大阪府警が挑む!猟奇事件。大阪府警シリーズ「切断」

黒川博行さんの初期の警察小説がとても面白い!
大阪府警シリーズで、「二度のお別れ」「海の稜線」
「雨に殺せば」「絵が殺した」「ドアの向こうに」
などなど、一時はまってしまい夢中で読んでました。

その中の1点「切断」は未読だった。
物語の中に少しだけ「鳥取」のシーンが出てくることも
あり、お~っと地元が・・・と興味を惹かれ手に取った。

病院で猟奇的殺人事件が発生した!
被害者は鋭利な刃物で首を切り裂かれ、
そして耳を切りとられ、さらにその耳穴には
別人の小指が差し込まれていた。
その指は死後切断と断定され、連続殺人の捜査が始まるが、
それをあざ笑うかのように、またもや猟奇的殺人が起きた。
発見された変死体は、舌を切りとられた首絞死体。
異様だったのは、前の被害者の耳が口に突っ込まれて
いたことだ。明らかに異常だ。

大阪府警捜査一課・海部班の久松たちは、捜査の
過程で浮かびあがってきた一人の女性の足取りを追う。

警察の地道な捜査過程と、犯人側の行動、
さらに、過去と現在が複雑に交差しつつ描かれ、捜査側の
視点で描かれる作品よりも、ミステリー性が重視されている
ように感じた。
このストーリー展開に魅了され、結末までいっき読みだった。

ただ、犯人の気持ちを思うと読後はとても切ない。

『切断』
著者:黒川博行
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
価格:¥660(税別)

女性刑事が見た人間の「心の闇」!「貌のない貌 梓凪子の捜査報告書」

「虚の聖域 梓凪子の調査報告書」で
ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞。
著者である松嶋智左さんは、元警察官にして
日本初の女性白バイ隊員という経歴の持ち主。
凄くかっこいいです!

その内容は、
ある事件を起こし、警察を辞めた梓凪子。
犬猿の仲である姉から依頼された、甥の
自殺事件の真相を追うと言う物語だった。
新人さんとは思えないストーリー展開、
人間描写の巧さに唸った。

そして第2弾は、梓凪子が刑事として登場。

刑事課強行・盗犯係所属となった、梓凪子。
先輩刑事にしごかれる日々。

ある日、凪子に人物捜索の案件が回ってきた。
それ私の仕事か?と内心思った。
依頼主は、若い中国人女性の宋鈴玉。
日本へ旅行に出掛けた両親と連絡がとれなくなり
中国領事館を通して、捜索の依頼をしてきたのだ。

凪子は、鈴玉と共に彼女の両親の足取りを追う。
だが、彼女らに同行している、中国領事館の
王天佑の動きが怪しい。
凪子は彼に疑惑の眼を向ける。

同じ頃、謎の連続殺人事件が発生し、凪子も捜査に
駆り出された。行方不明者の捜索と事件の捜査。
さらに、その事件で刑事課と警備課の主導権争い
にも巻き込まれてしまう。

やがて、捜査はある局面を迎える・・・
そこから見えてきたものは、日本社会が抱える暗部、
そして、人間の深い闇だった。

元警察官ということもあり、捜査の過程や
警察内部の軋轢など、非常にリアル。
また、国交問題、民泊、シェアハウスなど
今最も注目されているニュースを事件に
絡めて描いているところが、興味深い。

次の事件も読みたいと思った!

『貌のない貌 梓凪子の捜査報告書』
著者:松嶋智左
出版社:講談社
価格:¥1,800(税別)

元マル暴刑事作家が描く、超リアルな警察小説「ダークリバー」

あまりにも衝撃的な警察小説で、読み終わった後に
ちょっとひいてしまいました。
二上剛さん著「ダーク・リバー暴力犯係長 葛城みずき」。

元マル暴刑事が実体験をベースに描いた問題作です。

大阪市の犯罪多発地域を管轄する警察署。
女性でありながら、暴力犯係の係長を務める、葛城みずき。

独居老人の変死は、表立った外傷がない限り、
事件にはぜず自然死扱いにするらしい。
それを見極めるのは検視官だが、現場から
被害者のカネを盗んでいるとの噂を聞きつける。

さらに、ある警官は、ボディガードと称して
資産家の女性宅に間借りをしていた。
ところが、その女性の遺言状を捏造し
莫大な遺産を奪おうと画策する。

葛城は、そんな彼らの犯行を知りながら、
告発することも出来ずにいた。
組織の中で、それはなかば暗黙の了解の
ようなところがあったからだ。
ヘタに動くと自分の身が危うい。
自分の身を守るために、葛城もやがて警察内部の
暗黒にからめとられ、泥沼に堕ちてゆく・・・。

反社会的勢力と癒着して過程や、警官が罪を
重ねてゆくことになんのためらいも感じない
シーンなど、読んでいるとゾッとする。

著者がその強烈な現場体験をもとに容赦なく、
恐ろしく描く、リアル過ぎる告発的小説。

『ダーク・リバー 暴力犯係長 葛城みずき』
著者:二上剛
出版社:講談社(文庫)
価格:¥760(税別

「機捜235」、渋い!バディもの!

2019年に入っても今野敏先生の新作が続々発売に!
ファンとしては嬉しい!

そして、警察小説最新作「機捜235」を読みました。
とても面白かったです。
(カバー表紙と中の表紙のかっこよさにも感動!)

機捜とは通称で、機動捜査隊のこと。
主に、重要事件の初動捜査を行う部署。
捜査中の不測の事態に備え、所轄の
若い刑事が配属されることが多い。

渋谷署に分駐所をおく警視庁第二機動捜査隊の
高丸は、事故で現場を離れた相棒・梅原の代理が
決まったと上司から言われ、新しい相棒から
報告を受けた。

縞長と自己紹介をした男は、白髪頭で定年間近の
ロートルだった。
なぜこんな年寄りがいまさら機捜に配属になるんだ・・・?

高丸は不安と不満を抱えながら、縞長とともに
「密行」を行うことになる。

高丸は、ベテラン刑事とどうコミュニケーションを
とっていけば良いのか悩む。
刑事としてはベテランでも、機捜では高丸が先輩なのだ。

そんなことを考えながら、渋谷の街を覆面パトで
巡回していたら、コンビニ強盗が発生したと連絡が入った。
高丸たちは現場へ急行。犯人は、店の従業員に
怪我を負わせ逃走していた。
縞長は、目撃者に話を聞いて帰してしまった。
だが、人着は縞長がしっかり聞いていた。

コンビニ強盗事件を所轄に引き継いだあとのことだった。
縞長が突然、歩行中の男に「職質をかける」と言い出した。
高丸は驚きあきれた・・・。
しかし、そのあとさらに驚くべきことが起こった!

縞長は苦労を重ね、思いがけない実力を秘めた刑事だったのだ。

若い刑事と一癖あるベテラン刑事のコンビは、年齢と経験の
壁を越え次第に意気投合してゆく。

二人がコンビとして意気投合してゆく過程が、数々の
事件を短編で紡ぎながら描かれる。
警察捜査の過程や、「密行」と呼ばれる巡回シーンなど
とても興味深い。
そして、二人が時に見せる、警察官としての矜持。
それこそが今野流警察小説の最大の魅力。
この作品でも、その思いがはじけている!

新たな警察‘バディ’小説の誕生だ!
めちゃめちゃかっこ良くて、渋い二人の今後の活躍に期待!

『機捜235』
著者:今野敏
出版社:光文社
価格:¥1,500(税別)

戦慄!殺人鬼との対決!「海底の道化師 新東京水上警察」

吉川英梨さんの「新東京水上警察」シリーズ
第4弾「海底の道化師」を読みました。

殺人鬼との対決!襲いかかる海上での恐怖。
今回も前作以上に凄い展開です。

東京湾海底から、女性の運転免許証が3枚回収された。
その運転免許証は、失踪中の女性のものだった。
良く見ると、出身地や生年月日がバラバラのものだ。
しかし免許証の写真はすべて若い女性だった。
しかもロングストレートの黒髪の持ち主・・・。

五港臨時署刑事防犯課強行犯班係・係長の碇拓真は、
でかいヤマにあたったかも知れないと予感!
早速、本格的に捜査を始めた。

碇拓真の恋人・有馬礼子は碇のような刑事になりたいと
ずっと思っている。五港臨時署刑事防犯課強行犯班係
に配属され、碇と共に捜査が出来ると思っていたのに、
今度は、警視庁第二機動隊第一水難救助隊に異動と
なってしまった。
先輩の女性警察官に毎日しごかれる日々だ。

免許証の捜査から、毎年、若くてロングストレートの
黒髪の女性が拉致されていることにたどり着いた碇たち。
そして、水難救助隊はさらなる捜査をすべく、海に
潜っていった。そして死体を発見する。

同じ頃、救難信号を出していた民間の船の通信が
途絶えた。礼子はその民間の船の乗組員の救助に
向かうというが、碇から厳しい叱責を受ける!
「海を舐めるな」と。
しかし、碇の叱責を無視し、礼子は一人救助に
向かった。

そこで礼子を待ち受けていたものは・・・・!?

シリーズ第4弾は、連続女性殺人事件の正体を暴く捜査と
拉致された礼子救出劇にドキドキの連続だ!

さらに、自然の猛威が海上を包み、脱出不可能に陥る碇たち。
命懸けの脱出を試みるが、次々と襲いかかる海難!
息もつかせぬ脱出シーンにしびれる!

新たに魅力的な人物も登場し、ラブロマンスも繰り広げられる。
そういう複雑な人間関係がどう展開してゆくのか?
楽しみでしょうがない。

舞台は東京湾。派手なアクションはつきもの。
ワクワクが止まらない。

『海底の道化師 新東京水上警察』
著者:吉川英梨
出版社:講談社(文庫)
価格:¥740(税別)

今野敏さんの本格的インテリジェンス小説「キンモクセイ」は緊張感が半端ない!

今野敏さん新刊「キンモクセイ」は本格インテリジェンス
警察小説ということで、ワクワクしながら読みました。

法務官僚の神谷道雄が殺された。

警察庁警備局の隼瀬は、神谷が日米合同委員会に関わって
いたことと“キンモクセイ”という謎の言葉を
残していたことを探り当てる。

そして、神谷殺害事件について専任捜査を命じられる
隼瀬だったが、警視庁は突如捜査本部を縮小、さらに
公安部も手を引くことになった。

やがて、隼瀬の協力者で後輩の岸本行雄の自殺死体が発見される!

コードネーム「キンモクセイ」をめぐる「闇」と
日米合同員会の不可解な動き、そして公安組織「ゼロ」の暗躍・・・。
一体何が起こっているのか?

隼瀬は、同僚の水木とともに事件の真相を探ろうとするが・・・・。
触れてはならない「なにか」に触れたことで追われる隼瀬。

誰を信じていいのかわからない。しかし自らの命を守るため、
何が出来るか?をつきつめ、命をかけて警察官として
正しいことを成そうとする、隼瀬の姿が胸を打つ。

隼瀬逃亡の過程は、ハラハラドキドキもので、
無事に事件が解決することだけを祈ってしまう。
また、警察官僚として隼瀬が成長し覚悟してゆく過程も素晴らしい。

緊張感MAX!手に汗握る
著者初の警察インテリジェンス小説!

『キンモクセイ』
著者:今野敏
出版社:朝日新聞出版
価格:¥1,600(税別)

新シリーズ始動!事件を呼ぶ男、ベテラン刑事・岩倉剛

大好きな「アナザーフェイス」シリーズが完結し、
ちょっとさびしい思いをしていたら、新シリーズ
始動です!
定年まであと10年のベテラン刑事・岩倉剛シリーズ。
渋い警察小説!ワクワクです。

定年まであと10年と迫った、ベテランの刑事、
岩倉剛は、捜査一課から南大田署へ異動になった。

上司は年下で元部下というベテランではありがちな
パターン。挨拶もそこそこに、同じ頃配属された
元交番勤務の女性刑事・伊東彩香を相棒に充てられ、
二人で管内を巡回、そこに独居老人が殺されたと
連絡が入った。

捜査本部のたつ重大な事件が起きないところを望んだ
はずだったのに・・・・。
岩倉が行く先々で事件が起きる!

伊東と二人で捜査に加わったところ、今度は
新聞記者の自殺が発覚する!
二つの事件に関連はあるのか?

プライベートに何かと問題を抱えた岩倉。
定年まであと10年というところで、心機一転、
所轄へと異動した。
そこで彼は後輩刑事に刑事のイロハを教える。
それを実地でこなしながら、事件解決に向けて動く。

暑苦しいイケイケの刑事が多い中、岩倉の
力みのない感じが良い!また後輩に気を遣う
ところなど、人間味あふれた岩倉の魅力に
はまってしまう。

今後、どんな事件を呼び込んでくるのか?
また、彼の突出した記憶力が事件解決にどう繋がるのか?
読むのが楽しみになる!

すでにシリーズ2作目が2019年3月に発売予定!

『ラストライン』
著者:堂場瞬一
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥750(税別)

警視庁犯罪被害者支援課シリーズ最新作「影の守護者」

堂場先生の人気警察小説シリーズ、
「警視庁犯罪被害者支援課」。犯罪被害者に寄り添う
警察官たちの優しさ、温かさが描かれ毎回感動します。

この最新作「影の守護者」は、シリーズの中でも
かなりミステリー色が強く面白い作品。

交番で警察官が射殺された。被害者は益田護。
長年交番勤務を務め、地域住民から信頼が篤かった。
早速、支援課にも出動要請がかかった。
益田には捜査一課に勤務する息子・智樹いた。

父を殺した犯人を自分で挙げると息巻く智樹。
村野はそんな智樹の暴走を何とか止めようとした。

捜査をすすめてゆくと事件に使われた拳銃は、
5年前の交番襲撃事件で奪われた拳銃だと判明する。

捜査一課からもやっかいもの扱いされるように
なった智樹に、村野は二人だけで秘密の捜査を
することを提案する。

5年前の交番襲撃事件と、今回の警察官射殺事件・・・
二つの事件の間には一体何があるのか?
二人の秘密捜査で浮かび上がった疑惑とは?

事件の謎に挑む、二人の刑事。
怒涛の展開と警察官として信じがたい真相、
そしてクライマックスのどんでん返しに言葉もない!

面白さが半端ない警察ミステリーの傑作!

『影の守護者 警視庁犯罪被害者支援課5』
著者:堂場瞬一
出版社:講談社(文庫)
価格:¥840(税別)

警視庁53教場第2弾!「偽弾の墓」

「女性秘匿捜査官・原真希」、
「警視庁女性犯罪捜査班 警部補・原真希」、
「新東京水上警察」など、とても面白い警察小説
シリーズを描いている吉川英梨さん。

新刊は、「警視庁53(ゴーサン)教場」の第2弾
「警視庁53(ゴーサン)偽弾の墓」。
このシリーズも非常に面白いです。

警察学校を舞台に教官たちの奮闘を描く、警察ミステリーです。

元プロ野球選手、ガンマニア、助教官に恋する
女性など、超個性派揃いの学生を受け持つ、
53(ゴーサン)教場の教官・五味。
同期の高杉教官とも切磋琢磨しながら、警察官を
育てるべく日々奮闘している。

そんなある日、多磨霊園で射殺体が発見された。
捜査をしてゆくと、警察学校の生徒に容疑が
かけられてしまう!

五味は教え子を守るべく「53教場40名全員卒業」を
目標に事件解決を目指す。

厳しい授業に耐えられず落ちこぼれる生徒、
厳し過ぎる教官・・・。警察学校の描写がとてもリアル。
(特に模擬捜査の過程は面白かった。)

さらに、ミステリー小説としても読み応え
たっぷりで真相解明のくだりは圧巻!

また登場人物もかっこいい。
特に五味と高杉の仲の良さには思わずほっこりしてしまう。
しかし、五味には高杉に言わなければならないことが・・。

今後の展開がとても気になる作品!

『偽弾の墓 警視庁53(ゴーサン)教場』
著者:吉川英梨
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥720(税別)

面白さが半端ない!「人さらい」

久しぶりに、わくわくする警察小説を読みました。
翔田寛さんの『人さらい』(小学館)です。

乱歩賞受賞作の「誘拐児」や
WOWOWでドラマ化された『真犯人』
など、誘拐をテーマにした作品が目立ちます。

そして、新刊『人さらい』は『真犯人』を
超える傑作!

静岡県浜松中央警察署管内で、小学校4年生の女児が誘拐
された。父親は大手銀行の支店長だ。
身代金は1億円。
少女の命は!?事件は無事に解決するのか!?

冒頭から中盤までは、身代金を持った母親を乗せたタクシーを
必死で追跡する刑事たちの姿が描かれる。
次々と変わる犯人の指示に翻弄される捜査員たち。
綿密に練られた誘拐計画に、捜査員たちはなす術もない。
そして、事件は最悪の結末を迎えた・・・。
犯人によって爆破されたタクシーの中に、少女の遺体が!?

身代金は奪われ、少女を死なせてしまった!
これ以上ない失態に静岡県警はめんつにかけて、犯人逮捕を掲げた。
捜査員たちの地を這うような捜査で明るみになる
被害者の父親の所業。それゆえに深い恨みをかったの
ではないかと推察、次第に犯人像が絞られてゆく。

だが、県警の日下は違和感を抱いていた・・・。

リアル過ぎる警察捜査の描写に鳥肌がたった。
そして、最後の大逆転で真犯人たどり着く過程は、
ミステリーの王道だ!
最初から最後まで読者をあきさせない展開に
この作品の凄さをひしひしと感じた。

『人さらい』
著者:翔田寛
出版社:小学館
価格:¥1,500(税別)