シリーズ第7作「特捜部Q 自撮りする女たち」の展開に唖然!

デンマークの大人気警察小説「特捜部Q」シリーズ。
第7作目「自撮りする女たち」を読んだ。
今までの作品は、未解決事件を中心に物語は
進んでいったが、今作品は現事件と未解決の
事件の捜査が同時に進んでゆく。

コペンハーゲン警察のカール・マーク率いる
「特捜部Q」は、未解決事件を専門に扱う部署。
これまでにかなりの数を解決してきた。

ところが、上層部のミスで特捜部Qの成果報告
が正確に伝わっておらず、部の解体が
ささやかれていた。
さらに頼みのローセの調子が良くなく、
特捜部Qチームの士気はダダ下がり。

そんな時、元殺人課課長から連絡が入った。
最近起きた老女撲殺事件が、未解決の女性教師
殺人事件と酷似しているので、再捜査をして
欲しいとの依頼だった。
カールらは渋々捜査を始める。

一方殺人課では、失業中の若い女性を狙った
連続ひき逃げ事件の捜査で忙殺されていた。

カールたちは、その隙に未解決の女性教師
殺人事件と老女撲殺事件の捜査を始めてしまう。

そんな中、新たな事件が発生する!
クラブに女性2人組の強盗が押し入り、さらに
殺人事件まで起こってしまったのだ。

次々と起こる事件は、カールたちをも巻き込み
かっていない様相を見せ始める!!!

今作品は、デンマークの社会福祉政策に焦点を
充てている。その中でも‘デメリット’の方だ。
デンマークは世界有数の福祉国家だ。
社会福祉政策の充実は大方の国民が満足している。
特に失業対策と生活保護は手厚い。
失業者に対してソーシャルワーカーが熱心に
カウンセリングを行い就労の手助けをする。

しかし、そのあまりの手厚さゆえに、就職
活動を回避し、補助金や生活保護を不正に
受給しようとするものが後を絶たないという現状。

そういう背景で起こった事件がクローズアップされている。
傲慢でわがままで自分のことしか考えない若者たち。
そんな彼らに対して職務を忠実に果たそうとする
ソーシャルワーカーのストレスはどれほどのものだろうか?
作品中に登場するソーシャルワーカーのように
間違った正義へと向かってしまうこともあるかも知れない。

さらに、今作品の注目すべき点は、
カールたちの大切な同僚・ローセの危機だ。
今作品でカールたちはどれほどローセに助けられて
いたのか?どれほど大切な友だったのか?
改めて気づかされる。

様々な事件が交差し、怒涛のような展開に翻弄されながら
カールとアサド、そしてゴードンといった仲間たちの
何気ないやり取りにホッとする。

今までないスリリングな展開にハラハラさせられる。
シリーズ屈指の読みごたえ!

次回作がまたまた楽しみです!

『特捜部Q 自撮りする女たち』
著者:ユッシ・エーズラ・オールスン著/吉田奈保子訳
出版社:早川書房
価格:¥2,100(税別)

CWA賞、ガラスの鍵賞ほか受賞!凄い北欧ミステリ「許されざる者」

先週1週間の空き時間(バスや待ち時間)で
海外ミステリーを1冊読み切りました。
スウェーデン作家、レイフ・GW・ペーション著
『許されざる者』(創元推理文庫)です。

海外ミステリーの主要な賞(CWA賞、ガラスの鍵賞など)
5冠を達成したミステリー小説です。

国家犯罪捜査局の元敏腕捜査官・ヨハンソンは
定年後年金暮らし。
元職場の近くにあるスウェーデン一と評される
ホットドッグの屋台で後輩たちをねぎらう日々を
送っていた。

その日もいつもと変わらず屋台に寄り、
最高級のホットドッグを食べるつもりだったが、
突如脳に異変を感じその場に昏倒した。
脳梗塞だった。

一命はとりとめたが半身麻痺が残った。
そんなヨハンソンは彼の主治医から
ある驚くべき相談を受ける。
牧師だった父が25年前に起きた9歳の
少女が暴行の上殺害された事件の
犯人について懺悔で聞いたというのだ。

だが、事件はすでに時効になっていた。
ヨハンソンは相棒だった元捜査官や介護士を
遣い、事件を調べなおすことに。

当時、事件の初動捜査が遅れ、さらに無能な
担当責任者が災いして、迷宮入りしていた。

どこの国にも無能な警察官はいるが、
そういう警察官が捜査責任者になったりする。
迷宮入り、冤罪が生まれる原因だ。

ヨハンソンはこの事件の当時の責任者の
名前を聞いて無理もないと思った。

しかし、可哀そうな9歳の少女のために
何としても犯人を見つけ出し報いを受けさせる!

ヨハンソンが探偵役となり、集めた報告書や
当時の調書を読み込み、そこから真犯人に迫ってゆく。
病と闘いながら、事件の真相に迫る姿は
鬼気迫るものがある。

しかし、彼を心から気遣い、そして敬愛の念を示す妻や
刺青とピアスだらけだが仕事のできる女性介護士、
そして、ヨハンソンの兄から紹介を受けたロシア人の
助っ人などがヨハンソンの心を癒してゆく。

重いテーマだが、ユーモアあふれる会話と
魅力的なキャラクターが物語を盛り上げている。

この作品がとても面白かったので、次は
「見習い警官殺し上下」に挑戦!

『許されざる者』
著者:レイフ・GW・ペーション
出版社:東京創元社
価格:¥1,300(税別)

北欧ミステリーの極致!エーレンデュルシリーズ第5弾「厳寒の町」

アイスランドのベストセラー、
レイキャヴィク警察が舞台の
犯罪捜査官・エーレンデュルシリーズ第5弾
「厳寒の町」を読みました。

「湿地」「緑衣の女」「声」「湖の男」
既刊の4作品、どの作品も心に残る作品ばかり。

悲惨な犯罪小説でありながら心が震える感覚。
アーナルデュル・インドリダソンの作品は
ただ事件が起きた、捜査した、犯人が判明した、
というシンプルなストーリーだけではない、
物語の底辺にある「テーマ」に心を動かされる。

レイキャヴィクの古い住宅街で少年の
死体が発見された。年齢は十歳前後と
思われる。地面にうつ伏せになり、
体の下の血溜まりは凍り始めていた。

少年はアイスランド人の父とタイ人の
母の間に生まれた。両親は離婚し、
母親と兄と一緒にレイキャヴィクの
住宅街に越してきたのだ。

アイスランドでは移民政策に綻びが出始め
移民に対する差別が生まれていた。
少年はそんな状況の中で殺された。
人種差別的な動機が疑われ、
レイキャヴィク警察のベテラン犯罪捜査官・
エーレンデュルは、同僚のエリンボルクや
シグルデュル=オーリらと共に、少年が
住んでいたアパート周辺、通学していた学校を
中心に捜査を開始する。

少年の死という事で、教師、子どもたちにも
厳しい聴取する刑事たち。

少年はなぜ殺されてしまったのか?

エーレンデュルは、また「女性失踪事件」
という別の捜査も抱えていたが・・・。

少年の事件を捜査する物語と並行して、
今作品は、エーレンデュルの少年時代に
触れる。彼は、子どもの頃弟を喪うという
過去を持っていた。遺体も何も発見されず、
心に深い傷として残っていた。
しかし、彼の二人の子どもたちによって
改めて向き合うのだ。
また、同僚二人の苦悩するプライベート
も丹念に描かれる。

少年殺害事件で慟哭する家族、
こんな悲劇が起こってしまった社会に対する
怒り、そして戸惑い。

哀しみ、むなしさ、やるせなさが
物語を支配している…。
しかし、読まずにはいられない魅力がある。

『厳寒の町』
著者:アーナルデュル・インドリダスン/柳沢由美子訳
出版社:東京創元社
価格:¥2,100(税別)

怒涛の誘拐スリラー小説「ザ・チェーン 連鎖誘拐」

英米で大ヒットを飛ばした、今までにない
「誘拐」をテーマにしたサスペンススリラー
「ザ・チェーン 連鎖誘拐」を読みました。

乳ガン再発を恐れながら、ティーンエイジャーの
一人娘を育てる、シングルマザーのレイチェル。

その日も半年ごとの定期検診だった。

不安を抱えつつ病院へと向かうレイチェルの
もとへ何者かから電話がかかってきた。
娘を誘拐した。返して欲しければ身代金を
ビットコインで送金し、他人のこどもを誘拐
しろと指示された。

いたずらに違いないと思ったが、謎の声はさらに続ける。

レイチェルが誘拐した子供の家族が同じように
身代金を払い、その家族がさらに別の子供を誘拐すれば、
娘は生きて解放される。
失敗すれば殺されてしまうというのだ。
そして、この誘拐の連鎖から決して逃れることはできないと…。

警察へは絶対に連絡できない、したら娘の命はない。
恐ろしいほどに頭の切れる犯人が仕組んだ、
誘拐システム。この連鎖誘拐のシステムに組み込まれて
しまったレイチェルは、まったく無関係の子ども
の誘拐計画を練ることに….。

被害者の悲劇と加害者の苦悩、それでも娘の命には
変えられない。
加害者にならざるを得ない、レイチェルの苦渋の決断!
その緊迫感はいやがおうにも増してゆく!

著者は、「刑事ジョン・ダフィ」シリーズの
エイドリアン・マッキンティ。エドガー賞など
ミステリー界では権威ある賞を受賞した実力派。
ドン・ウインズロウも絶賛の傑作。

連鎖誘拐という過去に前例を見ない恐ろしい
けれど斬新な設定にまず驚愕。
いったいどんなことになるのか?レイチェルは
加害者になってしまうのか?その怒涛の展開に
魅了され、先へ先へと促されるように読み進めた。

翻訳もの、さらに上下巻という長さ。
しかし、それを感じさせないストーリー展開の
面白さに絶句する!

前代未聞のサスペンススリラー!!!

『ザ・チェーン 連鎖誘拐 上下』
著者:エイドリアン・マッキンティ著/鈴木恵 訳
出版社:早川書房(文庫)
価格:上下各¥780(税別)

仰天展開!仏ミステリーの傑作!「ブルックリンの少女」

海外ミステリコーナーを物色中に妙に気なる
作品がこの「ブルックリンの少女」だった。
棚の前を通るたびに目に入るので購入。

しばらく積読していましたが、先日読了。
いやいや、どうしてもっと早く読まなかったのか
と後悔したくらいに面白かった~。

運命的な出逢いをした、人気小説家のラファエルと
医師のアンナ。結婚を間近に控え、二人は
南フランスで休暇を楽しんでいた。
幸せな中でもラファエルは気になることがあった。
なぜかアンナは過去をひた隠しにしていた。

結婚するならば、パートナーの過去を知りたいと
強く願うラファエルは、アンナに詰め寄る。
アンナは抵抗したが、ラファエルの強硬な
態度に観念し、一枚の写真を差し出す。
そこには、目をそむけたくなるほど衝撃的な
光景が写されていた。

その写真を見てショックを受けた
ラファエルは、アンナの元から去ってしまう。

しかし、激情にかられアンナを突き放したことを
後悔したラファエルは、アンナに謝ろうと戻るが、
アンナは出て行った後だった。
そして、アンナはそのまま失踪してしまう。

アンナにもう一度会って話をしなければ!
失ってはならない大切な人だということを
改めて思い知らされたラファエル。
友人の元警部・マルクとともにアンナの行方を
調査すると、不審な事件や事故が浮かび上がってきた。

アンナが隠し続けた過去、その過去を
調査してゆく過程で、アンナの正体
は明らかになってゆく。しかし
明らかになったことで、さらに新たな謎が生まれる。

アンナの正体は?
事件や事故の裏にあるカラクリとは一体?

ミステリーの王道をである謎が謎を呼ぶ展開。
最後の最後まで気を抜けない!
そして、超!どんでん返しに言葉もない。

海外ミステリーの醍醐味をたっぷり
味わえる傑作中の傑作!

『ブルックリンの少女』
著者:ギョーム・ミュッソ著/吉田恒雄訳
出版社:集英社(文庫)
価格:¥1,000(税別)

仰天展開!「メインテーマは殺人」A・ホロヴィッツ

昨年の様々な海外ミステリーランキングで
7冠を達成した、アンソニー・ホロヴィッツ
「カササギ殺人事件」!
ほんとに鳥肌物の面白さだった!

ところが今年!またまた鳥肌物の新作が出た!
「メインテーマは殺人」だ。
もう、凄すぎる。面白すぎる!

老婦人が自分の葬儀の手配をした日に殺害される
という劇的な事件の始まり!

彼女は、自分が殺されると知っていたのか? 

作家のホロヴィッツは、刑事ドラマの
脚本執筆で知り合った、元刑事ホーソーン
からこの奇妙な事件を捜査する自分を
本にしないかと誘われた。

困惑するホロヴィッツ。断るつもりだったが
すでに事態は動きはじめていた。

元刑事ホーソーンは、空気は読めないが
怜悧な推理力を持つ元刑事だ。
ホロヴィッツから見たら、彼の勝手気ままな
捜査に駆り出される・・・。という思いが強い。

ホロヴィッツが元刑事ホーソーンに
翻弄される姿は、まるでホームズとワトソンだ。

そして、時に挿入されるホロヴィッツ
自虐ネタとも言えるエピソードがちょっと笑える。

しかし、謎解きと犯人当ての醍醐味は
「カササギ殺人事件」に勝るとも劣らない!
シャーロキアンをも唸らす大胆不敵な展開に圧倒される!

仰天展開の「メインテーマは殺人」を堪能してほしい。

『メインテーマは殺人』
著者:アンソニー・ホロヴィッツ
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,100(税別)

またしてもやられた!「ケイトが恐れるすべて」P・スワンソン

昨年の海外ミステリーランキングで
「カササギ殺人事件」と同じように話題を
さらった、ピーター・スワンソンの
「そしてミランダを殺す」。
予測不能で読者はいったいどこへ連れて
いかれるやら…。とドキドキしながら読み、
驚愕のラストでがつん!とやられてしまったのです。

そして、第2弾「ケイトが恐れるすべて」を読みました。

ロンドンに住むケイトは、又従兄のコービンと
住居を交換することにした。
過去の忌まわしい記憶からなかなか脱却できずに
悩むケイトだったが、ボストンで新しい
生活を送れば少しは前向きになれると思ったからだ。

コービンとは半年の約束で、ボストンの
豪奢なアパートメントで新生活を
始めようと引っ越した翌日、隣室の女性の
死体が発見された。

殺害された女性の友人と名乗る男、さらに
向かいの棟の住人から、コービンがその女性
と恋人同士であること、そしてその事実を
周囲に秘密にしていたことを明かされた。

不安になったケイトはコービンに真相を
問いただすが、コービンは彼女との関係を否定する。

では、一体誰が嘘を言っているのか?

見知らぬ他人に囲まれたケイト。
隣人は誰に殺されたのか?
ケイトに迫る危険と恐怖!

ストーリー展開と構想の巧さに圧倒され、
それぞれのキャラクターの心理描写に
背筋が凍る!

狂気を孕んだ、圧巻のクライマックスに
またしてもやられた!

凄いとしか言いようがない傑作ミステリー!

『ケイトが恐れるすべて』
著者:ピーター・スワンソン
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,100(税別)

この女、淑女か?悪女か?「レイチェル」

高校の時にダフネ・デュ・モーリアの
「レベッカ」を読んだ。
その時の衝撃は今でも忘れられない。

ダフネ・デュ・モーリアの作品はレベッカ」
しか読んでいなかったので、たまたま平積
してあったこの「レイチェル」を衝動買いして
しまった。表紙のイラストにも惹かれた。
高校の時に受けた衝撃をまた感じたい!
そして読み始めた・・・。

「レイチェル」をひと言でいえば、一人の
女性「レイチェル」に恋をした二人の男が
破滅へと導かれるサスペンスストーリーだ。

イングランドの貴族の青年・フィリップが主人公。
父親代わりに育ててもらった従兄がイタリアで
「レイチェル」と言う女性に出会う。
従兄はレイチェルと恋に落ち結婚するが、
病に倒れ、その地で亡くなってしまう。

従兄を死に追いやったと思い込み、
レイチェル憎むフィリップ。

しかし、従兄の形見を持参したレイチェルは
とても穏やかで、従兄を亡くした悲しみを
包み込んでくれた。そんなレイチェルに
フィリップは次第に心を開いてゆく・・。

憎しみで凝り固まっていたフィリップ。
レイチェルの美しさと優しさと聡明さに
いつしか恋心を抱くようになる。

しかし、従兄が死の直前に書いた手紙には
レイチェルを「悪女」と評していた。

従兄はレイチェルに遺産を残す遺言を書いていなかった。
そのため、フィリップが遺産を相続することになる。
25歳の誕生日が近づいた頃、フィリップはある計画を立てる。
遺産を相続したら、レイチェルを妻に迎えようと・・・。

従兄に育てられたフィリップは、純粋培養された
素直な青年だ。そんな青年をを見事に手玉に取り、
財産をかすめ取る。
冷酷な女性のように思えるが、読んでいると
思いやりに満ちた女性に感じる・・・。
女性でも共感するのだ。
ここで女性読者も完全にレイチェルの虜に
なっていると思う。

この作品の素晴らしさは、心が純粋で、
疑うことを知らない青年が、一人の女性に
激しい恋心を抱いてゆく過程の心理描写が
実に見事なことだ。
さらにレイチェルというキャラクターの
描き方も素晴らしい。
彼女の言葉、たたずまいなど、人間を虜にする
すべての要素を満たしている。

フィリップはレイチェルについて様々な雑音を
入れられるが、レイチェルを正当化するため
そのすべてを否定してしまう。
それほどまでに心を奪われてしまっているのだ。

いったい、レイチェルは淑女なのか?悪女なのか?

男女の恋の駆け引きと危険な疑惑が交差する、
サスペンスタッチの純愛物語。

名著「レベッカ」と双璧をなす衝撃そして傑作!

『レイチェル』
著者:ダフネ・デュ・モーリア著/務台夏子訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,200(税別)

誰にも予想出来ない!驚愕と戦慄!「そしてミランダを殺す」

昨年の各社の年末ミステリランキングで第2位
にランクインした、ピーター・スワンソン
「そしてミランダを殺す」(創元推理文庫)
を読みました。

1位の「カササギ殺人事件」も想像を絶する
展開で、泣けるくらい面白かったですが、
こちらの作品も2位になったのは惜しいくらい、
面白く衝撃的ミステリ作品でした!

IT関連起業の若き社長、テッドは、
ヒースロー空港のバーで、一人時間を
つぶしていた。
その時、一人の美しい女性に声をかけられる。
彼女の名前はリリーと言った。

テッドはリリーに全く記憶がない。
しかし、リリーは気安くテッドに話しかけてきた。
テッドは酔った勢いで、1週間前に妻のミランダの
浮気を知ったことを話し、冗談半分で「妻を殺したい」
と言ってしまう。
しまったと思ったが、リリーは「ミランダは
殺されて当然だ」と断言し、妻を殺害することの
正統性を力説。そして妻殺害の協力を申し出る。

リリーの話を聞いたテッドは、妻ミランダに対し
殺意を抱くようになり、二人は殺人計画を練った。

そして、決行の日が近づいた時、想像を絶する事件が起こる。

男女4人の語りで進行する殺人計画。
追うものと追われるものが、激しく入れ替わる展開。
そこにはサイコパスの影もちらつく!
驚愕と戦慄が交互に襲う!

超絶技巧で仕組まれた著者の罠に完全にはまる。
最後の最後まで気を抜けない、完全無欠のミステリー。

『そしてミランダを殺す』
著者:ピーター・スワンソン/務台夏子(訳)
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,100(税抜き)

霊視か?幻影か?異色の海外サスペンス「視える女」

ずいぶん前に買って積読になっていたけれど、
急に海外ミステリーが読みたくなって手に取った作品。

べリンダ・バウアー『視える女』小学館。

4歳の息子ダニエルが行方不明になり、
心が病んでしまったアナは、奇妙な行動を
繰り返す日々を送っていた。
そんな妻の行動をなす術もなく見つめる夫。
目撃者も身代金要求もなく4か月が過ぎた。

その町の警察署に勤めるマーヴェル刑事は、
行方不明になった少女をずっと探し続けていた。
一時は、霊能者を頼ったこともある。
しかし、結局見つけだすことは出来なかった。
そんな時、上司の警視から妻が飼っている
行方不明の犬の捜索を命じられる。

ある日、アナは教会で交霊会があることを
知る。そこで出会った霊能者にダニエルの
事を相談しようと考える
そして、アナは交霊会に参加した夜を境に
不思議な声や光景を視るようになる。

アナに起きた不思議な兆候は、異常なこと
なのか、それとも何らかのメッセージなのか?

3件の行方不明の事件が、奇妙な接点で結ばれてゆく。

行方不明事件を捜査する警察小説、
事件の謎が深まってゆくミステリー、
この二つの要素だけでも十分に面白いが
さらに「霊視」という神秘的で
超自然的な要素がからんで独特の世界観を
創りあげている。

非常に面白かった。
マーヴェル刑事はシリーズになっている
ようなので、他の作品も読んでみたい。

『視える女』
著者:べリンダ・バウアー/満園真木訳
出版社:小学館(文庫)
価格:¥830(税別)