DNA鑑定よりさらに進化?!東野圭吾氏『プラチナデータ』は凄い!

東野圭吾氏の文庫最新刊、『プラチナデータ』(幻冬舎)は、東野先生の経歴が活かされ、ちょっとSFタッチで描かれた、近未来的な警察ミステリー小説。

この作品、二宮和也さん&豊川悦司さんが主演で映画化されます。(公開予定は2013年春頃)

国民の遺伝子情報から犯人を特定するDNA捜査システム・・・。その開発者が殺害された。
この捜査システムを知りつくした有能な科学者・神楽龍平は、システムを使って犯人を突き止めようとする。しかしコンピュータが示したのは、「神楽龍平」彼の名前だった。
この革命的なシステム・・・。しかしその裏には何らかの陰謀が渦巻いている!?
そのカギを握るのは、謎のプログラムともう一人の‘彼’。
果たして神楽は、警察の包囲網をかわし真相にたどりつくことが出来るのか!?
DNA捜査システム・・・。読んでいるとほんとにこんなシステムで捜査が可能になるかも・・。と思えるくらいリアリティがあります。ドキドキしながら読みました!面白いです。映画化にも期待大です。
『プラチナデータ』
著者: 東野圭吾
出版社:幻冬舎
価格:¥724(税別)

心霊探偵八雲の次にこれがおススメ!Ⅱ「バチカン奇跡調査官」

「心霊探偵八雲」シリーズが大好きだという人に次のおススメはこれ!で「考古学探偵一法師全」シリーズを紹介しましたが、さらに面白いシリーズを紹介します。
藤木稟著「バチカン奇跡調査官」シリーズです。現在角川文庫で全5巻が発売中。ちょっと書き込まれた厚めの作品が多いですが、とても面白いです。
バチカン所属の奇跡調査を担当する二人の神父。一人は日本人で平賀・ヨゼフ・庚。美貌の天才科学者。
もう一人はロベルト・ニコラス。古文書・暗号解読のエキスパート。
平賀とロベルトはコンビを組んで、世界中から申告される奇跡の真偽を調査する秘密調査官。
第1巻目の『バチカン奇跡調査官 黒の学院』は、隔絶されたアメリカ田舎町の修道院で起きた‘処女受胎’の真偽を確かめるべく二人は現地へ赴くが、そこには大きな陰謀が隠されていた。
第2巻目の『バチカン奇跡調査官 サタンの裁き』は、死してなお腐敗しない、預言者だった神父の遺体。二人は奇跡調査をするうちに、ロベルトの出生に関わる驚愕の真実に辿り着く。
第3巻目の『バチカン奇跡調査官 闇の黄金』は、バチカン近くの教会で、謎の光とキリストが動きだす。二人は謎を解き明かすうちに800年もの間隠されてきた闇の錬金術を知ることになる。
「バチカン奇跡調査官」シリーズ1~3巻
第4巻目の『バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ』は、聖人の生まれ変わりがルノア共和国に現れた!ロベルトと平賀の目の前で次々と起こる奇跡現象。今回の奇跡は本物なのか!?
第5巻目の『バチカン奇跡調査官 血と薔薇と十字架』は、英国で奇跡調査の帰り、ある町に滞在することになる。その町では、黒髪に赤い瞳の美貌の吸血鬼の噂が流れていた・・・。
「バチカン奇跡調査官」シリーズ4~5巻
世界各地で起こる奇跡現象や怪事件を科学捜査と、古文書・暗号解読を駆使し解明、解決する。オカルト的なシーンがふんだんに盛り込まれ恐い。
しかしミステリー小説としての謎解きは練りに練られ、ミステリー好きな読者を楽しませてくれる。そして、旧いが荘厳な教会、また宗教の薀蓄がロベルトの口からわかりやすく語られる。ミステリー好き、ホラー好き、ヨーロッパの歴史、宗教に興味がある人まで楽しめる、さらに主人公二人はとても美しい男性という設定。文句なく本当に面白いシリーズです。
『バチカン奇跡調査官 黒の学院』
著者: 藤木稟
出版社:角川書店
価格:¥819(税別)

労働基準監督署を舞台に描く!異色のお仕事エンターティメント

‘働く人を守るために必死で働く人間がいる’帯にあるこの謳い文句に惚れて読み出しました。
沢村凛氏著『ディーセント・ワーク・ガーディアン』(双葉社)
舞台はなんと!‘労働基準監督署’。あまり表に出たことのないお役所なので、興味津々で読みました。
働く現場で日々起こる大小の様々な事件を、時には感動的に、時にはミステリータッチで描いていてとても面白い短編集です。労働基準監督官という仕事についても詳しく、わかりやすく描かれています。(社会勉強にもなる!)
主人公の労働基準監督官・三村は「人は生きるために働いている。だから、仕事で死んではいけないんだ」と友人である刑事や部下に言い続けている。(熱血!!)
〈普通に働いて、普通に暮らせる〉社会をめざして日々奮闘中。行政官としてだけでなく、時には特別司法警察員として、友人の刑事とともに《謎解き》にも挑む。

特にミステリー色が強い作品は、第5話の『フェールセーフの穴』。
無人化工場内で起こった殺人事件。現場に調査に向かった三村と友人刑事は、そこが完全なる密室であることに気がつく。
刑事には犯人のめぼしはついていたが、密室の謎を解かないと犯人逮捕に繋がらない。そこで労働基準監督官である三村は、工場内で導入されているロボットの操作に目をつける・・・。

地味なお仕事小説だと思って読むととんでもない!新鮮な驚きに満ちている、異色のお仕事エンターティメント作品です。

『ディーセント・ワーク・ガーディアン』
著者: 沢村凛
出版社:双葉社
価格:¥1,700(税別)

直木賞作家・小池真理子氏が描くサイコサスペンスの世界

直木賞作家・小池真理子さんの傑作ばかりを集めた、サイコサスペンス短編集。
1990年代に発表された作品ですが、今読んでも面白い。
近年人気を集めている恐い女性、女性のサイコサスペンス系の原点のようなものが詰まっている感じです。

表題作の『会いたかった人』は、花形心理学者でテレビにも出演する諸井小夜子が、中学時代無二の親友だった結城良美と25年ぶりに再会したことから始まる。
あまりにも変わりすぎた親友の登場に異常な違和感を覚える小夜子。良美の行動は次第にエスカレートしてくる。親友の不気味さがじわじわと迫ってきます・・・。

そのほか、『結婚式の客』は、プレイボーイでさんざん女性と遊びつくした男が、やっと理想の女性と巡りあい結婚することに。しかしその結婚式で男は前につきあっていて自殺した女性の母親らしき女がいることに恐怖を覚える・・・・。

などなど、読んでいてじわりじわりと恐さが増していくような作品ばかり。とても面白い。さらに人間って恐い~と思ってしまう。

明野照葉、今邑彩、沼田まほかる、真梨幸子系が好きな読者にはおススメの1点です。

『会いたかった人』
著者: 小池真理子
出版社:祥伝社
価格:¥514(税別)

デイリーサスペンスの女王が描く、傑作短編集『巻きぞえ』

新津きよみさんの著書は、日常の中で起こりうる小さな出来事をサスペンスタッチで描いた作品が多いです。
この『巻きぞえ』(光文社文庫)もそんな中の1点。‘死体’をテーマに取り上げた7編の短編集です。
『第一発見者』、『巻きぞえ』、『反対運動』、『行旅死亡人』、『二番目の妻』、『ひき逃げ』、『解剖実習』どれも傑作ぞろいですが、特にはまさきが面白いと思ったのは、表題作の『巻きぞえ』です。
夫と息子と幸せに暮らす‘わたし’は、ある日夫の部屋で9年前に起きた自殺事件の記事を発見した。その記事とは、9年前に飛び降り自殺の巻きぞえになって亡くなった、‘わたし’の恋人についての記事だった。なぜこんな記事を夫が持っているのか?不信感とともに9年前の哀しい記憶が甦ってきた。さらに、その事件の真実をも知ることになる・・・・。これは、飛び降り事件の裏に隠された真実が明らかになる、謎解き仕立てになっていてその真相解明の過程がとても面白かった。
『第一発見者』『二番目の妻』は、サイコチックなサスペンス。どちらも何かに憑りつかれた女性が起こす哀しい事件。
『反対運動』は、執拗に署名を迫る隣人との不気味なトラブルを描いた作品。
『行旅死亡人』は、隣人の若い女性が突然亡くなったことで、行方不明になった父親を探す決心をする女性の心の動きをミステリータッチで描いている。
『ひき逃げ』は、不倫中の女性教師がある日犬を轢いてしまう。犬だからとそのまま逃げ去ったが、やがてそのことが女性教師をとことん苦しめることになる。愛するものを奪われた人の苦しさと、無神経な女性に訪れる不幸を描く。『解剖実習』は、解剖献体のつぶやきに驚く!?
どの作品も練りに練られた作品ばかり!!新津さんの他の作品も読みたくなりました。

『巻きぞえ』
著者: 新津きよみ
出版社:光文社
価格:¥590(税別)