KY刑事大活躍!「生活安全課0係」第3弾「バタフライ」

富樫倫太郎さんのヤバいくらいに面白い、
警察小説「生活安全課0係」シリーズ第3弾「バタフライ」を
読みました!この作品は新しい趣向で面白かったです。

杉並中央署生活安全課に突如誕生した「なんでも相談室」。
通称‘0係’は、組織からはみ出した者たちの受け入れ先だ。
しかし、唯一のキャリア警部・小早川冬彦の活躍のおかげで
捜査一課からは一応、一目置かれている。
小早川は、科警研の「犯罪行動科学部捜査支援研究室」で
犯罪行動心理学を研究していたため、人のしぐさや行動から
その人の心や考えていることがわかるのだ。
だが、小早川はあまりにも正直なため、だまっていることが出来ず、
人をかなりいらつかせる。それが特技だ。
だから、KY警部と呼ばれているのに本人は全く気にしていない・・・・。

バタフライ

生活安全課0係に小学生から相談事が持ち込まれた。
少年の祖母宅に大金が投げ込まれたらしい。
小早川と相棒の高虎が調査をするうちに同じマンション
の他の部屋にも現金が投げ込まれていたことが発覚。
さらに、近所の小学生たちが、血だらけの猫を
見たといって泣きついてきた。

「バタフライ」
0係の厳しい事務職・三浦靖子は、アラフォーで独身だ。
結婚願望はあるが自分の容姿に自信が無く、投げやりに。
だが一大決心をして結婚相談所に登録した。
何度かお見合いをしたが変な男ばかり。
諦めかけたころ、高収入のイケメンが靖子を気に入ったと
連絡が入る。靖子は男性を見るなり一目ぼれ・・・。
とんとん拍子に話は進むが、なぜこんなにかっこ良くて
高収入の男が自分を好きになったかわからず悩んでしまう。
そんな靖子の様子を心配する小早川は・・・・。

「名前のない馬」
寺田高虎は、ギャンブル好きですぐかっとなる
性格が災いして、妻と引きこもりの娘と別居中だ。
ある日、珍しく競馬で当てた。
だが妻や娘の事を考えると気持ちよくお金を使う
気にならず、乗馬クラブへ行ってみることにした。
なんでもよくわかる小早川には知れるとうるさいので
秘密で通うことにした・・・。

「素直になれなくて」
0係りでは「デブウンチ」とあだ名されている樋村勇作の
趣味は、道行くファッショナブルな女の子をスケッチすることだ。
ばれたら変態とののしられそうで誰にもいったことはない。
ある日いつものように新宿2丁目を歩いていたら、女装した
男性が暴力を振るわれているところを目撃する。
この女装した男性を助けたことで、樋村は、隠れていた
自分の性癖に気づくことに・・・・。秘密の喜びを知った
樋村・・・。だが事件に巻き込まれてしまう。

「17才」
0係の責任者・亀山係長は、気が小さくいつも胃の調子が悪い。
さらに警察官だった妻の尻に敷かれ、息つく暇もない。
そんなある日、買い物の帰りに立ち寄ったお店で、
亀山は恋に墜ちてしまう!驚くべきその相手とは?

「青い影」
0係一の腕っぷしを誇る、安智理沙子に小岩署の刑事から
連絡が入った。安智の母の真由子がパチンコ屋で暴れて
留置所に入れられたという。
安智は母親を憎んでいた。母親は、大酒飲みでさらに男好き。
子どもより男を優先するような女だった。
思春期に入った頃母親と別れ、安智は保護施設で育ち、警察官に
なったのだった。母親との関係に悩む安智理沙子・・・。
小早川たちと0係で扱った事件を追いながら、母の事が頭から離れなかった・・・。

今回の「バタフライ」は、0係で扱った2つの事件の謎を追いつつ、
チームのメンバーの悩みや事件を解決してゆく2重構造で
連作短編になっているところが非常に面白い。
メンバーひとりひとりの物語を描くことによって、より身近に感じられる。
今後のシリーズに深みが増す。そんな風に感じられる作品。
いつもなら、小早川の空気の読めない感が面白いけど、
今回の作品はチームのメンバーが主人公。彼らをサポートする
小早川がとても良い味を出している。

次の作品は「スローダンサー」。楽しみ!

『生活安全課0係 バタフライ』
著者:富樫倫太郎
出版社:祥伝社
価格:¥700(税別)

KY刑事大活躍!「生活安全課0係 ヘッドゲーム」

SRO 警視庁広域捜査特別専任調査室」の著者、
富樫倫太郎さんのヤバいくらいに面白い、
警察小説「生活安全課0係」シリーズ第2弾「ヘッドゲーム」を
いっきに読みました!途中で止まらない!

杉並中央署生活安全課に突如誕生した「なんでも相談室」。
通称‘0係’
そこへやってきたのが、科警研の「犯罪行動科学部捜査支援研究室」で
犯罪行動心理学を研究していた、キャリア警官・小早川冬彦警部だ。
‘キャリアの警部なのになんでこんな掃き溜めに!?’
とはみ出し者たちはいぶかるが、当の小早川は全く意に介さず・・・。
そう!彼こそは場の空気が全く読めないKY警部だったのだ!

ヘッドゲーム

‘0係’に名門高校に通っていたが自殺した娘の死の真相を調べて
欲しいとの相談が持ち込まれた。
その名門高校では、今年に入り、女子生徒が二人も飛び降り自殺をしているのだ。
その自殺は統計上ありえない数字で、単なる自殺ではないと判断した
小早川は、相棒の万年巡査長・寺田高虎と高校を訪ねた。
そこで校長と教頭に「自殺ではなく、殺人では?」と
揺さぶりをかけると二人の態度は急変する。
だが、小早川らが学校を訪問している頃、三人目の犠牲者が出てしまう。

かたや、同じ生活安全課0係の樋村と安智理沙子は、ある女性から
ストーカー被害の相談を受けていた。
女性の方からの一方的な訴えで、男性に話を聞きに行くと、
ストーカー行為などやっていない、女性の方が嘘をついている
と言ってきた。
簡単に片付くと思っていたストーカー事件だったが、小早川は
この事件にも何かあると感じる・・・。

なんでも相談室には、どうでもよい事件が次々と寄せられる。
最初はやる気のなかったメンバーだが、小早川が放火事件を
解決したことでメンバーのやる気に火を点け、一目置かれる存在に。
また捜査一課からも頼りにされるようになる。

今回は、小早川がオタク系で、周りの空気が読めずマイペース
だったことで、思春期にいじめにあい、引きこもりになり、
そのせいで両親が離婚したとの過去が判明。
つらい立場にたった妹も登場する。

小早川は人間の行動心理学を研究していたため、人の心を読むことが出来る。
凄い得意技で超優秀だが、言わなくても良い事を言ってしまうので
反感を買うこともしばしば。だが、人一倍正義感が強く、心優しい人物だ。

「ヘッドゲーム」でもその能力を活かし、不可解な女子学生飛び降り
事件とストーカー事件に向き合う。
人の様々なしぐさや動きでその人が考えていることを見抜き、
相手を動揺させる。
しかし、今回は鍵になる美少女の心が読めず、窮地に!

二つの事件の真相に如何にして辿りつけるのか?
メンタリスト・小早川警部の鮮やかな推理に脱帽!

『生活安全課0係 ヘッドゲーム』
著者:富樫倫太郎
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥800(税別)

このミス大賞‘隠し玉’の傑作!「大江戸科学捜査八丁堀のおゆう」

ミステリー作家の新人発掘「このミステリーがすごい大賞」には、
大賞受賞作のほかに、大賞受賞には至らなかったが、将来性を
感じた作品を編集部が推薦し「隠し玉」として刊行しているものがある。

その「隠し玉」の傑作を発見!
たまたま時代推理小説をピックアップしていた時に
タイトルが気になったので、読んでみました。
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」です。

いやいや~これはほんとに!まさに!「隠し玉」!!
こんなに面白い作品、隠すなよ~と言いたくなるくらい
面白かったです!

八丁堀おゆう

江戸の両国橋近くに住むおゆうは、ある日、老舗の
薬種問屋の主人から、殺された息子の汚名をそそいで
欲しいとの依頼を受ける。
そんな責任重大なお役目、自分に出来るか!?
誰の入れ知恵だ?といぶかしむ、おゆう。
その人物はすぐに判明。
そう、ある事件で八丁堀の同心・鵜飼伝三郎に
手を貸したことがあったのだ。

おゆうは早速伝三郎とともに、薬種問屋息子殺害の
調査に乗り出した。

遺体発見現場は、誰も住んでいない長屋の一室。
二人は遺体が引き揚げられた後の現場を見て、
この場所は殺害現場ではないと判断。
どこか別の場所で殺され、ここへ運ばれたのだ・・。

おゆうは、遺体遺棄現場に落ちていた、血まみれの
手拭いを拝借すると家に持ち帰った。
その手拭いをある場所に持ち込み、鑑定を依頼するためだ。

実は、おゆうの正体は平成の東京に暮らす、元OL・関口優佳だ。
彼女は家の扉をくぐって江戸と現代を行き来する
二重生活を送っていた。
優佳が現場から無断で持ち帰った証拠品は、高校時代に
知り合った化学分析ヲタクの元で科学鑑定される。

現代科学を駆使し、殺人事件の謎に迫る優佳だったが、
江戸の人間に、血液鑑定や指紋鑑定など説明することは
不可能だ。
そこで優佳は、江戸の同心や奉行所の役人が納得できるような
ストーリーを作り上げるのだ。
刑事になりたいと思ったこともある、優佳の鋭い洞察力と
ロジックを駆使した推理で、相棒の同心・伝三郎を始め、
岡っ引きの源七、奉行所の役人を納得させてしまう。
その推理の過程がとても斬新で面白い。
また、本格ミステリのように2転、3転、4転までする
どんでん返しは飽きることがない。

同心・伝三郎の力を借り、八丁堀のおゆうとして江戸時代に
溶け込む女性がとても生き生きと描かれている。
さらに脇を固めるキャラや適役もしっかりと描き込まれ、
読んでいると映像として浮かび上がってくるほどリアル。

そして、伝三郎とおゆうの恋の行方も気になる!

久しぶりに江戸の雰囲気を感じられる作品で、
読み終わる時ちょっとさびしい気分になってしまった。
今後シリーズ化して欲しい作品!

『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』
著者:山本巧次
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥680(税別)

ミステリーファン垂涎!新作読みきり満載「宝石ザミステリー2016」

ミステリーファンなのに、知らなかった。
こんなに凄い、ミステリアンソロジー集がでているなんて!
不覚!!!!!

ずらりと並んだ作家さんたち。
短編だけれど、すべて新作読み切りなんです!
新作ですよ~。

東野圭吾氏、今野敏氏、湊かなえ氏、東川篤哉氏
若竹七海氏、小杉健治氏、長岡弘樹氏、田中啓文氏
深町秋生氏、大宅誠一郎氏、長沢樹氏、葉真中顕氏
12名のミステリ作家さんたちの競演・競作です!

宝石ミステリー

東野圭吾「水晶の数珠」
主人公の男性の家に代々伝わる水晶の数珠。
それを受け継ぐのは長男のみ。
不思議な力を持つ水晶・・。
父の遺言とともに受け取った水晶の秘密に驚愕する。

今野敏「不眠」
機動捜査隊に配属された高丸は、ある日突然
原因不明の「不眠」に襲われる!?
日頃の仕事にも影響が出始めたころ、
高丸は追突事故を起こしてしまう!
だが・・・・。

湊かなえ「ポイズン・ドーター」
毒母親の呪縛から逃れようとする女優は、意外な形で
それを告白することに・・・
娘のためと言いながら、すべて自分の都合の良い方向へと
娘をコントロールする執拗な母親、そこから
逃れられない娘の苦悩が、リアル過ぎて怖い。

東川篤哉「博士とロボットの不在証明(アリバイ)」
しゃべるロボットを発明した博士だったが、ある男から借金を
返せと督促される。
その怒りをロボットに発散すると、ロボットはなんと
そんな奴は殺してしまえばいいと言い出した。
博士は妙に納得して、二人(?)はアリバイ工作を始める・・・。
ユーモアにますます磨きがかかる!傑作です。

メインの4方の作品はものすごく面白かったですが、
他の方々の作品で印象深かったのは、

葉真中顕「サブマージド」
カルト教団に傾倒し、犯罪に加担した兄を持った
妹。その兄を絶対に許さない姉。
だがある日、妹は兄が遺体となって発見された
ことを知る。罪を償ったあと兄がどうしていたのか
を探るため、一人、兄の遺体を確認しに向かう。
カルト教団という社会的大きな事件を扱い、
とびきりのミステリーに仕上げた短編ながら
濃密な作品。

田中啓文「猿の惑星チキュウ」
SF。月から帰った主人公は、街中で人間のように
洋服を着、人間の中に普通にいる猿を目撃する。
だが、それは一瞬で消えてしまった。
その現象は、ある時期を契機に猿が進化した次元と
人間が進化した次元が交差し始めているからだ!
と、とんでもないことになっていた!
この展開はとっても面白くて、
SFをあまり読まないはまさきも楽しめた。

とにかく、面白いミステリー新作が満載です。

『宝石ザミステリー2016』
著者:小説宝石特別編集
出版社:光文社
価格:¥1,500(税別)

腕貫探偵がパワーアップ!シリーズ最新刊「帰ってきた腕貫探偵」

帰ってきた〇〇〇〇マン」と間違えそうなタイトルですが、
それくらいヒーローになった、腕貫探偵。
シリーズ最新刊は霊界からも相談者が!
腕貫、あんたは幽霊も視えるのか!?

「帰ってきた腕貫探偵」は4編の短編を収録。
原点回帰か!?
シリーズ第1弾を読んだときの衝撃が甦ってきた。
そう!腕貫シリーズの衝撃と面白さと安心感を
ミックスしたようなそんな感じです。

第1話「氷結のメロディ」
鳥遊(とかなし)葵は、恐怖におののいていた。
櫃洗大学でバンド活動をしていた仲間の二人が結婚。
だがその披露宴会場でバンド仲間の女性が墜落死した。
その後、結婚した二人も次々とマンションから飛び降り自殺を図った!
なぜ、なんで!!
苦しむ鳥遊に声をかけたのは櫃洗大学のマドンナ・住吉ユリエだった。
ユリエはだ~りんに相談しようと明るい声で言う・・そのだ~りんとは・・?

第2話「毒薬の輪廻」
入院中の老女・粥川育子に襲われた新田目美絵は、刑事から
20年前に粥川の息子が毒死したのは美絵の仕業だったのではないかと
疑っていたからだと教えられた。
20年前、美絵と粥川育子の息子・孝紀は結婚することなった。
囲櫃学園の生徒だった美絵は、若き教師・粥川孝紀に恋をした。
美絵は積極的に孝紀にアタック。高校卒業後、二人は半同棲状態に。
美絵の短大卒業に際し、孝紀の両親に半同棲のことがばれ、
とにかく婚約だけでもということで、婚約式を行うことに。
そんなめでたい日に、孝紀は何者かに毒入りワインを飲まされ
亡くなってしまう。現場の状況は、意図的に誰かを狙って毒死
させることは不可能。20年経った現在も誰が毒を盛ったのか
判明していない。粥川育子がいまになって自分を殺そうとした
本当の理由は何か?悩んでいたとき、目の前に腕貫探偵が・・・・。

第3話「指輪もの騙り」
「夫が留守中に外で他の男とよろしくやっていた女が、わざわざ途中で
自宅に戻り、はずして置いてあった結婚指輪をまたはめて出てゆく・・・」
これを読んだ氷見刑事は、昔の事件を思い出した。
30年前の嫁と姑の変死事件だ。夫の留守中に嫁がよからぬことを
しないかと監視していた姑が、男を連れて帰ってきた嫁と鉢合わせ!
嫁は思わず姑を殺し、行方をくらました。数日後、若い女性の死体が発見される。
それが行方不明の嫁だった・・・。
氷見刑事と水谷川刑事は、ユリエ、鳥遊、その友人江梨子らにレストランに
誘われる。そこでこの30年前の事件の話をしてゆくと、事件の真相が見えてきた・・・。

第4話
1週間ほど前に亡くなった女性は、成仏できず櫃洗市をさまよっていた。
そこで、幽霊のような男に出会う。細くて眼鏡をかけ、若いのか年寄りなのか
わからない、おまけに腕貫をつけている・・・。この男、ずっと自分を見ている?
もしかして私が視えるの・・・・?視えるのならば、私の成仏できない心残りを
聞いてほしい!なんと腕貫さん!この成仏できない美しい老女の悩みを聞くことに!
死んでしまった「私」はいったい誰なの・・?

腕貫ワールド全開!何なんだこの懐かしさと不思議な安心感は!
今回の4篇は人間関係がぐるぐるぐるぐる回る、ひねりにひねった
展開で、真相がわかった時にはおおおお~と膝を打つ感覚。
もう!めちゃめちゃ面白かったです。

『帰ってきた腕貫探偵』
著者:西澤保彦
出版社:実業之日本社
価格:¥1,400(税別)

元お笑い芸人さんが描いた、横溝正史ミステリ大賞受賞作「神様の裏の顔」

2014年、第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作
「神様の裏の顔」の著者は元お笑い芸人・藤崎翔さん。

ピース・又吉さんの芥川賞受賞といい、
お笑い芸人さんって凄い才能があるんだと
改めて思いました。

江戸川乱歩賞とともにミステリ好きならば
この横溝正史ミステリ大賞もとても気になるところ!
読んでみると、あまりの面白さに止まらない止まらない!

神様の裏

教育熱心で教師の鏡、あるいは神様のような、坪井誠造氏が亡くなった。
通夜の参列者は、ご近所さんから、小学生の一団まで、とにかく皆が
深い悲しみに包まれ、だれもが涙を流した・・・。

教え子、元同僚、ご近所さんなど・・・参列者は故人に
対してそれぞれ様々な思いを抱いていた・・・・・。
と同時に故人の思い出が甦ってきた。

元教え子は先生を一番慕っていた。友人が自殺した時
先生が言った言葉を忘れることが出来ない。
隣に住む老女は、自分の夫の認知症と徘徊で悩み
相談したこと、だが、夫は残念ながら事故死したこと、
元同僚は、自分の息子の非行に悩み相談したこと。
だが、バイク事故で寝たきりになってしまったこと。

やがて、故人に対する哀しみが疑惑へと変化する・・・。

そして、通夜ふるまいの席で、ある一人が何となく
つぶやいた「この人に限ってそんなことはないよな」という
ひと言で、それぞれ自分たちが抱えてしまった、故人への疑惑を
話し出した・・・。

元お笑い芸人の著者が描いたミステリー。
日常のなんでもないネタの寄せ集めが、とんでもない事件に繋がっていた!?
絶妙なタイミングで醸し出されるユーモアのセンス、
ミステりにはなくてならない謎の提示と衝撃の展開!
そして、人間の裏の顔?人間の心の闇。
それらすべてが見事なバランスで描かれていて、
とんでもなく面白い!
とても処女作とは思えない出来!

ミステリ好きには絶対におススメ!
超!ぶっ飛びの面白さです!

『神様の裏の顔』
著者:藤崎翔
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,500(税別)

カラクリ人形と大正レトロと本格ミステリーが絶妙にマッチ「からくり探偵」

ユーモア満載の本格ミステリー。
新たに発見しました!
『からくり探偵・百栗柿三郎』伽古屋圭市著(実日文庫)です。

表紙は何とも言えないほんわかな雰囲気。
でも事件はなんとも血なまぐさい・・・。
そんな難事件を、一見頼りなさそうに見えるちょっと不遜な態度が
たまに傷の名探偵・百栗柿三郎と、人語を解する猫型カラクリ人形・お玉さん
そしてひょんなことから、助手になったお千代さんの3人で解決しちゃう
4つのミステリー。

カラクリ探偵

ある屋敷で不可解な主人殺しが起こる。
殺害したのは「人造人間(ホムンクルス)」!?
そんなばかな!最初に疑われた、屋敷のお手伝い
千代さんは、自分の疑いを晴らすためと事件の真相を
はっきりさせるために、探偵を探して・・・おっと
目の前に「百栗庵 よろず探偵 人探しも承り」と小さく書いた
看板を発見。これは天子様のお導きと気を良くした
千代さんは、一見頼りなさそうな青年・百栗柿三郎に
調査を依頼。しかし何ともやるきなさそうな・・・・
第1話「人造人間の殺意」。

探偵よりも発明に精を出す・百栗柿三郎。
得意げに見せられた懐中時計もどき。
それは、「懐中時計型麻酔銃」だった。
一体何に使うのかと思案しながら歩く千代さん。
藪の中で分解死体を発見!殺されたのは、
化粧品会社の社長だった。
そんな中、百栗庵に殺された社長の執事が訪ねてきた。
なぜあんなむごたらしい分解死体になったのか?
柿三郎は調べてみることに・・・・。
第2話「あるべき死体」

日々発明に明け暮れる柿三郎。
今度は「回転慣性乾燥装置」なるものを
発明。千代さんとともにその性能を
確かめるべく装置を動かすとなんと爆発!!
そんな大騒ぎの中、百栗庵に一人の婦人が・・・。
彼女は「一斎居士」の下に身を寄せた息子が
戻って来ないので、連れ戻してほしいと依頼してきた。
一斎居士とは、果心居士の末裔とうそぶく怪しげな手妻を使う男だった。
柿三郎は千代さんをその宿舎に潜入させ、
依頼者の息子を探すことに・・・・。
カラクリ猫・お玉さんと千代さんが大活躍!
第3話「揺れる陽炎」

一斎居士事件から、奇術や手妻のカラクリ覚え、
千代さんに披露する柿三郎。
そんな頃、またしても百栗庵に来客が・・・。
凄惨な事件で両親を失い、行方不明になった
少女を探してほしいとの依頼だった。
依頼した男は、遠縁にあたるものから頼まれたらしい。
柿三郎は、珍しくやる気を出し、すぐに動く。
どうやって行方不明の少女を探すのか?
千代さんとその男は、行方不明になる直前まで一緒に
いた友だちに話を聞くことに。さらに柿三郎は
犬を使って消えた少女の行方を匂いを頼りに探す
と言い出した・・・・。
第4話「惨劇に消えた少女」

大正時代のモダンな設定が、全体を通しての物語にピッタリ。
主人公は冴えない風貌で探偵稼業は、やる気がないのに
めっちゃ頭脳明晰で、発明大好きだからとても博学。
その博学さを活かし、彼自らが考案した指紋採取などの科学捜査、
そして状況証拠を元に繰り出される実験から、明晰な推理を展開。
面白いです!
珍妙な発明よりも、探偵のほうがずっとあっているのに・・。

百栗柿三郎、お千代さん、そしてカラクリ猫のお玉さん
この3人(?)の絶妙なかけあいがたまらない!
続編、絶対に描いてほしい!面白さです。

『からくり探偵・百栗柿三郎』
著者:伽古屋圭市
出版社:実業之日本社(文庫)
価格:¥593(税別)

名探偵は元裁判官のおばあちゃん?!

中山七里さんの本格ミステリー短編集です。

主人公は、警視庁捜査一課の若き刑事・葛城と
元裁判官・高円寺静の孫で、法律家を目指す高円寺円。
そして、冤罪事件判決で苦い過去を持つ高円寺静。

葛城刑事は、警視庁一課ではまだ若く、事件に際して、
天才的なひらめきや、鋭い洞察力とも無縁・・・。
法律家をめざし勉強中の大学生・高円寺円は、葛城の事件を
興味深そうに聞いてくれる・・・。

静おばあちゃん

神奈川県警で起きた、現役警察官射殺事件!
その容疑者として逮捕されたのは、葛城の元上司で
神奈川県警の組織対策課課長補佐・椿山だった。
現場に残された薬莢から、椿山の拳銃だと断定されたのだ。
また殺された警官との確執もあり、殺害動機、
凶器もそろい、椿山の犯行は疑う余地もなかった。
だが、葛城は一人、椿山の無実を信じ管轄外で捜査をしていたが、
行き詰まって円に相談した・・・。
「静かおばあちゃんの知恵」

町田のレディーガガと呼ばれた老女が自宅で変死体となって発見された。
第一発見者は孫娘とたまたま配達に寄った生協の配達員。
資産家だったが、強欲で厳しく育てられた子ども達は、
母親が死んだというのに辛辣な態度。殺害動機はあったが、
犯行時刻、彼らには全員アリバイがあった・・・。
「静おばあちゃんの童心」

新興宗教の教祖が亡くなった。しかし、教祖は甦るのだ。
教祖が亡くなる瞬間に立ち会った信者の一人は、
教祖の遺体が消えるのを間近で見た・・・。だが、教祖は
1週間たっても現れない・・・。教祖はいったいどこへいったのか?
「静かおばあちゃんの不信」

スーパータワーの建設現場のタワークレーン内で作業員が
殺害された!!被害者は日頃から、外国人労働者に
差別的な態度で接してきた男。
殺害現場は非常に高所のため容易には辿りつけない。
犯人はいかにして犯行に及んだのか・・・?
「静おばあちゃんの醜聞」

高級ホテルで、ある小国の独裁者が射殺された。
日本の警察も協力し、蟻の這い出る隙もないほどの
厳重な警備態勢だったにも関わらず事件は起こった。
同じ頃、フロントでは独裁者の妻からの無理難題に
頭を悩ませていた・・・・。
「静おばあちゃんの秘密」

次々起こる難事件!
葛城刑事は事件の概要を円に語る・・・。
円のブレーンは、元裁判官の静おばあちゃん。
彼女の鋭い洞察力と推理で事件の真相が暴かれてゆく!

そして葛城と円の絆も深まる・・・。
その過程も読んでいると楽しい。
血なまぐさい事件の中で、二人の絆はホッと心休まる。

また、円の両親の交通事故の真相は意外な結末を迎える!
さらに、さらに、静おばあちゃん!彼女が安楽椅子探偵にならざるを得なかった
秘密が!!ああああ~

中山さんの作品にはキーになる登場人物がいる。
例えば、「七色の毒」の犬飼刑事。
「贖罪の奏鳴曲」「さよならドビュッシー」の渡瀬刑事など・・・
この作品には、犬飼刑事が葛城の先輩刑事として
ちょっとずつ顔を出している。面白い!
そして、静おばあちゃん。
昨年発売され、このブログでも紹介した
「テミスの剣」に現役裁判官として登場!

静おばあちゃんの名探偵ぶりに脱帽です!

『静おばあちゃんにおまかせ』
著者:中山七里
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥660(税別)

「Jジェイノベル6月号」は西澤保彦先生特集!

3月29日に、本の学校で開催しました、「探偵が腕貫を外すとき 腕貫探偵巡回中
刊行記念 西澤保彦さん トーク&サイン会 腕貫探偵ができるまで」の
トークショーの模様が「Jジェイノベル6月号」に掲載されました。
先生の聞き役は、はまさきが務めさせていただきました。
今回のトークショーの模様が写真入りで掲載されています。

Jノベル6月号

念願かなって西澤先生にお会いでき、ミステリー作家になったきっかけやら、
参考にしている作品などについて、さらにあの超面白い
「腕貫探偵」シリーズについても根掘り葉掘り聞いてしまいました!!
その問いかけに対し、常に真摯に答えてくださり、お話を伺っているとき
とてもとても楽しかったです。

その時に先生がお話になったことがほぼ掲載されています。
西澤先生ファン、腕貫探偵ファンの皆様、どうぞお読みなってください!
西澤ワールドが広がっています!

『月刊 Jジェイノベル 2014年 6月号』
出版社:実業之日本社
価格:¥509(税別)

西澤保彦先生のトークショー、とても面白かったです!

3月29日(土)に本の学校で
『探偵が腕貫を外すとき 腕貫探偵、巡回中』刊行記念
「西澤保彦さんトークショー&サイン会」を開催いたしました。

はまさきが司会進行を承り、
西澤保彦先生と「腕貫探偵」シリーズの担当さんの
お話を伺いしました。

腕貫新刊

腕貫探偵シリーズが生まれたきっかけや、
当初の設定などなど。
神出鬼没の腕貫探偵、当初はゴーストのようなイメージで
描かれたようですが、「腕貫探偵、残業中」から
人間っぽさが出てきたこと。
安楽椅子探偵ということでしすが、相談者に
謎解きのヒントだけだして、あとは自分で解決してね!的な
ストーリーが、それだけでは続けてゆくことが出来ずに
だんだんと探偵らしくなっていったことなど、
『腕貫探偵』が出来るまでのエピソードも楽しく
語って頂きました。
今回の新刊で、腕貫さんとユリエさんが微妙に近くなっていく
過程を苦労したところなども含めてお話頂きました。
意外な脱線もありました。
会場からの質問も的を得た質問ばかり!!
丁寧にお応え頂きました。

西澤先生、ありがとうございました。

トークショーの内容は、imaibooksのサイトでも
近いうちにアップさせて頂きます。
ファンの皆様、お楽しみに!