博士号を持つ異色のノンキャリ・沢村依理子刑事シリーズ第2弾「数学の女王」

第67回江戸川乱歩賞を受賞した伏尾美紀さんの
「北緯43度のコールドケース」(講談社)
第2弾「数学の女王」読了。

前作以上に面白かった。
沢村依理子刑事の凛としたかっこよさが際立つ。

博士号を持ちながら、30歳で北海道警察の
警察官となった沢村依理子は、その異色の
経歴ゆえ、道警では少し浮いた存在だ。

所轄の強行犯係から道警本部の警務部へ
異動になった依理子は、この人事に
疑問を持っていた。
それはある出来事により監察官室から
目をつけられているからだ。

そんな中、新設されたばかりの大学で、
爆破事件が発生した。
学長の「桐生真」宛の荷物を学長秘書の
女性が受け取り爆発。その女性と
近くにいた女子学生が犠牲になってしまった。

この事件を機に、警務部付きで捜査一課に
異動となった依理子。
ところが、爆破事件の捜査は一向に進展せず、
テロ事件ではないかとの疑いも出てきた。
そして、公安との駆け引きの中で捜査を進めることになった。

ある事情で、依理子は突然班長を任されることに!
異色の経歴、さらに新参者の女性刑事だ。
そんな彼女に対し、班員たちは心中複雑な思いだった。

しかし、依理子の真摯な捜査態度を見た
班員たちは次第に依理子に心を開き始める。
そして捜査が進むと、ある重要人物が浮上してくる。

爆破事件の犯人の目的は一体何なのか・・・・?

捜査は一点に絞られたが、依理子は違和感を感じる。
彼女の鋭い洞察力であることに気づくと
事件の真相は一転する。
さらにチーム内のスパイまで炙り出す。

大学研究室という閉じられた空間で根強く残る
アカハラ、性差による無言の圧力。
己の才能に溺れ視野狭窄に陥った天才の末路が
痛々しい。
それによって、依理子の過去の因縁も明らかになる。
現代の大学の闇にも迫った警察ミステリー。

様々な葛藤の中、男性優位の組織で性差を超え、
凛として自分の職務を全うする、
ヒロインの姿に清々しさを感じた。

『数学の女王』
著者:伏尾美紀
出版社:講談社
価格:¥1,925(本体¥1,750+税)

警察ミステリーとホラーの完璧な融合「地羊鬼の孤独」

大島清昭さんの「地羊鬼の孤独」(光文社)読了。
初読みの作家さん。

警察小説・本格ミステリー・ホラーの融合で
絶妙な面白さを生んでいる。

市内で全裸遺体の入った棺が次々と発見された。
その遺体は内臓が模型に変えられるという
無惨なものだった。
犯人の意図や動機が一切判明せず、
殺人事件をつなぐものは、現場に残された
「地羊鬼」という中国の妖怪の名前のみだった。

新米刑事・八木沢は、女性警部補・林原と
コンビを組んだ。
林原は、自称妖怪研究家・船井の協力を得て
心霊や、妖怪といったオカルト方面からも
この事件を捜査にあたった。

それはやがて、過去の連続殺人事件に繋がってゆく。

ところが、捜査が進むと信じがたい状況が現れる。
捜査員が次々と倒れ、本部は壊滅状態に!
もしかして、この捜査本部は呪われてしまったのか・・・!?

さらに、妖怪研究家・船井の蘊蓄の凄さに驚愕する。

呪いの木札、得体知れない者の目撃証言、
心霊スポットで起こる怪異現象など、ホラー要素が
強いが、それがリアルな霊的現象で描かれているのか?
それともオカルト的トリックを使ったミステリー
なのか?その曖昧な境界がとても不気味に感じる。

呪いや幽霊と言った科学では解きあかせない
現象はとても恐ろしいが、生身の人間は
どうだろうか?
人間の心の闇ほど恐ろしく手に負えないものはない。

本格的警察小説にホラー・ミステリーをミックス。
そしてロジックを駆使した推理とどんでん返し、
二重三重の謎解き!ホラーミステリーの恐ろしさ・面白さを
全て詰め込み、まさかのラストに「ありえない!」と
思わず叫んでしまう!鳥肌物の凄い作品。

『地羊鬼の孤独』
著者:大島清昭
出版社:光文社
価格:¥1980(本体¥1800+税)

シリーズ完結編!『女副署長 祭礼』

松嶋智左さんの「女副署長」シリーズ完結編
「祭礼」を読了。
とても好きなシリーズなので、3巻で
完結なのはちょっと寂しい気がする・・・。

Y県初の女性副署長として勤務する田添杏美は、
県郊外の佐紋署からY県で最も繁華街にある
A級署の旭中央署に異動になって2年が経過していた。

旭中央署は、6年前に夏祭りで行方不明に
なった女児をいまだに発見できていないと
いう事案を抱えていた。

そんな中、新たな署長が赴任してきた。
30代の女性キャリア・俵貴美佳だ。
杏美はまず、6年前の女児行方不明事件の
事案について説明をした。
女児の両親は毎年チラシを配り情報を
集めていた。旭中央署もずっと一緒に
動いている。

貴美佳は、署長として様々な会合に
参加し、張り切っているようだった。

ところが杏美に監察から声がかかった。
署長に関する極秘の案件だった。

同じころ、二年前の強盗傷害事件の被疑者が
動き出す。そして被疑者の関係者が転落死!
事故ではなく事件の疑いが出てきた。
ところが、旭中央署捜査一課のメンバーが
次々と体調不良で倒れてしまう。

それに伴い、県警本部捜査一課三係の
剛腕・花野警部が助っ人にやってくる。
強盗傷害事件について、意外な方向へと
展開してゆく。

6年前女児が行方不明になった夏祭りの日、
杏美は単独である人物を追った。

旭中央署が抱える3つの事案。
6年前の女児行方不明事件、強盗傷害事件関係者の
不審死、そして署長にからむ不祥事。
一つ一つの事件が非常に丁寧に描かれ、見事に
交錯し、捜査小説としての面白さは群を抜いている。

心の準備ができないまま読んだまさかの結末!
衝撃が強すぎて言葉が出なかった・・・。

『女副署長 祭礼』
著者:松嶋智左
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥693(本体\630+税)

偽造運転免許証の謎を暴け!『黒バイ捜査隊 巡査部長・野路明良』

「女副署長」シリーズでおなじみの
松嶋智左さんの新シリーズ「巡査長・野路明良」
第二弾「黒バイ捜査隊」読了。
元警察官で、初の女性白バイ隊員だった
著者が描くものすごくリアルな警察小説。

警察学校の恩師・山辺佑警部補から、
運転免許センターの技能試験監督の
仕事を勧められ、運転免許センターに
異動した、野路明良は、新設された
黒バイ捜査隊の訓練も担っていた。

その黒バイ捜査隊が追跡した不審車両の
運転手が所持していたのは、精巧な
偽造運転免許証だった。
ICチップが搭載された本物の運転免許証。
しかしそのICチップが別人のものに書き換え
られていた。

そんな免許証の偽造が発覚した直後、
センター係長が庁舎から飛び降り、
重体になってしまう。

知事・公安委員らからも免許証偽造に
ついて厳しい意見がでた。

野路は、そんな精巧な免許証の偽造は
内部の協力がないとできないのではと
推理。
内部の組織的犯行を疑う野路は、仲間と
ともに独自に捜査を始めると彼の前に
謎のバイク集団が現れた!?

ICチップ書き換えの偽造免許を巡る犯行により、
運転免許センターの署員たちが次々と
事件に巻き込まれてゆく。
何が目的なのか?
黒幕の正体とは?

もし運転免許が知らないうちに偽造
されていたら・・・・。
私たちの身近である運転免許センターで
起こる絶対にあってはならない、でも
もしかしたら起こるかもしれない事案を
元に練り上げられた警察ミステリー。

大切な仲間が犠牲になったことで、
野路の怒りは頂点に達している。
どんなことがあっても絶対に真相を
暴いて見せるという野路の警察官として
意地が感じられた。

バイクを駆使し、犯人らを追い詰める
シーンは毎回手に汗握る展開!
バイクアクションの描写も見事!

本格ミステリと、元警察官という著者の
経験が警察のリアルな描写と融合し
これまでの警察小説にはない面白さが
楽しめる。

『黒バイ捜査隊 巡査部長・野路明良』
著者:松嶋智左
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥792(本体\720+税)

開署準備に追われる署員たちを襲う前代未聞の事件!?『開署準備室 巡査長・野路明良』

「女副署長」シリーズでおなじみの
松嶋智左さんの新シリーズ「巡査長・野路明良」
第一弾「開署準備室」読了。
元警察官で、初の女性白バイ隊員だった
著者の、白バイの描写がものすごくリアル!

巡査長・野路明良は、白バイ隊員のエース
で、全国白バイ安全運転競技大会で優秀な
成績を収め、Y県警本部を優勝に導いた
男だった。しかし、後輩とともに捜査中
車の事故で後輩を死なせたうえに、自分自身も
右手の指二本に障害を負い、二度と
白バイには乗れなくなった。
リハビリ後の復帰先は、吸収合併で
出来た姫野市に置かれる、姫野署の開署準備
のために臨時で作られた総務担当だった。
その異動で、野路は自棄になっていた。

四日後に開署予定の姫野署の準備は終盤を
迎えていた。
野路は、総務担当の山辺礼美らとともに
最終チェックに明け暮れている。
ところが、不審な出来事が次々と起こる
発注外の大型什器の搬入、防犯カメラの
誤作動、不審人物の目撃など・・・。
本部のお偉方を招いてのセレモニーに
暗雲が立ち込める・・・。

一方Y県にそびえる信大山のキャンプ場で
人間の白骨遺体が発見された!?
捜査本部が出来るが、身元が判明しないまま
捜査は膠着状態に陥った・・・。

開署準備に追われる野路らを放って、
ベテラン刑事だった上司の飯尾は、
白骨死体の捜査に首をつっこむ始末・・・。

だが、飯尾の行動は膠着状態だった
捜査が動き出すきっかけとなるのだ。

開署前の姫野署で続く不審な事件、
さらに白骨死体の事件が交差した時
迷宮入りしていた事件に繋がる!

しかしその事が、姫野署を大惨事に
巻き込んでゆく!

白バイが疾走し、奇跡的な運転技術を見せる
シーンは、元白バイ警官の知識と経験が
これでもかと発揮され、圧倒的な
臨場感で描かれている。

大胆不敵、空前絶後の展開で読者を
翻弄する、稀にみる面白さで迫る警察小説!

『開署準備室 巡査長・野路明良』
著者:松嶋智佐
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥770(本体¥700+税)

刑事・毒島シリーズ第1弾!「作家刑事毒島」

先に第2弾「毒島刑事最後の事件」を
読んでしまい、しまったと思ったのですが、
順番として良かったかなと・・・。
その毒島の犯人を追いつめる毒舌の
鋭さにすっかりはまってしまいました!

刑事を辞めた後、人気作家となった毒島。
しかし、刑事として優秀だった毒島は、
刑事技能指導員として警察に復職。
作家と警察官、二足の草鞋で忙しい日々を送る。

新人賞の選考に関わる、下読みを担当する
編集者が刺殺死体が発見された。
何度も新人賞に応募しては下読み段階で
振り落とされ、その編集者に恨みを
持つ三人が容疑者として浮上するが
捜査は難航する。
そこで捜査一課の犬養刑事は、作家の
毒島を訪ねるよう、新人刑事・
高千穂明日香に助言する。
【ワナビの心理試験】

編集者としてとびきり優秀だった
男が変死体で発見された。
警視庁捜査一課の犬養と高千穂らが
捜査を開始すると、殺害された編集者は
二人のラノベ作家とトラブルを起こして
いたことが判明する。
容疑者を二人に絞ったが鉄壁のアリバイがあり、
またしても捜査は行き詰まってしまう。
高千穂は、毒島の仕事場所へ向かう。
【編集者は偏執者】

エンタメ系の賞で最も歴史のある新人賞の
授賞式。あるベテラン作家は、今回受賞した
新人作家の受賞に最後まで反対していた。
しかし、出版業界を盛り上げるためということで
受賞を決めてしまった。
デビュー後に作品を発表できない未熟な
新人作家に厳しい発言をするベテラン作家。
そのベテラン作家の無惨な死体が
彼の事務所で発見される。
シュレッダーに巻き込まれた死体・・・
事故か殺人か?
【賞を獲ってはみたものの】

書評家気取りで、ブログで作家の作品をおとしめる女性。
作家に恋愛感情を持ち、ストーカーまがいの
行動を繰り返す女性。
作家希望の女性。ある作家の作品と自分の作品の
類似点を探しその作家に自分を売り込もうと必死だ。
そんな3人は、ある作家のイベントに参加した。
おまけにイベント後の打ち上げの会にこの3人が
抽選で当たってしまった。
しかし、その打ち上げはこの3人によって修羅場と化した。
その後、作家の死体が発見される。
【愛涜者】

毒島の作品のドラマ化が決まった。
しかし、毒島側はドラマ化に際し、
原作とはおよそかけ離れた内容に納得できず
抗議文を送った。
しかしドラマプロデューサーは抗議など
無視して撮影を始めようとした。
回答をよこさないテレビ側。
毒島は回答をするまで徹底的に抗議し続けた。
強硬な態度をとるプロデューサーと毒島との
間で疲弊する、ドラマ監督と脚本家・・・。
そんな中、ドラマプロデューサーの死体が
地下通路で発見される!
【原作とドラマの間には深くて暗い川がある】

今回は、出版業界のドロドロとした闇に
焦点を充てる。
出版業界の一番はしっこにいる書店員から
見ると興味深い内容で、とても面白かった。

自分を大物作家だと思っている勘違い新人作家や、
作家の作品を勝手に変えてドラマ化する
エゴの塊のようなプロデューサーなどなど
今回の登場人物たちも、エリート意識に踏み
固められ歪んだ自尊心の持ち主ばかり。
しかし、「殺人」は許されない。

毒島は皮肉と揶揄を含んだ毒舌で容疑者たちを
極限まで追いつめ、事件の真相を暴き、
犯人を特定する。

この容赦ない毒舌、「超」痛快!!

『作家刑事毒島』
著者:中山七里
出版社:幻冬舎(文庫)
価格:¥715(本体\650+税)

元女性警察官の執念!「三星京香、警察辞めました」

「女副署長」シリーズの著者・松嶋智佐さんの
「三星京香、警察辞めました」(ハルキ文庫)読了。
著者の松嶋智佐さんは、元警察官で白バイ隊員だった
経験を活かし、警察小説を描く。
警察内部の描写はリアルで読み応えがあります。

県警本部刑事部捜査一課の三星京香は
後輩の女性刑事が警察内部でパワハラを
受けていることに気づく。
その張本人は、なんと刑事部長だった。
後輩の弱みに付け込み、パワハラを
行っている現場に踏み込んだ京香は
刑事部長に拳を振り上げ、怪我を負わせて
しまう。
そして、十年勤め上げた警察人生に終止符を打った。

その後、幼馴染の弁護士・藤原岳人を頼り、
彼が勤めている県内有数の弁護士事務所で
調査員として働くことになった。
離婚した夫から娘の親権を得ようと、京香は
岳人に間に入ってもらっていた。

岳人が抱えている案件は、奇妙な事件だった。
被告人の男性が、たまたま通りかかった
被害者の男性にお金を貸して欲しいと迫り
拒絶され口論になり、近くにあった看板で
殴りつけ後頭部に怪我を負わせた事件だった。

被告人の情状酌量の証人として、親交のあった
女性に法廷で証言して欲しいということで、
打ち合わせをする予定だったが、その女性の
行方がわからなくなってしまったのだ。

京香は、その女性の行方を捜すことに。
相棒は警察嫌い、パラリーガルの女性だった。

元警察官だった京香は足を使って調査する
ことに慣れている。
女性を探す過程で、この事件の胡散臭さが
際立ってきた。

女性を見つけ、3人で戻ってくる。
岳人に連絡するが、既読にならない。
娘を岳人に預かってもらっていたため、
京香はまず岳人の家に向かった。
ところがそこで、岳人の遺体を発見する!
娘は別の場所で静かに寝息を立てていた。
京香は安堵と恐怖と凄まじい怒りを感じた。
岳人を殺したのは誰なのか・・・?

この胡散臭い事件は、複雑な人間関係が
絡み合い、とんでもない真相に繋がってゆく。
そして、同時に岳人は誰に殺されたのか?
という謎を追ってゆくことになる。

三星京香の、元警察官としての矜持が
幼馴染の死の真相を暴く!

警察の事件捜査の描写が圧倒的にリアル!
さらに殺人事件の謎解きは、犯人当ての
本格的展開。
警察小説としても、本格ミステリー小説としても
楽しめる、傑作警察小説!
どうか、シリーズ化して欲しい。

『三星京香、警察辞めました』
著者:松嶋智佐
出版社:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
価格:¥770(本体\700+税)

毒舌刑事が凶悪犯を追いつめる!「毒島刑事最後の事件」

中山七里さんの文庫新刊「毒島刑事最後の事件」読了。
「作家刑事毒島」の刑事時代の物語を描く。
七里先生、何を読んでも面白い!

大企業が並ぶ大手町で起きた連続射殺事件。

ミステリー新人文学賞を主宰する大手出版社を
狙った連続爆破事件。

婚活中の女性を狙った連続硫酸ぶっかけ事件。

緊迫した捜査会議で、上位陣の捜査方針に
NOを唱える毒島。
彼の人を小馬鹿にしたような態度に上位陣、
さらに彼の属する班の班長・麻生は冷や汗ものだ。

しかし、理路整然とした彼のプロファイリングに
上位陣はぐうの音も出ない。
管理官らは、毒島の軽妙な語りによって
毒気を抜かれてしまう。

そして、事件の犯人たちは、毒島のずば抜けた
推理力と捜査能力であっけなく逮捕される。
犯人たちを追いつめ、自白させる過程で、
毒島は、こんな承認欲求をこじらせた
ガキみたいなやつらが、これほどの犯罪計画を
たてられるはずがない。
絶対に「黒幕」がいる・・・と確信する。

弱者を踏みつけても平気でいられるような、
エリート意識に踏み固められ歪んだ自尊心を
持つ犯人たちを、毒島は皮肉と揶揄を含んだ
毒舌で極限まで追いつめる。

彼の執拗な聴取と、脅しともとれる追いつめ方に
犯人たちのメンタルは粉々に砕け散ってしまう!

こんな刑事と対決することになったら、絶対に
勝ち目はない。

毒島刑事!恐ろしい。けれど凄い奴。
自分の欲求を満たすだけの殺戮を毒島は決して
許さない。
犯人たちを追いつめる過程は、清々しいほど!

「ドクターデスの遺産」「切り裂きジャックの告白」など
犬養隼人シリーズの犬養刑事が毒島刑事のバディ
として登場しているところも面白い!!

『毒島刑事最後の事件』
著者:中山七里
出版社:幻冬舎(文庫)
価格:¥781(本体¥710+税)

傑作!警察小説アンソロジー集「偽りの捜査線」

誉田哲也、大門剛明、堂場瞬一、鳴神響一、
長岡弘樹、沢村鐵、今野敏。
今、人気の作家が描く警察小説の傑作短編。
単行本で出てもおかしくない作家さんたちの
作品を集め、いきなり文庫で登場!

大手電通会社のヤマシロメグミという女性が
殺害された。その容疑で警察に逮捕されたのは、
警視庁公安部の佐島賢太の旧友、稲澤敏生だった。
彼は、佐島になら話をしても良いと言っている
らしい。佐島は上司の命令で拘留中の稲澤の
取り調べに当たることになったが・・・・。
誉田哲也「レイン」

年をとっても、能力に衰えを見せない優秀な
警察犬・レニー。その指導士・野見山も
レニーの能力に絶大な信頼を置いていた。
そんな彼らに、爆破事件の裁判で再検証の
依頼がきた。再検証だと?野見山はレニーの
能力を疑う弁護側をへこまそうとするが、
レニーのある癖に気づく。
レニーをかばう野見山がやったこととは?
大門剛明「手綱を引く」

刑事になりたて27歳の岩倉剛は、強盗殺人の
現場で、強盗のある「手口に」に気づく。
その手口は、最近何かで読んだ記憶があった。
捜査会議で、先輩に発言を促されその旨を報告
すると、独自で捜査しろと言われる。
岩倉の特異な記憶力が功を奏した。
「ラストライン」シリーズの若き岩倉剛の捜査録。
堂場瞬一「手口」

怪盗タイガースアイから、犯行声明が
相次いで届いた。
結婚式で新婦がつけていたダイヤの
ネックレス、銘品の展示会の高級茶碗、
ジュエリー展示会で盗まれたティアラ。
怪盗タイガースアイの鮮やかな手口。
厳重な警備の中、いったいどうやって・・・?
鎌倉署の小笠原亜澄巡査部長の推理が冴える!
鳴神響一「虚飾の代償」

交番勤務の警察官が自殺した。
彼と同じ交番に勤務していた平本は、
彼が、先輩からパワハラを受けていた
ことを知っていた。
その先輩警察官が、交代時間になっても
休憩室から出てこなかった。
様子を見に行った平本は彼が死んでいるのを
発見する。事故か?それとも事件か?
著者らしい謎の仕掛け方に驚愕する。
長岡弘樹「裏庭のある交番」

JAXAで「はやぶさ2」の拡張ミッションを
行っている途中で事件は起こった。
はやぶさプロジェクトナンバー2のサブ
マネージャーがトイレで刺されたのだ。
神奈川県警捜査一課の大地は、早速現場へ
向かった。
殺害現場に残された、奇妙なカプセル、
宇宙開発にはやぶさプロジェクト・・・。
大地にとって未知の世界のことばかり。
そんな中で、事件は解決出来るのか?
沢村鐵「類まれなるランデブー」

公安外事一課の倉島刑事は、上司から
「あるロシア人を洗ってほしい」と命じられる。
同じ部署で事件担当の白崎とともに相手の
行動確認を行うことに。
それには、彼が必要だった。
倉島が指名した彼とは!?
今野敏「ニンジャ」

人気シリーズのスピンオフから書下ろしまで
楽しめる!
とても贅沢な警察小説アンソロジー。

『偽りの捜査線 警察小説アンソロジー』
著者:誉田哲也/大門剛明/堂場瞬一/鳴神響一/長岡弘樹/沢村鐵/今野敏
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥902(¥820+税)

県警のアマゾネス最大のピンチ!「越境刑事」

県警のアマゾネスの異名をとる、高頭冴子警部が
主人公の警察小説。「逃亡刑事」に続く、
「越境刑事」を読了。

今回、高頭警部は命の危機にさらされる。
そんな中でも、彼女の芯である、「正義」
を全うしようと命がけで闘う姿に心を打たれる。

千葉県警捜査一課で検挙率トップの班を
率い、アマゾネスと異名をとる、
強行犯係の係長の高頭冴子警部は、
正義感が強く、信念もって捜査にあたる
絶対的な上位下達で係をまとめる。
捜査能力にも長け、部下からの信頼も厚い。
身長180㎝、柔道・剣道いずれも強い
そんじょそこらの男どもなど朝飯前に片付ける!

そんな、高頭警部は、最近留学生の不審な
失踪が相次いでいるという噂を耳にする。
その真偽を確かめるために動き出した高頭班。

だが、その数日後、中国国籍で新疆ウイグル
自治区出身の留学生カーリの死体が発見された。
本格的に捜査に乗り出した冴子は、事件の裏に
ある国の捜査機関が絡んでいることを掴む。

そんな矢先、カーリの雇い主のカーディルも殺害された!
さらに、自分の身に危険を感じ、冴子に保護を求めていた
カーリの同僚女性・レイハンが何者かに連れ去られてしまう。
その容疑者を特定した高頭だったが、逃亡されてしまった。

レイハンを救い、事件の真相を暴くため、
冴子と部下の郡山は、中国への捜査を強行するが、
そこで合流した新聞記者とともに、襲撃を受け、
冴子は拉致されてしまう。
そこで冴子は、ウイグル民族が置かれた恐るべき
状況を目の当たりにする。

冴子のおかれた状況は想像を絶する!
日々、命の危険にさらされ高頭は死んでしまうので
ないかと、ハラハラさせられる。
こんな残酷なことがあっても良いのかと、
眼をそむけたくなる。

そんな中でも、絶対に「レイハンを救い出す」という
冴子の強い思いと優しさに泣ける。

著者が命の危険を顧みず、真っ向勝負に出た、
傑作、警察小説!

『越境刑事』
著者:中山七里
出版社:PHP研究所
価格:¥1,870(本体¥1,700+税)