼠小僧に妖刀・村正、現代でも話題に
なるエピソードが登場して、
読んでいるとワクワク!!!

さらに、科学分析ラボの宇田川も
江戸へやってきて、おゆうたちに
協力し、妖刀・村正の行方を追う。

今回も鵜飼と宇田川がおゆうを
はさんで火花を散らすシーンは
なかなかの読みどころ。

妖刀・村正を取り戻すくだりは
意外な展開。江戸の事件を現代科学
で捜査する、江戸流に納得できる
真実を披露することが出来たのか?

ラストの落ちもイケている!

『大江戸科学捜査 八丁堀おゆう 妖刀は怪盗を招く』
著者:山本巧次
出版社:宝島社
価格:¥680(税別)

ミュッソ、最大の衝撃作!「作家の秘められた人生」

「ブルックリンの少女」
「パリのアパルトマン」の2作品
を読んですっかりミュッソ作品が
好きになり、最新刊「作家の秘められた
人生」を読みました。

読みながら、あまりの展開に
どうなってるの?これ・・・と
思わずつぶやいてしまった。
マジ・・・。前作2作を超す衝撃作。

世界的な人気作家、ネイサン・フォウルズは、
20年前に断筆を宣言して以降、いっさいの
創作活動を辞め、地中海の島に隠棲した。

文学青年のラファエルは、自分の作品を
読んでもらおうとフォウルズを
訪ねるが、銃で威嚇されてしまう。
しかし、それでもあきらめなかった。
ラファエルは、オディベールが
経営する島の唯一の書店でバイトを
しながら、フォウルズとの接触の
機会を狙っていた。

新聞記者のマティルド・モネーは、
ある計画を持って、フォウルズに
接触を試みていた。

同じ頃、島の浜辺で女性の惨殺
死体が発見され、島が封鎖される
という非常事態に陥る。

この作品の最大の謎は、人気作家
が突然断筆したのは何故か?だ。

また、新聞記者・マティルドは
執拗にフォウルズに執筆依頼を繰り返す。
いったい何を書かせたいのか?

前半は、彼らの現在進行中の出来事、
過去の事実のエピソードが描かれる。
バラバラな印象で関係性は見えてこない。

しかし、物語の中盤から終盤にかけては、
彼らの謎解きに向かって一気に加速する。
それは、驚愕と衝撃の連続だ。

さらに、二転三転を繰り返した先に
待っているのは、全く予想もしないラスト。
まるでイリュージョン!!!

ミュッソの作品はクセになる。
読んだら絶対にはまってしまう。

『作家の秘められた人生』
著者:ギヨーム・ミュッソ著/吉田恒雄訳
出版社:集英社(文庫)
価格:¥980(税別)

第2回双葉文庫ルーキー賞受賞作!『だから僕は君をさらう』

第2回双葉文庫ルーキー賞受賞作、
「だから僕は君をさらう」を読みました。
出版社さん激押し!
心にじわじわと沁みこむような、
究極の「純愛」ミステリーです!

少年時代に起きた事件の影響で、
心に深い傷を負った青年・
守生光星は、日々平穏無事に
暮らすことだけを願いながら
生きている。

守生は、サロンを経営する女社長に
見込まれ、彼女の仕事を手伝いながら
ミュージシャンを目指していた。

そんなある日、自宅近くの墓地で
一人の少女と出逢う。
しかし、その少女は驚くべきことに
守生の父が起こした事件の被害者の
娘だった・・・・・。

運命のいたずらなのか・・・?
少女との出逢いは、守生に人を
愛することの素晴らしさを気づかせる。
しかし、平穏無事に暮らすという願いは
打ち砕かれることに!!!

新たな事件に巻き込まれてゆく二人・・・。

二人が出逢い、やがて惹かれ合う。
前半部分は、ピュアなラブストーリーで
読者の心をつかんでゆく。
しかし、二人の間で起こる些細な出来事が
後に起こる事件の伏線になっていて
読んでいると徐々に心がざわつき始める。

大切な人を守るために彼は何をしたのか!?

あまりにも優しく、そして切ない、
無償の愛の姿・・・。

そして、人はいつでも再生できると
信じられる(著者のメッセージ。)
純愛ミステリー。泣ける・・・。

『だから僕は君をさらう』
著者:斎藤千輪
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥700(税別)

第30回鮎川哲也賞受賞作!『五色の殺人者』

第30回鮎川哲也賞受賞作、千田理緒さんの
「五色の殺人者」を読みました。
選考委員満場一致の本作。
謎てんこ盛りで、読んでいるとき
とても楽しかった!!!!

高齢者介護施設「あずき荘」で、
男性の撲殺死体が発見された!

事件が起こった時、逃走する犯人の
姿が利用者によって目撃されていた!

新米介護士のメイ(明治瑞希)は、
同僚のハルとともに当日の
利用者や職員の目撃情報を探る。

ところが、目撃証言は、とんでもなく
食い違った。
事件当日、犯人が着ていた服の色が
「赤」「緑」「白」「黒」「青」
とバラバラだったのだ。

聴取した警察官は、多少認知症の
症状がある老人たちの証言とあって、
あまり参考にしていないようだった。

ありえない証言に加え、凶器も
見つからない。謎は深まるばかりで
捜査は難航。

そんな中、ハルが片想いをしている
青年が容疑者として急浮上する。

メイはハルに頼まれ、その青年の
無実を証明しようとする。

しかし、素人探偵二人の動きが
さらなる事件を引き寄せてしまう・・・・。

素人探偵が謎を解いてゆくパターン。
読んでいると一緒になって
謎に挑んでいる感じ。
食い違う目撃者の証言。なんで
五通りの色?この謎は難解だ!!!

この謎の解明の過程だけでも読んで
いて面白いが、ここでさらなる
トリックが!
これには面喰った!
そうか~そういうことか~。
見事に引っ掛かりました。

高齢者介護施設が舞台だが暗いイメージは
なく、軽快でちょぴりユーモラスな
展開がとても良かった。

『五色の殺人者』
著者:千田理緒
出版社:東京創元社
価格:¥1,600(税別)

切なすぎる青春ミステリー『向日葵を手折る』

版元さんのお薦めで、読ませて頂きました。
初読みの作家さんの作品。
彩坂美月さんの「向日葵を手折る」です。

9月19日放送の「王様のブランチ」で
紹介され注目されています。

美しい自然にあふれた、山形の山あいの
集落を舞台に、一人の少女の4年間の
成長を、丁寧に描いた青春ミステリー。

父の死がきっかけで、母の実家がある
山形の集落に引っ越してきた、小学6年生のみのり。
引っ越したその日に同級生の男の子と出会う。
優しさに満ち溢れた少年・怜。
家が隣同士だったこともあり、みのりと怜は
意気投合する。

怜の親友・隼人は、女の子を足蹴にするような
乱暴な男の子。
みのりは、隼人に何度か忠告するが、
隼人に逆襲されてしまう・・・。

それでも同級生たちと心を通わせ始めた
夏のある日、集落の行事「向日葵流し」
のために植えられていた向日葵の花が
何者かによって全て切り落とされると
いう事件が起きる。

それは「向日葵男」の仕業だと噂された。
そして、みのりの身の回りで次々と
不穏な事件が起こる。

鮮やかに季節が巡る美し過ぎる自然。
ガラス細工のような脆さと真っ直ぐすぎる
正義感を併せ持つ少年少女たちの心の動き・・・。
彼らを見守る大人たちの厳しさと優しさ、
そして、随所にちりばめられた伏線。
その伏線が回収された先に明かされる
あまりにも切ない真相。

緻密に編み上げられた物語。
素晴らしいの一言。

この本に巡り会えて良かったと
心の底から思える1冊。

『向日葵を手折る』
著者:彩坂美月
出版社:実業之日本社
価格:¥1,700(税別)

明治の警察官が活躍!シリーズ第2弾『サーベル警視庁2帝都争乱』

今野敏先生の単行本最新刊は、
明治時代の警察を描いた作品。
「サーベル警視庁2帝都争乱」。

日露戦争が終わり、国民は日本の
勝利に酔いしれた。

しかし、明治38年8月30日「時事新報」
の号外で、それまでの戦勝の喜びが
失望と怒りに変わっていった・・・。

それは、外務大臣の小村寿太郎全権大使が
ポーツマスで交わした講和条約で
国民の期待を裏切ったからだ。

戦争には勝利した、ところがその後の
戦いに日本は負けてしまったのだ。

国民は、怒りの矛先を桂首相に向けた。

警視庁第一部第一課・葦名警部と四人の
巡査たちは、赤坂榎坂にある桂首相の
妾宅の警備を担当することになった。

暴徒が桂の妾宅に近づきつつあった。

そして、9月5日「講和問題国民大会」
が日比谷公園で開かれた。興奮した
暴徒たちにより、日比谷焼打事件が
起こってしまう!

桂首相の愛人は危険を察知し、屋敷から逃れた。
その後、暴徒たちが乱入!屋敷を破壊しつくし逃走。

警官らとともに妾宅の警護をしていた、
伯爵の孫で探偵の西小路が屋敷に
足を踏み入れると、男の刺殺体が転がっていた。

混乱に乗じた事故死なのか?それとも殺人事件か?
赤坂署は焼打事件に巻き込まれての死として
片付けようとするが、葦名警部たちは
殺人事件の疑いがあるとして、捜査を開始する。

明治時代に本当に起こった事件を背景に
殺人事件の謎を提示。
首相の妾宅で誰が何のために殺人を犯したのか?

元新選組の斎藤一、作家の黒猫先生(夏目漱石?)
など実在の人物を架空の人物に絡ませ捜査をすすめる
過程が非常に面白い!

また、桂首相の愛人・お鯉のきっぷの良さ
にスカッとする!

さらに、政界・財界で暗躍する者たちの
姿もリアルに描かれていて、明治という
時代のあり様がまざまざと伝わってくる。

明治時代を知ることのできる作品でもある。

第3弾が待ち遠しい!

『サーベル警視庁2 帝都争乱』
著者:今野敏
出版社:角川春樹事務所
価格:¥1,600(税別)

本格ミステリーファン垂涎!『楽園とは探偵の不在なり』

ミステリーファンがこぞって面白い!
と紹介している、斜線堂有紀さんの
「楽園とは探偵の不在なり」を
読みました。

あまりにも斬新過ぎる設定に
驚愕しました!!!

ある時起こった「降臨」によって
世界は塗り替えられた・・・・。

二人以上殺した者は、「天使」
によって即座に地獄に引きずり
込まれる!

探偵業を営む青岸焦(あおぎしこがれ)は、
「天国が存在するか知りたくないか?」
という大富豪・常木王凱(つねきおうがい)
に誘われ、天使が集まる常世島を訪れた。

そこには、青岸以外にも常木に
よって招かれた客がいた。
そして、その島で起きるはずのない
連続殺人事件が起こってしまう!
殺人事件の巻き添えになりたくない
客たちは何とか脱出を試みるが、
外部との連絡手段は一切遮断されていた。

青岸はかつて、家族のように大切に
していた、探偵事務所の仲間を突如喪った。
なぜ、何も悪いことをしていない
彼らがあっけなく死んでしまうのか?
天使は、彼らを助けることなく
罪を犯した者だけを業火で焼いた。

そんな不条理に満ちた世界で、生きる
希望を失った青岸だったが、孤島での
連続殺人事件の調査を始める。
しかし、殺人は容赦なく続いた。

犯人の目的は何か?
連続殺人を犯しながら、なぜ地獄に
堕ちないのか?

およそ天使らしくない不気味な
物体が空を飛ぶ。
その様子は、塗り替えられた世界が
益々不条理なものとして映る。

罪と罰についての考察も物語の中で
語られ、非常に興味深い。

しかし、それ以上に驚愕するのは、
天使が当り前のように空を徘徊し
人間の罪を断罪するという斬新すぎる設定。

孤島での連続殺人という古典的な
展開が、その斬新な設定によって
驚くべきトリックを生んだ!

本格ミステリーファンにはたまらない一冊。

『楽園とは探偵の不在なり』
著者:斜線堂有紀
出版社:早川書房
価格:¥1,700(税別)

探偵・槙野&女性刑事東條シリーズ最新作にして最高傑作!『MEMORY 螺旋の記憶』

島根県在住のミステリー作家・吉田恭教さんの
人気シリーズ『探偵・槙野&女性刑事東條』
の新作が発売になりました!
『MEMORY 螺旋の記憶』です。

探偵・槙野と警視庁捜査一課の刑事、東條は
お互いに信頼し合い、絡み合った事件の
謎をといてゆく。
探偵と刑事ってなかなか難しい関係だと
思うが、二人のやりとりを読んで
いると何となく安心する。
また、槙野と妻のかけあいは、
凄惨な事件が多いこのシリーズの中で
一種の清涼剤のような役割を果たして
いて、二人が登場するシーンは読んで
いると心が癒れる。

九年前、鏡探偵事務所に奇妙な捜索
依頼をしてきた女性が、再び新たな
調査を依頼してきた。
失踪した息子を探して欲しい。
息子の失踪は前回の調査が関係
している。と・・・。

槙野は、当時の調査記録をもとに
息子の行方を捜す。
ところが、九年前に調査で訪ねた人物は
二年前に塩素ガスで殺害されていることが
判明する。

一方、東條刑事は、奥多摩の山中で
発見された凄惨な逆さ吊り殺人事件を
捜査中だった。
たまたま、その身元判明の報道を見ていた
槙野は、被害者が九年前に調査した案件の
関係者であることを教える。

依頼された息子の行方を捜す槙野は、
彼がホラー作家であること、
退行催眠療法について熱心に調べて
いたことを掴む。
そして槙野は、退行催眠療法の本の
著者を訪ねることに・・・。

だが、そのタイミングでまたしても
逆さ吊り殺人事件が起こる。
身元が判明すると、最初の被害者との
繋がりが出てきた。
殺害された二人は、もとは同じ酒蔵で
働いていたのだ!

槙野の調査と、東條が追う凄惨な連続殺人事件。
二つの調査はやがて交差してくるが、
それらが複雑に絡み合い、謎は深まるばかりだ。
いったい事件の裏には何があるのか?

このシリーズは、今までホラー的
要素がふんだんに盛り込まれてきたが、
今回はそうではない。
ホラーというよりは神秘の世界・・・・。

槙野は、調査の過程で信じがたい
事実を掴む。
それはやがて、前代未聞の真相に
繋がってゆく。

槙野と東條、二つの事件の調査から
徐々に真相に近づいてゆく過程は
いつもながら非常に面白い。

シリーズは、どの作品も大変面白いが、
自分としてはこの作品が今のところ
一番だと思う。
時を超越し、大切な人を想い続ける
ラストは胸に迫るものがあったから。

『MEMORY 螺旋の記憶』
著者:吉田恭教
出版社:南雲堂
価格:¥1,800(税別)