前作を超える衝撃!話題の探偵コンビシリーズ3作目「殺しへのライン」

ホロヴィッツ自身が作品中に本人役で登場し、
元刑事の偏屈探偵・ホーソーンと
コンビを組んだシリーズ「メインテーマは殺人」、
「その裁きは死」に続く3作目が
本書「殺しへのライン」。

待ちに待ったホロヴィッツ&ホーソーンの
コンビが活躍する新作!
今回はどんな展開が待ち受けるのか?

「メインテーマは殺人」の発売を3か月後に控え、
プロモーションの打ち合わせが行われた。
ホーソーンも呼ばれたが、なかなかやって来ない。
ホロヴィッツは、半ばあきらめていたが、
30分遅れてやってきた。
最初からこの調子で、本当に大丈夫か?
ホロヴィッツは不安にかられる?

プロモーションの場所は、チャンネル諸島の
オルダニー島。
初めて開催される文芸フェスらしい。
ホロヴィッツは絶対に行きたくないと言ったが、
ホーソーンは乗り気で、結局行くことになった。

島に着き、文芸フェスの関係者と楽しそうに
話をする、ホーソーンは珍しく終始上機嫌だった。
イベントの中で、トークショーがありホーソーンは
司会者の質問に礼儀正しく答えている。
ホロヴィッツには話さなかった、プライベート
なことも進んで話している。
ホロヴィッツはホーソーンの新たな一面を
知り驚いた。

その後のパーティーで様々な参加者たちと
話をするうちにホロヴィッツは何となく
不穏な空気を感じ取った。

怪しげな霊媒師、過去に性犯罪で批判された
大富豪。胡散臭い詩人・・・。
さらに、ホーソーンを目の敵にする男など、
曲者たちのオンパレードだ・・・・。

そして、殺人事件が起こった!?
文芸フェスの関係者の一人が死体で発見されたのだ。

今作は殺人事件が起きるまでに、様々な
エピソードが描かれる。
事件が起きてからの怒涛の展開に
ハラハラドキドキさせられる!

関係者からの聴取で、小さな違和感を
見逃さず、そこから推理を組み立てて
事件の真相に繋げて行く過程が、本当に
面白かった。

周囲の空気を全く読む気がない「超」
KYだが、卓越した推理力で事件の真相を
暴く探偵・ホーソーン。
「超」人気のミステリー作家でありながら、
自虐と思わせるほど作中で無能さを
アピールするホロヴィッツ。
このコンビ、ほんとにツボにはまる!

犯人当てミステリーの面白さがこれでもかと
詰まった、傑作ミステリー。

ほんとにいつも思うけれど、
なんでこんなに面白いの?

『殺しへのライン』
著者:アンソニー・ホロヴィッツ著/山田蘭訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,210(本体¥1,100+税)

少女の生きざまに涙が止まらない「われら闇より天を見る」

クリス・ウィタカ―「われら闇より天を見る」
(早川書房)は、
2021年度英国推理作家協会賞最優秀長篇賞
(ゴールドダガー)を受賞した、傑作海外
ミステリー。
ヤングケアラーの少女が、家族を守るために
必至に生き抜く物語。

カリフォルニア州の小さな町。ケープ
ヘイヴンで10代の少女ダッチェスは、
母親と幼い弟と3人で暮らしている。

母親のスターは、酒におぼれ、何度も
救急車で病院送りになっている。
弟のロビンはまだ幼い。
貧しい暮らしや、母親のことで周囲から
孤立しているダッチェスたち。
彼女たちを心配をするのは、警察署長の
ウオークだった。
しかし、ダッチェスは他人に弱みを決して
見せない。自らを「無法者」と呼び、
家族をバカにする大人たちや同級生たちに
敢然と立ち向かった。

ウオークは、30年前に起こった少女殺人事件の
裁判で親友のヴィンセントに不利な証言をして
しまい、ヴィンセントは有罪になった。
そのことをずっと引きずっていた。

そしてヴィンセントが出所し、町へ帰ってくる。
平穏だった町に、さざ波が立ち始める。

そんな時、事件は起こった。
ダッチェスの母親、スターが殺されたのだ!

幼い弟と二人きりになってしまった
ダッチェスは、やがて祖父に引き取られる。
しかし、ダッチェスは彼女たちを顧みなかった
祖父を憎んでいた。
ロビンは祖父に懐いたが、ダッチェスは決して
心を開こうとしなかった。
大人の優しさにすがりたいと思いながらも
裏切られる恐怖に慄くダッチェスだった。
しかし・・・・。

弟のために懸命に生きようとするダッチェス
を次々と悲劇が襲う。

なぜ彼女にだけ・・・。どんなに悲劇に
見舞われようと、絶対に挫けない。
10代の少女なのに、なぜこれほどの強さを
持てるのか?

30年前に起きた、少女殺人事件の真相と
新たに起きた殺人事件の犯人を追うという
ミステリーでありつつ、少女ダッチェスの
強く逞しい生き様を描いた、ヒューマンドラマ。

ラスト一行で、読んでる間ずっと我慢していた
涙が思い切りあふれてきた。

心が激しく揺さぶられる。
この秋、NO1の海外ミステリー。

『われら闇より天を見る』
著者:クリス・ウィタカ―
出版社:早川書房
価格:¥2,530(本体¥2,300+税)

女子高性探偵、再び活躍!!「優等生は探偵に向かない」

「自由研究には向かない殺人」で5年前に起きた
殺人事件の真相を暴いた、女子高生のピッパ。
しかし、その代償はピッパにとっては大きかった。
家族同然の愛犬を喪い、友達の運命を変え、
自分の身も危険だった。そのことがあり、二度と
探偵みたいなマネはしないと心に誓っていた。

ところが、友人のコナーがピッパに助けを求めてきた。
24歳になる兄の行方を捜して欲しいという。
ピッパは頑なに拒否したが、警察に相談しても
全く相手にされなかったという。

コナーは、2週間前から兄・ジェイミーの様子が
おかしかったと話した。
ピッパはコナーの必死さに根負けし、一肌脱ぐことに!

そして、アンディ・ベル事件の顛末を流している
ポッドキャストを使って調査の進捗を配信
して欲しいとコナーから頼まれる。
ピッパはリスナーから手がかりを集めていく。

さらに、関係者へのインタビューや、SNSを
丹念に調べていくと、失踪までのジェイミーの
足取りが少しずつ明らかになっていった。

アンディ・ベル事件の時もピッパの推理力と
洞察力はずば抜けていた。
今回もその能力は遺憾なく発揮され、次第に
事件の全貌が明らかになる。

しかし、それは隠された大きな秘密を暴く
危険極まりない行為でもあった。

驚天動地のクライマックスに唖然とする。

今回も、大切な友人のために必死で事件を
追うピッパに脱帽!

『優等生は探偵に向かない』
著者:ホリー・ジャクソン/服部京子訳
出版社:東京創元社
価格:¥1,430(¥1,300+税)

夏休みの自由研究が殺人事件の捜査!?「自由研究には向かない殺人」

本屋大賞翻訳小説部門第2位!
ホリー・ジャクソン「自由研究には向かない殺人」読了。

女子高校生が、夏休みの自由研究に、自分の育った
町で起こった殺人事件の真相究明をするという
前代未聞のミステリー。
主人公・ピッパの勇気ある行動に感動!

リトル・キルトンに住む、高校生のピッパは、
5年前にこの町で起きた、17歳のアンディ・ベル
失踪事件を自由研究の題材にした。

当時の警察は、アンディ・ベルはすでに
殺されたとして、その容疑者を追っていた。
そして、容疑者扱いされたのは、サリル・シンだった。
アンディ・ベルのボーイフレンドで、アンディと
揉めていたのがその理由らしい。
しかし、そのサリルも森の中で遺体で発見された。

警察は、サリルがアンディを殺し、自殺したと
して捜査を打ち切った。

サリルと親しかったピッパは、彼が人を殺すなんて
ありえない絶対に違うと信じていた。
そして、サリルの無実を証明するために自由研究を
口実にし関係者を調べることにしたのだ。

情報の主な入手方法は、関係者へのインタビューだ。
アンディや、彼女の友人たちのSNSからも情報を
入手した。
やがて、サリルの弟・ラヴィがピッパの相棒となった。
心強い味方を得たピッパは、ラヴィとともに
さらに踏み込んで行く。

すると、身近な人物が容疑者に浮かんでくる・・・。

女子高性が、関係者にインタビューしたり、
彼らのSNSから様々な情報を得るなどして
事件の真相に迫ってゆく過程。
普通だったら聞き逃したり、見逃したり
するけれど、ピッパの推理力と洞察力が
凄かった。このあたりはが謎解きとして
読み応えがあった。
危険を顧みずに、潜入しちゃうろころは
ハラハラドキドキ。

大切な人のためになんとしてでも事件の真相を
明らかにしようとするピッパの勇気ある行動に
心が揺さぶられた。

『自由研究には向かない殺人』
著者:ホリー・ジャクソン/服部京子訳
出版社:東京創元社
価格:¥1,540(¥1,400+税)

古典ミステリー名作中の名作!「バスカヴィル家の犬」

古典ミステリーはほとんど読んだことがなく、
日本映画「バスカヴィル家の犬」が近日
公開ということで、手に取ってみた。
ミステリーファンの方々は、だいたい
シャーロック・ホームズからという人が
ほとんどだと思うけれど、私の場合、
逆行している感じ。

名家、バスカヴィル家の当主・チャールズが
怪死を遂げた。
恐ろしくゆがんだ苦悶の表情を浮かべた
死体のそばには、巨大な犬の足跡が残っていた。
そして、その日住民たちはあやしく光る生物
を目撃していた・・・・。

バスカヴィル家に伝わる恐ろしい「犬」伝説。
住民たちはその伝説について噂した。

急逝したチャールズ・バスカヴィルには、
子どもがいなかった。
巨万の富と、バスカヴィル館を相続するのは、
チャールズの弟の子供。つまり甥にあたる
ヘンリー・バスカヴィル。
アメリカに住んでいる彼に、早速この報が
伝えられた。

チャールズの友人で主治医でもあった医師・
モーティマーは、ヘンリー・バスカヴィルを
心配し、ホームズにチャールズの死について
調査を依頼した。

暫くして、ヘンリーがイギリスにやってきた。
もちろん、正式な手続きを経てバスカヴィル家
の財産を相続するためだ。
しかし、滞在先のホテルで次々と異変に見舞われる。

ホームズは、ワトソンにヘンリーに張り付いて
バスカヴィル家とその村の周辺を探り報告する
ように指示。
ワトソンは不安を抱えながらも、ヘンリーたちに
同行し村へと向かった・・・。

寂莫とした荒地(ムーア)という土地と、
魔犬という不気味な伝説が融合し、事件の
恐ろしさが増している。
ホームズとワトソン以外、登場人物がすべて
怪しく見えてくる・・・。読者を翻弄しているのか?
切れ味鋭いホームズの推理は、読む者の度肝を抜く。
そして、クライマックスの怒涛の展開は圧巻!
これ一冊ではまってしまった。
他の昨品も読んでみたくなった。

日本映画「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」は
どんな物語になるのか?楽しみ。

『バスカヴィル家の犬』
著者:アーサー・コナン・ドイル/深町眞理子訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:792円 (本体720円+税)

圧巻の展開!「アリスが語らないことは」

ピーター・スワンソン著「そしてミランダを殺す」
「ケイトが恐れるすべて」に続く、サスペンスミステリー
「アリスが語らないことは」(創元推理文庫)読了。

今回はどんな展開が待っているのか?
ワクワクしながら読みました。
まったく!スワンソンは、ミステリーファン
を裏切らない!!
えッ!?と思わず声がでてしまう意外過ぎる展開。

卒業式を数日後に控えた大学生のハリーは、
継母のアリスから父親の事故死を知らされる。
あまりにも突然の出来事で、ハリーは悲しみよりも
驚きの方が強かった。
友人のポールと二人、急ぎ実家へ戻る。

美しい継母アリスは憔悴し、困惑しハリーに
すがった。
刑事によれば、父親は海辺の遊歩道から転落する前、
何者かによって頭を殴られていたという。
ハリーはアリスにそのことを問いただすが、
アリスは事件について話したがらず、ハリーは小さな疑問を抱く。

ハリーの父親はミステリー小説好きで、自営で書店を2店
持っていた。その二つは、ハリーの父の友人たち
に任せていた。
父親は誰かに恨まれていたのか?
ハリーは父親の友人たちに聞いてみるが、そんなことは
ないだろうと言う。
そんな中、父親の女性問題が浮上する。

彼らの過去と現在を行き来する物語。
淡々と描かれるが、その物語は、徐々に狂気を
孕んでゆく・・・。

父の死は悲劇か、それとも巧妙な殺人か? 

読み進めてゆくとあるシーンで今までの世界観が
一変する。それこそ思わず「えっ?」と一瞬
止まる。そして心がざわつき始める。

えええ~~~ッ

予想をはるかに超えた展開は、それまでの作品を
凌駕する。

凄すぎる圧巻のサスペンスミステリー。

『アリスが語らないことは』
著者:ピーター・スワンソン著/務台夏子訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,210(¥1,100+税)

アサドの過去に号泣!「特捜部Q アサドの祈り」

デンマークの大人気警察小説「特捜部Q」シリーズ。
第8作目「アサドの祈り」を読みました。
アサドの隠された過去が明らかになります。
それはあまりにも哀しい過去・・・。
さらに、カールの周辺は新たな動きが。

キプロスの浜辺に、難民とおぼしき老女の
遺体が打ち上げられた。
スペインのジャーナリスト、ジュアンは
そこでスクープをものにする。

そのスクープ記事は「犠牲者2117」として
紹介された。
メンタルが崩壊し休職していたローセを
見舞ったアサドは、ローセの寝室の天井に
貼ってあった老女の写真を見てうちのめされる。

「犠牲者2117」とは、アサドが失った最愛の
家族との繋がりを持つ人物だったのだ。

アサドとは一体何者なのか?
特捜部創設当初からカールの相棒だったアサド。
風変わりで、時に怪しげなデンマーク語を話す。
しかし、捜査能力は刑事並み。
いつの間にか、カールにとってアサドは
なくてはならない存在になっていった。

そのアサドがついに自らの過去を打ち明ける。
ガーリフというテロリストとの因縁、
アサドに報復するため、ガーリフはアサドの
家族を奪った。
その家族が「犠牲者2117」とともにいた。

その壮絶すぎる過去は、特捜部Qの面々を
打ちのめした。
そして、宿敵・ガーリフと決着をつけるべく、
家族を奪還するためアサドとカールは捜索を開始する。

一方、Qには若い男から殺人予告の電話がかかってきた。
当初はいたずらかと思われた。しかし、男は
本気のようだ。カールとアサドがいない中、
Qの面々は、男が凶行にいたる前に
所在をつきとめようと奔走する!

アサドが抱える事件と、不気味な男の殺人予告。
二つの事件の行方にページをめくる手が止まらない。
アサドとカールがガーリフにたどり着く過程、
殺人予告をした男の所在を突き止めるための
犯人との絶妙なやりとりなど、読み手を
翻弄する描写に驚愕の連続だ。

シリーズ最高傑作と呼んで良い!
ついにアサドの素性が明らかになる
面白すぎる!シリーズ激動の第八弾!

『特捜部Q アサドの祈り』
著者:ユッシ・エーズラ・オールスン著/吉田奈保子訳
出版社:早川書房
価格:¥2,310(¥2,100+税)

予想だにしない展開に絶句!ミュッソ「夜と少女」

「ブルックリンの少女」「パリのアパルトマン」
「作家の秘められた人生」と、ギヨーム・ミュッソ
のミステリーにはまり、読み続けている。
新刊の「夜と少女」も当然のごとく手に取って
読んでみた。

この作家、描くたびに面白さが増す。
「謎」の引き出しがどれくらいあるのだろう・・・。
どの作品もまったくテイストが違っていて
読むたびに新鮮に感じられる。

1992年、コートダジュールの名門高校で
美貌の少女・ヴィンカが突如姿を消した。
当時、彼女と噂のあった哲学教師・
アレクシスと駆落ちしたとみなされ、
捜査は打ち切られた。

それから25年間、彼らの姿を見た者はいない・・・。
ヴィンカに思いを寄せていたトマは、
人気小説家となっていた。
その親友・マキシムは政治家となった。
二人はヴィンカ失踪の事件に関わる秘密
を抱えながら25年の時を過ごした。
その恐るべき秘密は巧みに封印されたはずだった。

ところが、彼らが卒業した高校で創立50周年の
記念祭が催され、その機会に体育館を解体し、
新たな校舎建設の着工式行われることになると、
事態は急変する。

そのニュースを聞き、愕然とするトマとマキシム。
彼らの恐るべき過去が暴かれるのか?

少女失踪の裏で何があったのか?
過去と現在を交互に描きながら、
子どもたちの罪、そして苦悩が浮き彫りになる。
さらに、子どもたちを救おうとする
大人たちの危険極まりない思惑・・・。

多くの伏線を緻密に配し、クライマックスに
向かって見事に回収されてゆく。
しかし、その衝撃度は生半可なものではない。
ミュッソにしか描けない超弩級の結末に
またしても、やられた!

『夜と少女』
著者:ギヨーム・ミュッソ
出版社:集英社(文庫)
価格:¥1,210(本体¥1,100+税)

戦慄のサスペンスミステリー「すべてのドアを鎖せ」

世界20か国で翻訳されたベストセラー
日本初登場の作家、ライリー・セイガ-著
「すべてのドアを鎖せ」を読みました。

何が起こっているんだろう・・・?
不安を掻き立てられるような構成に
魅了され、いっき読み!
物凄く面白かった。

仕事を首になった日、彼の浮気が発覚!
激怒し、ショックのを受けたジュールズは、
彼のアパートから出て行った。

そんなジュールズは、マンハッタンに
ある高級アパートメントの求人広告に
飛びつく。

それは、マンハッタンに100年近く建つ
「バーソロミュー」というビルの空き
部屋の番人という仕事だった。

短期間の契約で月に4千ドルの報酬
失業中の上、身寄りもないジュールズに
とっては破格の条件だった。

ただし、居住するにあたっての条件は
非常に厳しいものだった。
来客禁止、外泊禁止、居住者の邪魔に
なることはご法度。

ジュールズの親友・クロエは高額な
報酬と奇妙な条件の話を聞いて、絶対に
おかしい、怪しいと言った。
そして、かつて「バーソロミュー」で
起きた事件や、噂を掲載したニュース
サイトをジュールズに送るが・・・。

クロエの気遣いをありがたいと思いながらも
ジュールズにとってこの仕事は最後の希望だ。
そんなに簡単に諦めることはできない。

全ての条件をのんで、その空き部屋に入居した。

ところが、その夜奇妙な音を耳にする。
ジュールズはその夜から建物の不気味さに
悩まされるのだった・・・。

不安に陥ったジュールズは、自分と同じ
番人としてアパートに住んでいる人たちと
ともに、この高級アパートメントに
ついて調べはじめるが、仲良くなった
番人の一人が消息をたってしまう!

ジュールズが危険を顧みずに、密かに
調査を続ける過程の描写は、危機感を
どんどんあおっていき、とんでもない
ことが起こるのではないかと、ドキドキ
してしまう。

そして、建物の歴史の裏に隠された
戦慄の真相に愕然とする!!

ホラー!サスペンス!スリラー!
ノンストップですべての怖さを
味わえる!

『すべてのドアを鎖せ!』
著者:ライリー・セイガ-
出版社:集英社(文庫)
価格:¥1,375(本体¥1,250+税)

鳥肌物の面白さ!再び!「ヨルガオ殺人事件」

ミステリー界に衝撃を巻き起こした
「カササギ殺人事件」の続編「ヨルガオ殺人事件」
が発売になりました!

アンソニー・ホロヴィッツの新作は毎年出ています。
名探偵・ホーソーンとホロヴィッツの
迷コンビものも大変面白く毎回楽しみ
ですが、まさか「カササギ」の続編が出るとは!
大興奮でいっきに読んでしまいました。

元編集者で、現在は夫とともにクレタ島で
ホテル経営を営む、スーザン・ライランド。

ある日、彼女の元へイギリスのホテル
経営者・トレハーン夫妻が訪れた。

8年前に彼らのホテルで、宿泊客が
殺害される事件が起こり、ホテルの
従業員だった男が逮捕された。

その事件をヒントに作家のアラン・コンウェイが
名探偵・アティカス・ピュントシリーズ
「愚行の代償」として発表した。
その編集を担当したのがスーザンだったのだ。

その本を読んだ彼らの娘が、本の中で
8年前に起こった事件の真相を見つけたと
連絡してきた。
ところがその直後、彼らの娘が失踪したという。

スーザンは彼らに失踪した娘の行方と
事件の真相を突き止めて欲しいと懇願される。

自分が編集者だった責任を問われているのか?
多額の報酬も魅力的に映った。
スーザンはイギリスへと旅立つ。

現実の事件と作中作「愚行の代償」で
繰り広げられる殺人事件。

「ヨルガオ事件」という一つの作品の中で
全く違う二つの事件の謎を解いてゆく。
そして、その作中作「愚行の代償」の中に
こそ、現実で起こった事件の真相が
隠されているという。

作家、アラン・コンウェイは
「愚行の代償」にどんな意地悪な
仕掛けを施したのか?

「愚行の代償」は、まさにアガサ・クリスティの
ポアロシリーズを彷彿させる展開。
完璧なクリスティへのオマージュ。
独立した一つのミステリー作品として十分に楽しめる。
そして、この作品がリアルな事件にどう絡むのか?

緻密に配された伏線が徐々に回収されると
とんでもない真相にぶちあたる!!!

「カササギ殺人事件」を凌ぐ面白さ。
これほど完璧な謎解きと犯人当ての
ミステリー作品を描くホロヴィッツに脱帽です。

『ヨルガオ殺人事件 上下』
著者:アンソニー・ホロヴィッツ著/山田蘭訳
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:上下各¥1,100(上下各¥1,000+税)