幻の名著!地域限定復刊!『ディプロトドンティア・マクロプス』

「殺戮にいたる病」「弥勒の掌」など読者の
度肝を抜くミステリーを描かれる、我孫子
さんの原点!幻の名著と言われる
「ディプロトドンティア・マクロプス」
を読みました。

いやはや、とんでもなくぶっとんだ展開に頭が
ついてゆかず・・・。

京都に小さな探偵事務所を開いた私。
そこへ「失踪した父親を探してほしい」
という大学教授の娘と、動物園からいなくなった
カンガルーのマチルダさんを見つけて!
とわけのわからない事を叫ぶ少女の依頼が2つ。
少女が言っていたカンガルーの件が気になり、
動物園に向かった私は、そこで妙な違和感を
感じた・・・。
その後大学教授の行方を探すため、
動き始めたとたん、暴漢に襲われた!。
どうも危険な陰謀に巻き込まれたらしい・・・。

と・・。こんなハードボイルド調のスタートだが、
このあと信じられない展開が待っている!

「怪獣ハードボイルド」とはどういう意味なのか?

驚愕!唖然・・・!絶句・・・・!!!

笑っていいのか?泣いていいのか・・・・。
想像を絶する、とんでもない展開にしびれます!

『ディプロトドンティア・マクロプス』
著者:我孫子武丸
出版社:講談社(文庫)
価格:¥660(税別)

仰天展開のホラーミステリー「祟り火の一族」

今年の夏の異常な暑さ!
こんなときはホラーだ!ということで、
おどろおどろしい装丁に惹かれ、
小島正樹さんの「祟り火の一族」(双葉社)
を読んでみました。初読みの作家さんです。

劇団員の明爽子は、身体中に包帯を巻かれた男に、
怪談を語り聞かせるというアルバイトをやっていた。

「殺したはずの女が甦り、のっぺらぼうが林に立つ。」
「河童、魚人、まだらの妖怪!?」・・・
不気味な怪談を聞き苦しげに唸る男。
彼にとってこの怪談には何の意味があるのか?

男とその怪談事態に興味を持った明爽子は、学生時代の
後輩・浜中刑事と名探偵・海老原とともに捜査に乗り出す。

アルバイト先から出てきた若い男性を尾行してゆくと、
ある廃鉱山に辿りつく。そこでは、連続殺人事件が起きて
いたことが判明する・・・。

海老原の推理により、解き明かされる真実。
そこから浮かび上がる「火に祟られた一族」の宿命。
複雑に絡み合った人間関係と、その一族の愛憎劇に
深い因縁を感じる。

横溝正史に似た世界観と、奇想天外なトリックが
読者を翻弄!
真相解明に至るプロセスは、面白すぎて
止まらない。

また、駐在の巡査になりたくて警察官になったのに
運がいいのか悪いのか?なぜか凶悪事件を解決に
導いてしまう心優しき浜中刑事。そして、
頭脳明晰な名探偵・海老原の魅力が光ります!
彼らの語り口が、暗く哀しい物語を柔らかくしている。

シリーズになっているようなので、続けて読んでいきたい!

『祟り火の一族』
著者:小島正樹
出版社:双葉社
価格:単行本¥1,700(税別)
文庫¥722(税別)

ドラマ‘ハンチョウ5’の原作!警察小説の金字塔「安積班」シリーズ

<テレビドラマ「ハンチョウ5 警視庁安積班」が昨日から始まりました。 シリーズ4までのキャストを一新し、新たにスタートしました。原作は今野敏先生の「安積班」シリーズです。(主に角川春樹事務所刊)。 今野先生の作品の中で、はまさきが一番好きなシリーズです。 1988年に文庫「二重標的 東京ベイエリア分署」で安積班が初登場。 安積剛志警部補を班長として、村雨刑事、須田刑事、黒木刑事、桜井刑事の5名で事件解決にあたる。 安積警部補は常に部下を思い、的確な指示で捜査を行う。時にはこれでいのだろうかと自問自答しながら部下との信頼を深めていく。 スムースな事件捜査のためには、上司にも言うべきことは言う。部下からは慕われるが、強固な縦社会である、警察内部では厳しい眼で見られることも・・・しかし安積のスタンスは変わらない。 読めば読むほど面白く、魅力的な登場人物に惹かれます。大人向けの渋くて味わい深い警察小説シリーズ。なんと24年もの長きにわたり描き続けられています。 作品は長編も短編集もあり多彩。安積班のエピソードをたくさん楽しむならば、やはり短編集がおススメ。シリーズはこのほかに、近日発売予定の文庫『夕爆雨』、そして単行本の『烈日』があります。『烈日』は、ドラマで誕生した女性刑事・水野がついに登場します。

最初は「東京ベイエリア分署」。湾岸界隈を舞台に描かれています。
シリーズ4までのドラマはこの神南署が原作。『神南署安積班』は短編集。『残照』は臨海署に戻ったところから。
ベイエリア分署に戻ってきた安積班の活躍を描く「東京湾臨海署安積班」シリーズ。

『蓬莱』『イコン』は講談社文庫。安積班の面々が主人公を助けるという設定で描かれています。特に『蓬莱』はミステリー小説としても楽しめる作品。面白さが際立っています。

心霊探偵八雲の次にこれがおススメ!Ⅱ「バチカン奇跡調査官」

「心霊探偵八雲」シリーズが大好きだという人に次のおススメはこれ!で「考古学探偵一法師全」シリーズを紹介しましたが、さらに面白いシリーズを紹介します。
藤木稟著「バチカン奇跡調査官」シリーズです。現在角川文庫で全5巻が発売中。ちょっと書き込まれた厚めの作品が多いですが、とても面白いです。
バチカン所属の奇跡調査を担当する二人の神父。一人は日本人で平賀・ヨゼフ・庚。美貌の天才科学者。
もう一人はロベルト・ニコラス。古文書・暗号解読のエキスパート。
平賀とロベルトはコンビを組んで、世界中から申告される奇跡の真偽を調査する秘密調査官。
第1巻目の『バチカン奇跡調査官 黒の学院』は、隔絶されたアメリカ田舎町の修道院で起きた‘処女受胎’の真偽を確かめるべく二人は現地へ赴くが、そこには大きな陰謀が隠されていた。
第2巻目の『バチカン奇跡調査官 サタンの裁き』は、死してなお腐敗しない、預言者だった神父の遺体。二人は奇跡調査をするうちに、ロベルトの出生に関わる驚愕の真実に辿り着く。
第3巻目の『バチカン奇跡調査官 闇の黄金』は、バチカン近くの教会で、謎の光とキリストが動きだす。二人は謎を解き明かすうちに800年もの間隠されてきた闇の錬金術を知ることになる。
「バチカン奇跡調査官」シリーズ1~3巻
第4巻目の『バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ』は、聖人の生まれ変わりがルノア共和国に現れた!ロベルトと平賀の目の前で次々と起こる奇跡現象。今回の奇跡は本物なのか!?
第5巻目の『バチカン奇跡調査官 血と薔薇と十字架』は、英国で奇跡調査の帰り、ある町に滞在することになる。その町では、黒髪に赤い瞳の美貌の吸血鬼の噂が流れていた・・・。
「バチカン奇跡調査官」シリーズ4~5巻
世界各地で起こる奇跡現象や怪事件を科学捜査と、古文書・暗号解読を駆使し解明、解決する。オカルト的なシーンがふんだんに盛り込まれ恐い。
しかしミステリー小説としての謎解きは練りに練られ、ミステリー好きな読者を楽しませてくれる。そして、旧いが荘厳な教会、また宗教の薀蓄がロベルトの口からわかりやすく語られる。ミステリー好き、ホラー好き、ヨーロッパの歴史、宗教に興味がある人まで楽しめる、さらに主人公二人はとても美しい男性という設定。文句なく本当に面白いシリーズです。
『バチカン奇跡調査官 黒の学院』
著者: 藤木稟
出版社:角川書店
価格:¥819(税別)

労働基準監督署を舞台に描く!異色のお仕事エンターティメント

‘働く人を守るために必死で働く人間がいる’帯にあるこの謳い文句に惚れて読み出しました。
沢村凛氏著『ディーセント・ワーク・ガーディアン』(双葉社)
舞台はなんと!‘労働基準監督署’。あまり表に出たことのないお役所なので、興味津々で読みました。
働く現場で日々起こる大小の様々な事件を、時には感動的に、時にはミステリータッチで描いていてとても面白い短編集です。労働基準監督官という仕事についても詳しく、わかりやすく描かれています。(社会勉強にもなる!)
主人公の労働基準監督官・三村は「人は生きるために働いている。だから、仕事で死んではいけないんだ」と友人である刑事や部下に言い続けている。(熱血!!)
〈普通に働いて、普通に暮らせる〉社会をめざして日々奮闘中。行政官としてだけでなく、時には特別司法警察員として、友人の刑事とともに《謎解き》にも挑む。

特にミステリー色が強い作品は、第5話の『フェールセーフの穴』。
無人化工場内で起こった殺人事件。現場に調査に向かった三村と友人刑事は、そこが完全なる密室であることに気がつく。
刑事には犯人のめぼしはついていたが、密室の謎を解かないと犯人逮捕に繋がらない。そこで労働基準監督官である三村は、工場内で導入されているロボットの操作に目をつける・・・。

地味なお仕事小説だと思って読むととんでもない!新鮮な驚きに満ちている、異色のお仕事エンターティメント作品です。

『ディーセント・ワーク・ガーディアン』
著者: 沢村凛
出版社:双葉社
価格:¥1,700(税別)

直木賞作家・小池真理子氏が描くサイコサスペンスの世界

直木賞作家・小池真理子さんの傑作ばかりを集めた、サイコサスペンス短編集。
1990年代に発表された作品ですが、今読んでも面白い。
近年人気を集めている恐い女性、女性のサイコサスペンス系の原点のようなものが詰まっている感じです。

表題作の『会いたかった人』は、花形心理学者でテレビにも出演する諸井小夜子が、中学時代無二の親友だった結城良美と25年ぶりに再会したことから始まる。
あまりにも変わりすぎた親友の登場に異常な違和感を覚える小夜子。良美の行動は次第にエスカレートしてくる。親友の不気味さがじわじわと迫ってきます・・・。

そのほか、『結婚式の客』は、プレイボーイでさんざん女性と遊びつくした男が、やっと理想の女性と巡りあい結婚することに。しかしその結婚式で男は前につきあっていて自殺した女性の母親らしき女がいることに恐怖を覚える・・・・。

などなど、読んでいてじわりじわりと恐さが増していくような作品ばかり。とても面白い。さらに人間って恐い~と思ってしまう。

明野照葉、今邑彩、沼田まほかる、真梨幸子系が好きな読者にはおススメの1点です。

『会いたかった人』
著者: 小池真理子
出版社:祥伝社
価格:¥514(税別)

デイリーサスペンスの女王が描く、傑作短編集『巻きぞえ』

新津きよみさんの著書は、日常の中で起こりうる小さな出来事をサスペンスタッチで描いた作品が多いです。
この『巻きぞえ』(光文社文庫)もそんな中の1点。‘死体’をテーマに取り上げた7編の短編集です。
『第一発見者』、『巻きぞえ』、『反対運動』、『行旅死亡人』、『二番目の妻』、『ひき逃げ』、『解剖実習』どれも傑作ぞろいですが、特にはまさきが面白いと思ったのは、表題作の『巻きぞえ』です。
夫と息子と幸せに暮らす‘わたし’は、ある日夫の部屋で9年前に起きた自殺事件の記事を発見した。その記事とは、9年前に飛び降り自殺の巻きぞえになって亡くなった、‘わたし’の恋人についての記事だった。なぜこんな記事を夫が持っているのか?不信感とともに9年前の哀しい記憶が甦ってきた。さらに、その事件の真実をも知ることになる・・・・。これは、飛び降り事件の裏に隠された真実が明らかになる、謎解き仕立てになっていてその真相解明の過程がとても面白かった。
『第一発見者』『二番目の妻』は、サイコチックなサスペンス。どちらも何かに憑りつかれた女性が起こす哀しい事件。
『反対運動』は、執拗に署名を迫る隣人との不気味なトラブルを描いた作品。
『行旅死亡人』は、隣人の若い女性が突然亡くなったことで、行方不明になった父親を探す決心をする女性の心の動きをミステリータッチで描いている。
『ひき逃げ』は、不倫中の女性教師がある日犬を轢いてしまう。犬だからとそのまま逃げ去ったが、やがてそのことが女性教師をとことん苦しめることになる。愛するものを奪われた人の苦しさと、無神経な女性に訪れる不幸を描く。『解剖実習』は、解剖献体のつぶやきに驚く!?
どの作品も練りに練られた作品ばかり!!新津さんの他の作品も読みたくなりました。

『巻きぞえ』
著者: 新津きよみ
出版社:光文社
価格:¥590(税別)

ユーモアミステリー、こちらの作品もおススメ!『被害者は誰?』

東川篤哉先生の作品全部読みつくしちゃって、次のユーモアミステリーを探している、読者の方々におススメの作品があります。貫井徳郎『被害者は誰?』(講談社文庫)です。

貫井徳郎さんと言えば、朝日新聞社『乱反射』(日本推理作家協会賞受賞作)、幻冬舎『後悔と真実の色』(山本周五郎賞受賞作)などのような、硬派な社会派ミステリー作品が多いですが、意外にもこのようなちょっとはじけた作品もあったとは驚きでした。はじけていると言っても、ミステリーとしての謎解きは一級品!!

美しく才能豊か、だけどかなり性格の悪い安楽椅子探偵・吉祥院慶彦と、ちょっと気弱で苦労症の刑事・桂島が活躍するコミカルな本格ミステリー短編集。表題作『被害者は誰?』ほか『目撃者は誰?』、『探偵は誰?』、『名探偵は誰?』の4編。いずれの作品も読者の意表をつく‘いたずら’が随所に盛り込まれ、無理のないミスリードで楽しく読める!読み出したら止まらない、貫井さんの隠れた名作!です。

『被害者は誰?』
著者: 貫井徳郎
出版社:講談社
価格:¥619(税別)