メインキャラ総登場!『バチカン奇跡調査官 アダムの誘惑』

大好きなシリーズです。
「バチカン奇跡調査官」。最新作「アダムの誘惑」
が発売されました。

今回は、奇跡調査官のロベルトと平賀のほかに
FBI捜査官・ビルとその婚約者エリザベートも
登場。新たな展開にちょっと嬉しくなりました。

バチカンの奇跡調査官・ロベルトと平賀は、
FBI捜査官のビル・サスキンスから
結婚式の司祭を依頼される。
ビルの相手は、任務のため偽装婚約中の
エリザベート。
偽装婚約から、とうとう偽装結婚に至ったのか?
と二人は驚くが、ビルの口ぶりは真剣そのものだった。
二人が幸せになるならと喜んで司祭を引き受け、
休暇をとって二人はアメリカへ向かった。

一方、ビルとエリザベートは、世界的大スター・
ゾーイのコンサートを観て興奮!
コンサート中、ビルとエリザベートは、
危険な状況に陥ったゾーイを救ったことで、
ゾーイと懇意になることが出来た。
そのとき、エキゾチックで美しい牧師・アダムと
知り合う。二人が結婚することを知ったゾーイは
お礼に結婚式で歌をプレゼントすると約束した。
翌日、その打ち合わせのためにゾーイの別荘を
訪ねたビルとエリザベートは、巨大水槽の中で
揺れているゾーイの遺体を発見する。

事故か?他殺か?それとも自殺なのか?
さらに、結婚式の当日ビルが失踪してしまう!

ロベルトと平賀、そしてエリザベートの3人は、
失踪したビルの捜索とゾーイの死因を探る!
やがて奇妙な共通点が浮かび上がってくる。

エキセントリックな現象の連続、なぞの組織、
そこには巨大な悪の組織の影….。

読みだしたら止まらない!面白さはさらに加速する!
次につながる、背筋が凍るラストに戦慄!!!

『バチカン奇跡調査官 アダムの誘惑』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥780(税別)

人間の激情があふれ出す!「カインは言わなかった」

芦沢央さんの「カインは言わなかった」。
最初はプルーフで読ませて頂きました。

芦沢央さんと言えば、昨年「火のないところに煙は」が
ミステリー・ホラーいずれのファンからも高い支持を受け、
本屋大賞にノミネートされました。

「火のないところに煙は」はホラーミステリー
として申し分ない面白さでした。

新作「カインは言わなかった」は、
その濃密な人間描写に絶句しました。
生身の人間の感情の波がもろにぶつかってくる!
そんな感じを受けました。

カリスマ演出家・誉田の新作公演、その開幕直前に主演ダンサー
の藤谷誠が失踪をした。誉田は失踪した誠の代わりに
誠とライバルの尾上数馬を指名し、レッスンを開始した。
和馬は開幕まで、誉田のパワハラと厳しいレッスンに耐えた。

舞台美術を担うのは、藤谷豪。誠の弟だ。
男性でありながら美し過ぎる容姿。

演出家のパワハラ、カンパニー内での熾烈な主役争い。
主演ダンサーとその弟を巡る女性たちのどろどろの恋愛劇!

今回の作品のモチーフである、ダンス、絵画、そして恋愛。
いずれにしても、人間の心の奥に潜む感情の全てが表に
現れるものだと思う。

嫉妬・怒り・絶望、それらの感情が登場人物ごとに
見事に描きわけられ、やがて殺意に変わってゆく。

冒頭の殺人は誰が犯したのか?
登場人物の誰が殺意を抱いてもおかしくない。

そんな風に描かれてゆく過程が緻密に練りあげられている。
そして想像だにしなかった犯人。
さらに、ダンサー失踪の裏で何が行われていたのか?
その真相に人間の冷酷さを見たような気がした。

それでも、これほど暗い闇、そして暗い激情
が迸った作品なのに、絶望の先には希望が
あるという結末にものすごく救われた。

『カインは言わなかった』
著者:芦沢央
出版社:文藝春秋
価格:¥1,650(税別)

平安時代の京の都を舞台にした異色の歴史コミック!「応天の門」

フリーペーパーに紹介するコミックを
探していたら、面白そうな作品を見つけました。

灰原薬さんの「応天の門」です。
1巻を読んだらはまってしまいました。
今、11巻まで発売中。

平安時代、京の都では貴族たちが華やかな
暮しをしている。
しかし、何か事件が起こるとそれは物の怪、妖怪
呪い、祟りといった人間の力の及ばないものに
原因があるとされ、そういう世の中で陰陽師は
絶大な力を持っていた。

だが、どの時代も人間ほど恐ろしいものはない。

藤原氏が朝廷の権力を掌握しようと目論んでいた時代、
京の都では藤原氏の屋敷から、夜ごと下女が行方不明に
なるという事件が起こっており、貴族たちの間では
その噂で持ちきりとなっていた。
彼らは「鬼の仕業」ではないかと疑う。
その噂は帝の耳にも届くようになり、都の守護を務める
在原業平に事件解決の命が下った!

ところが、犯人探しの途中、業平の縁者である、紀長谷雄が
下女誘拐の犯人として捕縛されてしまう。

その時、長谷雄の学友だという一人の少年と出会う!
彼の名は菅原道真と言った…。

口は悪いがめちゃめちゃ頭が切れる天才少年・菅原道真と
京随一の歌人でありプレイボーイの在原業平、
身分も生まれも違う20歳差の二人が、
都で起こる怪奇事件・難事件の謎を解き明かしてゆく!

権力を嫌い、バカを嫌い、豊富な知識と機転で
事件を解決に導く、天才少年・菅原道真。
守護職にあり、都の治安を守る在原業平。
歴史上の非常に有名な二人が生き生きと描かれ、
そのバディっぷりが小気味良い!
物語の展開もテンポ良く進み、読み始めると続きが
気になってしまう。

また、物語の合間に挿入される、歴史の雑学ネタが非常に
面白い。解説を書いているのは、東京大学史料編纂所教授の
本郷和人先生。ためになります!

まだまだ物語の最初の方だが、続けて読みたい!
痛快!異色の歴史漫画、平安クライムサスペンス!

『応天の門①』
著者:灰原薬
出版社:新潮社(BUNCH COMICS)
価格:¥580(税別)

驚愕のトリックに瞠目!「扼殺のロンド」

「十三回忌」がとても面白く、探偵・海老原の
キャラに惹かれ、続いて「扼殺のロンド」を
読みました。

小島先生の作品は、非常に凝ったトリックが
随所に散りばめられているので、読み進める
のが楽しい。

倒産した自動車工場で壁に激突したと思われる
車があり、その中から男女の変死体が発見された!
女性は腹から胃腸を抜き取られ、男性は高山病で
死んでいた。
鍵のかかった工場内、車の方はぶつかった衝撃で
ドアも窓も開かない。
犯人は如何にして犯行に及んだのか?

静岡県警の小沢刑事と笠木刑事らが捜査を
進めると、死んだ二人は姉川家のいとこ同志だと判明。

そしてその後も、姉川家の親族が次々と「密室」で
不可解な死を遂げていく。

その不可解さに刑事たちはもうお手上げ状態だ。
いったいどうやって・・・・。
そんな時、海老原が笠木のもとへやってきた。
難事件が起きた時、どこからともなく現れる、
風のような探偵だ。

そして、海老原は「密室」のトリックを
暴いてゆく…。

これでもかというくらい「謎」が仕掛けられ、
さらに凝ったトリックに圧倒される。
この謎とトリックの着想は、ひときわ異彩を
放っている。
ほんとに凄いミステリー小説!

次は「武家屋敷の殺人」(講談社文庫)に挑戦!

『扼殺のロンド』
著者:小島正樹
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥694(税別)

女の恐さを思い知る!「ウツボカズラの甘い息」

検事・佐方貞人シリーズの他にも、女性を主人公
としたサスペンス作品を描く、柚月裕子さん。

美しくなりたい、男性から良く思われたい、
お金持ちになりたい!他の誰よりも幸せだと
思われたい!など女性の欲求は果てしない。

家事と育児に追われ、自分自身を顧みることが
出来なかった専業主婦の文絵は、ある日
趣味で応募していた懸賞に当たり、ある大物
タレントのディナーショーへ行った。

そこで中学時代の同級生・加奈子に再開する。
中学時代は地味で目立たなかった加奈子だったが、
美しく変貌し、文絵は全く気づかなかった。

文絵は幼いころ、太っていたためいじめにあい、
中学校進学と同時に転校。そのために必死に
ダイエットをし、近所でも評判の美少女になった。
イジメの過去を知らない中学校の同級生たちは、
文絵の美しさを褒めた。

加奈子に再会し、高級化粧品のビジネスに誘われた
文絵は、中学校時代の自分に戻るべく美しさに
磨きをかける…。
家事育児以外にも生きがいと大金を手にした文絵。

しかし、鎌倉で起きた殺人事件の容疑者として
突然逮捕されてしまう!

無実を訴える文絵だったが、事情を知る加奈子は
姿を消し、さらに詐欺容疑もかけられてしまう。

全ては文絵の仕業なのか?それとも?

あくなき欲望に身を捧げ、破滅へと向かう女性。
人を騙し続け、自身が生き残るためならば
手段を選ばない女性の恐ろしさを描く!

柚月さんには珍しい、嫌ミスの傑作!

『ウツボカズラの甘い息』
著者:柚月裕子
出版社:幻冬舎(文庫)
価格:¥770(税別)

戦慄!殺人鬼との対決!「海底の道化師 新東京水上警察」

吉川英梨さんの「新東京水上警察」シリーズ
第4弾「海底の道化師」を読みました。

殺人鬼との対決!襲いかかる海上での恐怖。
今回も前作以上に凄い展開です。

東京湾海底から、女性の運転免許証が3枚回収された。
その運転免許証は、失踪中の女性のものだった。
良く見ると、出身地や生年月日がバラバラのものだ。
しかし免許証の写真はすべて若い女性だった。
しかもロングストレートの黒髪の持ち主・・・。

五港臨時署刑事防犯課強行犯班係・係長の碇拓真は、
でかいヤマにあたったかも知れないと予感!
早速、本格的に捜査を始めた。

碇拓真の恋人・有馬礼子は碇のような刑事になりたいと
ずっと思っている。五港臨時署刑事防犯課強行犯班係
に配属され、碇と共に捜査が出来ると思っていたのに、
今度は、警視庁第二機動隊第一水難救助隊に異動と
なってしまった。
先輩の女性警察官に毎日しごかれる日々だ。

免許証の捜査から、毎年、若くてロングストレートの
黒髪の女性が拉致されていることにたどり着いた碇たち。
そして、水難救助隊はさらなる捜査をすべく、海に
潜っていった。そして死体を発見する。

同じ頃、救難信号を出していた民間の船の通信が
途絶えた。礼子はその民間の船の乗組員の救助に
向かうというが、碇から厳しい叱責を受ける!
「海を舐めるな」と。
しかし、碇の叱責を無視し、礼子は一人救助に
向かった。

そこで礼子を待ち受けていたものは・・・・!?

シリーズ第4弾は、連続女性殺人事件の正体を暴く捜査と
拉致された礼子救出劇にドキドキの連続だ!

さらに、自然の猛威が海上を包み、脱出不可能に陥る碇たち。
命懸けの脱出を試みるが、次々と襲いかかる海難!
息もつかせぬ脱出シーンにしびれる!

新たに魅力的な人物も登場し、ラブロマンスも繰り広げられる。
そういう複雑な人間関係がどう展開してゆくのか?
楽しみでしょうがない。

舞台は東京湾。派手なアクションはつきもの。
ワクワクが止まらない。

『海底の道化師 新東京水上警察』
著者:吉川英梨
出版社:講談社(文庫)
価格:¥740(税別)

怖すぎる!「家」の恐怖を描く!「スイート・マイホーム」

発売後から、今までにない怖さ、おぞましさということで、
話題になっている、ホラーミステリー、神津凜子さんの
「スイート・マイホーム」(講談社)を読みました。
小説現代長編新人賞受賞作です!

スポーツインストラクターの賢二は、冷え性で悩む妻のため、
1台の大きいエアコンで家中を暖められる、「まほうの家」と
銘うった新居をを購入した。

だが、入居後まもなく夫の友人や、妻の友人のこどもから
家が怖いと言われる。妻も時々家の中で他人の視線を
感じるようになり、赤ん坊の瞳には、不気味な影が
映り込む!さらに地下室では長女が何者かに捕まり
泣き叫ぶ!そしてついに関係者の一人が怪死を遂げる……。

幸せを絵にかいたような家族。しかし夫には決して
妻に言えない秘密があった….。
妻は、表面的には良い妻、良い嫁、良い母親であろうと
務めている。
しかし、そのひずみはやがて家族の間に暗い影を落とす。

家に潜む狂気が、妻・子どもたち・夫の兄弟までも蝕んでゆく…..。
冒頭から漂う怪しげな不安感。
その不安感は読み進めると恐怖に変る!暗い影は、人間の狂気か、
それともモンスターか?最後の最後まで気が抜けない。
イヤミスもホラーも超えた、おぞましいミステリー。
新人離れしたストーリー展開に脱帽です!

『スイート・マイホーム』
著者:神津凜子
出版社:講談社
価格:¥1,500(税別)

最凶の悪女、さらにパワーアップ!「ふたたび嗤う淑女」

中山七理さんの新刊「ふたたび嗤う淑女」を読みました。
「嗤う淑女」で登場した最強の悪女。彼女がパワーアップし、
再び人々を翻弄します。
人を陥れるその手練手管に背筋が凍ります・・・。

女性活躍推進を掲げる、国会議員・柳井耕一郎の
資金集めの隠れ蓑として立ち上げられたNPO法人。
その女性事務局長は、募金活動でも資金が集まらず、
柳井の秘書から何度も叱責を受けていた。
秘書に強烈なライバル心を持っていた事務局長は
同僚の女性から投資の話を持ちかけられる・・・。

社会情勢に不満を持つ人々の心を言葉巧みに操り
信者を集める宗教法人。信者からお布施と称して
多額の財産を集めていた。しかし次第に信者の
数が減り、金策に行き詰まった副館長は、信者の
一人から耳寄りな情報を得るが・・・・。

柳井耕一郎の後援会会長である不動産屋の社長は、
半年前に入会してきた男の口車に乗せられ、
都議会議員選挙に立候補することに。そこで
彼から紹介を受けたのは、当選請負人だった・・・。

国会議員・柳井の周りに集まる金に操られる人間たち。
彼らが引き合わされた投資アドバイザー「野々宮恭子」。
しかしその正体とは!?

欲望にかられたあさましい人間たち、その人間
たちを翻弄し地獄に突き落とす女。
その女がいかにして彼らを死地へと追いやるのか?
女の手腕は恐ろしいほどに見事だ。
そしてその女に騙された人間たちの末路は悲惨だ。
しかし、同情すら覚えない。

この作品はそこまで冷徹に人間の愚かさを描いている。

どんでん返しの帝王が放つ、恐怖の逆転劇!!
読みだしたら止まらない、イヤミスの極致!

『ふたたび嗤う淑女』
著者:中山七里
出版社:実業之日本社
価格:¥1,600(税別)

著者独特の世界観で描かれる人間の怖さ、「少女たちは夜歩く」。

宇佐美まことさんの世界観にはまると抜け出せなくなる…?

城山を舞台に、10編の短編が
紡ぐ、幻想的で怖い….物語。

城山の森の描写が非常に不気味で、登場人物たちの
心に闇が訪れた時に、その魔界にはまってしまうような
悲劇が待ち構えているような、ざわざわした気持ちに
なってしまう。

恋に狂う女子高校生、病を抱えながら息子を思う父、
奇妙な絵の修復をするうちに狂気の世界へと
引きずり込まれた女性、謎のケモノを操る少年?
亡くなった人が見えてしまう女性…。

それぞれの物語の登場人物たちがあるところでは
リンクし、時に時間を飛び越え物語が進んでゆく。

ファンタジックな展開、ホラーとしか表現できない
物語。読み進むうちに頭がくらくらしてくる。
しかし、それこそが著者が物語に仕掛けた罠なのか。
読み手を翻弄する展開の巧さに絶句する。

ホラー、ファンタジー、ミステリーが絶妙な
バランスで融け合い、著者独特のダークさを
醸し出しているところが凄い。

宇佐美さんの世界を存分に堪能できる、傑作。

『少女たちは夜歩く』
著者:宇佐美まこと
出版社:実業之日本社
価格:¥1,600(税別)

タフでクールな女探偵登場!「探偵は女手ひとつ」

タイトルに惹かれて読みました。
深町秋生さんの「探偵は女手ひとつ」(光文社)。

山形を舞台に描かれた、探偵小説。
山形弁がすご~く効いている!!

小学生の娘と二人で暮らす、シングルマザー探偵の
椎名留美は、農家の手伝いや高齢者のおつかいなど、
最近では、ほぼ便利屋と化していた。

山形では、探偵に依頼する事件などあまりない。

ある日、元の上司である警察署長から、
さくらんぼ盗難犯を突き止めて欲しいという
依頼が入った。
久しぶりの探偵業らしい仕事の依頼に
張り切る留美だったが….。

ヤクザから依頼された人探し、イケメンに
つきまとうストーカー退治、などなど….。
地方でも起こりうる事件の闇をあぶり出し、
その事件に翻弄される人間ドラマを臨場感
たっぷりに描き出す。
リアル過ぎる設定と丹念な人物描写が魅力だ。

そして、物語をさらにリアルに感じさせてくれるのは、
ご当地言葉で交わされる会話シーン。
冷酷な事件もあまり恐ろしく感じないのは
このご当地言葉のおかげかもしれない。

過疎にあえぐ地方都市で、自分らしく生きる
クールでタフな女探偵がとてもかっこいい!

『探偵は女手ひとつ』
著者:深町秋生
出版社:光文社
価格:¥1,500(税別)