とっておき今野敏先生の傑作、痛快伝奇小説『わが名はオズヌ』

はまさきが今野敏ワールドにはまるきっかけとなった作品です。小学館『わが名はオズヌ』。
どう説明したら良いのか!?とにかく痛快無比な面白さです。

修験道の祖・役小角(えんのおずぬ)が、現代の高校生・賀茂晶に転生し、世直しをする!!
奇想天外なストーリーだが、なぜかこういうことがあったら、世の中がはどう変わるだろうと思ってしまう。オズヌが転生した賀茂晶に警察や政治家、さらに極道さえも振り回されるのだ。

賀茂晶は、普段はものすごく人見知りでおとなしい。どうかするといじめの対象になるのではないかと心配してしまうくらい個性がない。しかし、あることを機会に一変する。

役小角は、平成の闇を打ち破るべく、賀茂晶に転生し、圧倒的な非道の力で迫る権力に立ち向かうのだ。
彼に従うのは、賀茂の同窓で元暴走族のトップの赤岩。役小角の後鬼(ごき)が赤岩に転生したものだ。
彼らが正義のために使う呪術パワーには誰も逆らうことが出来ない。その描写がすごくかっこよくて面白い。そして「わが名はオズヌ」という決め台詞にちょっと酔ってしまう。

荒廃した学園を廃校にし、ニュータウン建設を謀る利権政治家とゼネコンの策謀に闘いを挑む、オズヌこと高校生・賀茂晶とその仲間たち!!十七歳の反乱が、利権にまみれた大人たちに一矢報いることができるのか!!
修験道について、古代日本についても詳しく描かれている。読んでいてとにかく面白い、キャラクターが生きている!そしてめちゃめちゃかっこ良い!!!

今野先生の描く伝記小説はほんとに面白いです。痛快無比な面白さとはこういうものを言うんです!読み終わった後の爽快感がたまりません!

『わが名はオズヌ』
著者: 今野敏
出版社:小学館(文庫)
価格:¥990(本体¥900+税)

ガリレオシリーズ最新刊「禁断の魔術」、感動しました。

東野圭吾のガリレオシリーズ最新刊『ガリレオ8 禁断の魔術』を読みました。
このシリーズの既刊本では、長編の『容疑者Xの献身』があまりにも名作です。(私だけが思ってるかも。)
この最新刊である短編集『ガリレオ8 禁断の魔術』も『容疑者X』に匹敵するくらい感動しました。特に最後の『猛射つ』は、湯川博士が、理系の気難しく偏屈で超優秀な科学者としてではなく、温かく、思いやりがあり、そしてスペシャリストとしての矜持をもった、一人の人間として描かれていて、胸が熱くなる傑作です。
第1話『視透す』では、草薙刑事に誘われて行ったクラブで、名刺を見ずに名前を当てるという特技を持ったホステスに出会う。
しかしその後そのホステスは殺害されてしまう・・・・。なぜそんなことに?湯川と草薙は彼女の特技が殺害の動機ではないかと推理。
第2話『曲球る』は、戦力外通告をされたプロ野球の投手。その投手の妻が事故に遭い亡くなってしまう。事故現場にはプレゼント包装された時計があった。妻は誰にその時計を贈るつもりだったのか?生前の妻の不審な行動とは・・・?湯川が解いた、妻の想い・・・。
この作品もぐっときました。湯川博士の優しさがあふれている作品。
第3話『念波る』は、双子の姉の危険を察知した妹。その予感はあたっていた。姉が何者かに襲われたのだ!?。双子の間にテレパシーは存在するのか?湯川が、双子の姉妹のためにひと肌脱ぎます。
第4話『猛射つ』は、フリーライターが殺害された事件から、ある殺害計画が浮かび上がってくる。そしてその容疑者の中に、湯川がどうしても助けなければならない人物がいた。湯川の決心があまりにも切なくて、悲しくそして胸に迫る!!
今回の短編集は、今までのような怪事件を科学で解決するというものよりもっと奥が深くなっている。それは湯川の事件への関わり方が変わったからか?人間への関わり方が変わったのか?湯川博士の心の進化も感じられる!シリーズ最新作です。
『禁断の魔術 ガリレオ8』
著者: 東野圭吾
出版社:文藝春秋
価格:¥1,400(税別)

女性監察医が主人公の警察ミステリーが面白いです!『炎の画策』

警察関連のお仕事をされている女性は、女性刑事だけでなく、監察医、あるいは検屍官などもあります。テレビなどでも人気です。

先日あるきっかけで、柚原瑠璃子著『炎の画策』(ポプラ社文庫)を読みました。
『死体は語る』という名著を描かれた、法医学者・上野正彦さん監修です。
不慮の事故、孤独死、事件に巻き込まれて亡くなった人たちの死因を調べることで、事件なのか、事故なのかを明らかにし、無念の死を遂げた人たちを癒す。
そういう思いでずっと、遺体と向き合ってこられた上野先生の監修ということで、この「炎の画策」は、単なる警察ミステリーではないような気がしていました。
そして、読んでみるとやはり想像以上に面白かったです。
シリーズ3作発売中ですが、すぐに全部読みたくなりました。

あるIT企業の社長である男性が、自宅マンションで焼死体となって発見される。
管轄署の上杉刑事は、後輩の正木刑事とともに現場へ急行。そこで焼死体と対面。早速司法解剖が始まった。執刀するのは、新米監察医の如月果林。まだ若い女性監察医。
いつも上杉刑事に軽んじられ、この日も「かりんとう先生」などとからかわれた。
上杉刑事の厳しい目に耐えながら、なんとかわかったことは、病気などなく健康な男性であること。だが火事で亡くなったのではなく、それ以前に亡くなっていたこと。これは事件なのか?
しかし、殺害されたような状況もなく、捜査は事件か事故かどの線で捜査をしていくのか困惑する。結局どっちの線も洗おうということになった。
はっきりした鑑定結果は4か月後に出るということだった。その間、上杉と正木は、ほかの事件とかけもちをしながら、この男性焼死事件の関係者を洗った。母は大物女優、兄は超大手の家電販売店オーナー、兄嫁はマナー教室などを開く美人セレブ。
上杉にはなんとなく事件の匂いがするのだが、具体的なことがなかなかつかめなかった。
しかし4か月後に出た、鑑定結果は事件性ありというもの。
そこから本格的な捜査が始まった・・・・。

上野先生が手掛けた事件をヒントに描かれた、警察ミステリー。監察医の仕事や、警察捜査の状況が非常にリアルに描かれていて、とても面白い。フィクションなのにノンフィクションのようなリアリティがあり、普通の警察小説のようなご都合主義はなく捜査は進展しないのだ。
本当に最後の最後まで犯人に行き当たらない。しかしそういうとき、最後に事件解決に導いてくれるのは、無念の死を遂げた遺体なのだ。そこに驚愕し、ラストは悲しくなった。
すごく面白かったです。
シリーズはこのほかに『刃の献身』『骸の回廊』が発売中。早く読みたい!!!

『上野正彦原案・監修 監察医シリーズ 炎の画策』
著者: 柚原瑠璃子
出版社:ポプラ社
価格:¥680(税別)

横山秀夫さんが描く、女性似顔絵捜査官の活躍!『顔』

横山さんの作品の中で唯一女性を主人公にした作品です。『顔』。
2003年ころ、仲間由紀恵主演で連続ドラマ化されたこともあります。
短編集で読みやすく、面白いです。
『陰の季節』の短編集の中の1作、『黒い線』で事件を起こす側として登場する、似顔絵捜査官・平野瑞穂巡査。そのショックで休職をしていたが、現在広報室に身を置く。
時々前の事件を思い出し胸を痛めることもあるが、何とか婦警としての仕事をこなしている。
第1話『魔女狩り』は、ある特定の新聞社にのみ特ダネを流している人物を探す。
第2話『決別の春』は、広報室から犯罪被害者支援対策室へ配置転換された平野巡査が、連続放火が続く中それに怯える女性からの電話相談を受ける。
第3話『疑惑のデッサン』は、ある切り裂き事件の目撃者の証言から似顔絵を描いた、三浦巡査のデッサンが、あまりにも犯人に似ていたことから何かあるのではと疑惑を抱く。
第4話『共犯者』は、実際の銀行で本番さながらの銀行強盗対策の訓練中に、別の銀行で本当の銀行強盗が起こってしまう!
第5話『心の銃口』は、射撃の名手である婦警が襲われ、拳銃が奪われた!平野巡査は、襲った犯人の似顔絵を描くことに・・・!
警察組織の厳しさをこれでもかと思い知らされる平野巡査。
時に負けそうになる心を強くさせるのは、犯罪被害者に対する思いと憎き犯人。
絶対に犯人を許さない。その思いが瑞穂の心を強くする。
瑞穂の職務に対するひたむきな思いが胸に迫る・・・。
そんな平野瑞穂巡査の成長を描いている。
横山さんが珍しく女性捜査官にスポットを当てた警察小説、連作短編集です。
『顔 FACE』
著者: 横山秀夫
出版社:徳間書店
価格:¥590(税別)

デンマーク発!迷宮入り事件を解決!?『特捜部Q』シリーズ

最近海外のミステリーに今一つ食指が動かず、日本のミステリーばかり読んでいましたが、同僚に勧められて読んだこの『特捜部Q 檻の中の女』(ユッシ・エーズラ・オールスン・早川書房)が大当たりでした。
海外ミステリーで久々に面白~いと感じた、全欧ベストセラーとなった警察小説です。

コペンハーゲン警察の殺人捜査課で辣腕を奮っていた、カール・マーク警部補は、ある事件で自分のチームと自分自身が銃撃にあい、休職していた。
部下を失い、自身も深刻な‘心的外傷後ストレス障害’に悩まされていたカール・マーク警部補だったが、何とか復職するまでにこぎつけた。
そして、上司から呼び出され告げられたカールのポストは、この度新設された未解決の重大事件を専門に扱う部署「特捜部Q」の統率だった。
しかし、あてがわれた部屋は暗く陰湿な地下室。そして部下は、デンマーク語すら怪しいシリア系の変人・アサドのみ。
上層部への不審を募らせるカールだが、仕事ですぐに結果を出さなければならない。
そしてカールは、自殺と片づけられていた、美貌の女性議員失踪事件の再捜査に着手する。
アサドの変人ぶりと奇行にも助けられ、驚きの新事実が次々と明るみに出る!!

海外の警察小説も、上の顔色ばかりうかがう上司が登場したり、あまりにも優秀だと出る杭を打たれたりと日本とあまり変わらない組織構造なので、日本の警察小説を読みなれている人には特に読みやすい。
それと、失踪した女性議員が拉致され監禁が続くシーンと、カール警部補がその事件に着手し再捜査を始める時期が交互に登場し、やがて現在に繋がってゆく、という面白い設定。
女性議員がなぜ拉致監禁されるに至ったのか・・・・?事件の真相に近づいてゆく過程が面白いし、登場人物もかなり細かく描かれていて、重厚な警察小説といったところ。
カールとアサドの掛け合いが、時にコミカルに描かれているので深刻な小説の中でほっとする瞬間もある。

未解決事件ものは日本でも、富樫倫太郎さんの『SRO 広域捜査特別専任調査室』シリーズ(中公文庫)が人気。海外も日本もそういう事件解決ものがだんだんと人気が出ている様子。
この『特捜部Q』も大変な人気で、シリーズ3作発売中です。
本作『特捜部Q 檻の中の女』は文庫も発売中ですが、ミステリーファンならば、やはり早川書房のポケットミステリーで紹介したかったので、今回はポケミスで紹介しました。

『特捜部Q 檻の中の女』
著者: ユッシ・エーズラ・オールスン
出版社早川書房
価格:¥1,900(税別)ポケットミステリー版
価格:¥1,000(税別)ハヤカワ文庫版

法廷小説の傑作『最後の証人』シリーズ新作『検事の本懐』

日曜日にいっき読みしました。凄く面白かったです。
柚月裕子著『最後の証人』シリーズ(宝島社)最新作、『検事の本懐』(宝島社)です。
『検事の本懐』は、『最後の証人』で、しょぼくれてはいるが事件の本質を見つめ真実を暴き出し、鮮烈な登場を果たした、ヤメ検弁護士・佐方貞人の若き日の新人検事時代を描いた、5編の連作短編集です。

髪はクシャクシャ、スーツはよれよれ・・・・。でも事件に対峙するときは眼光鋭い検事に豹変。無愛想で照れ屋?!の若き検事・佐方貞人があらゆる視点で描かれている。

17件の連続放火魔をいまだ逮捕できない、米崎署の署長・南場は、同期の出世頭・佐野から集中的に苛められていた。
しかし南場はとうとう放火魔を特定する。微罪で逮捕した容疑者の家宅捜査令状をとるために直に地検に赴く南場署長。内々に担当検事に頼むためだ。そうしたのは佐野に横やりを入れられるからだ。
南場はそこで、佐方という若い検事を紹介される。果たして、南場の思い通りになるのか・・?男の嫉妬が連続放火事件の真相を歪める・・・。佐方は改めて連続放火事件を見直す。「樹を見る」。

小さな窃盗事件で刑務所に出たり入った入りしている初老の男。今回も時計を万引きして送検された。またかと担当検事はため息をつく。
その件は佐方に回された。しかし佐方は、男を不起訴にすると言う。何故か・・・。「罪を押す」。

高校の同級生の女性から14年ぶりに連絡を受けた、佐方。ある男から強請られている・・・。助けてほしいと頼まれる。佐方は彼女に恩を返すため、その男と対決することに・・・。佐方の少年時代が描かれいている、「恩を返す」。

ある大きな疑獄事件が発覚。東京地検特捜部に応援要請された、山口地検の加東事務官は、そこで米崎地検から応援にきた、佐方検事とコンビを組んで参考人取り調べをやることに。
しかし特捜部の行き過ぎた捜査に、加藤はだんだんとついてゆけなくなる。
コンビを組んだ佐方検事はどう出るのか?!検事としての仕事を全うしよとする、佐方検事と加東事務官を描く、「拳を握る」。

横領罪で投獄された、佐方貞人の父、佐方陽世。検事として、また恩ある人への最大の恩返しをした、父・陽世の生き方を描く。「本懐を知る」。

5編とも、骨太の人間ドラマと巧緻で秀逸なミステリー的要素が見事に融合した連作。あるべき検事の姿を描き、事件の真相に迫る、リーガル小説です。
とにかくかっこいいんです!佐方検事が!!

『検事の本懐』
著者:柚月裕子
出版社:宝島社
価格:¥657(税別)

都市伝説ミステリー第2弾『よろず一夜のミステリー 金の霊薬』

新感覚のホラーミステリー第2弾です。篠原美季『よろず一夜のミステリー 金の霊薬』(新潮社)。
第1弾は『よろず一夜のミステリー 水の記憶』で、呪いの水の都市伝説がテーマでとても面白かったです。

さて、シリーズ2作目の『金の霊薬』は、都市伝説サイト「よろず一夜のミステリー」に‘黄金を見つけた者は祟られる’という情報が寄せられた。
埋蔵金を発見した青年がひき逃げれ、宝を求めて山を掘り続けた老人はヒ素中毒で死亡。
そしてアンチエイジングの研究をしている女性は殺害された。
情報を元に、よろいちチームが取材を開始。なんと日々野恵(ひびのけい)は一人で山を捜索るはめになる・・・。
のんきな恵を目の敵にする、よろいちの社長・万木輝一(ゆるぎてるかず)の意地悪で・・・。
一見なんの繋がりもないように見えた3人の死。実はある共通点が浮かび上がった。

都市伝説は面白い!今回は特に面白かったですよ!!埋蔵金に、不老不死。
不老不死と言えば、あの徐福。徐福伝説はとても神秘的でその内容を読めば読むほど興味が湧く。
昔から伝わる不思議な伝説を、うまく都市伝説に組み込んで事件につなげている。
徐福や蓬莱、埋蔵金などなど・・・。伝説にまつわる‘怪’事件を科学と心理から暴き出す!
第2弾も魅力的なキャラクターたちが大活躍!ゴスロリファッションが超可愛い、諸星アリサに注目!!

そしてシリーズ3作目も待機中です。

『よろず一夜のミステリー 金の霊薬』
著者: 篠原美季
出版社:新潮社
価格:¥490(税別)

警察小説の本道を行く、貫井徳郎『後悔と真実の色』

貫井徳郎さんが山本周五郎を受賞した、『後悔と真実の色』が先月文庫化されました。(幻冬舎文庫)重厚感あふれる、警察小説ミステリーの傑作です。
以前、貫井さんが描かれた『乱反射』で衝撃を受けた、はまさき。この『後悔と真実の色』も面白かったです。

若い女性の人差し指を切り取る、猟奇殺人鬼「指蒐集家」を必死で追う、捜査一課の若きエース・西条輝司。しかし捜査に没頭するあまり、一線を越えてしまい窮地に立たされる。

警察内部で繰り広げられる、男同士の嫉妬と裏切り、そして警察を翻弄する犯人との攻防。
人間ドラマとして非常に面白いし、また丁寧な情景、人物描写は、その人の汗のにおいや、たばこのにおい、また捜査会議の緊迫感、犯人を追い続ける街の喧騒までものすごくリアルに感じられる。また捜査の状況など、非常に緻密に描かれてさらなるリアル感。
物語も2転3転し、いったいどうなる!?西條刑事は・・・?
最後の一ページまで息を抜けないほど面白かったです。

最近、警察小説ミステリーは、ますます面白くなってきています!

『後悔と真実の色』
著者: 貫井徳郎
出版社:幻冬舎
価格:¥876(税別)

乱歩賞作家が描く、法律人情ミステリー『凸凹サバンナ』

昨年、異色のミステリー「完盗オンサイト」で江戸川乱歩賞を受賞した、玖村まゆみさんの受賞後第1作は、心が温かくなる、リーガルミステリーの連作短編です。

法律事務所を開業したばかりの田中貞夫。集まってくる依頼はどれもこれも一筋縄ではいかないものばかり。
離婚問題で相談にきた気のいい小さな会社の社長。
田中は社長の一方的な話から夫婦間には何か秘密があると感じる。さっそく彼の会社で聞き込みを開始する・・・・。豚のボニータが登場。とても可愛い。この豚さんがこの作品では重要な役割。
次に相談にくるのはなんと小学生の女の子。凄い美少女。タレントになりたいと母親に相談したところ全く話を聞いてくれない。ちゃんと話を聞いてくれる人・・・そう、ということで田中の元へ・・・。??母親が反対する理由は??
そしてこの回ではロシア人の女の子たちからも相談を受けてしまう。困惑する田中。
また、お隣さんとのトラブルで悩む主婦。
境界について隣の男性と話をしたいが、全く話をしようという気持ちがない。そこで田中に相談したのだが・・・・。この男性の過去に何が?
さらなる相談は、田中が死にそうになったとき助けてくれた、やや強面の仕事をしている原口。
小さな詐欺を繰り返し小銭を稼ぐ原口の知り合いから、資産家の婦人を助けてやってほしいとの依頼。人が好いのですぐに騙されちゃう気のいいおばあちゃん。
小銭を稼ぐ詐欺連中からはとても大事にされている。そんなおばあちゃんが、かなりやばい詐欺にあいそうだと情報が入ったらしい!原口の頼みを断れない田中は、その婦人を助けるために奔走する!・・・・
田中の真摯で生真面目な態度は相談者から信頼される。
そして田中もそんな自分を認めようとするが、ある日田中の事務所に一枚のメモが・・・・。
田中はそのメモをみて忘れようとしていた過去へと引き戻される・・・・。実は田中には誰にも言えない秘密があった・・・。

連作短編で、登場人物がすべて魅力的!そして話がとても面白い!一話一話のラストはぐっとくるエピソードが描かれてじわ~と心に沁みる。人情あふれる法律エンターティメントです。

『凸凹サバンナ』
著者: 玖村まゆみ
出版社:講談社
価格:¥1,400(税別)