美少女が次々と呪われる!?「うるはしみにくしあなたのともだち」

「ぼぎわんが、来る」「ずうのめ人形」
「などらきの首」など比嘉姉妹シリーズ
で話題になった、澤村伊智さんの新刊
「うるはしみにくしあなたのともだち」
を読みました。

美少女が呪われ、顔がくずれていく!
学園を舞台にした、切ないホラーミステリー。
女子ならこの気持ち少しわかる?

四ツ角高校三年二組中、一番の美少女で
人気もあった生徒・更紗が突如自殺を遂げた。
いじめを疑われたが、更紗に限ってそんな
ことは一切ない。
遺書もなく、更紗を崇拝するクラスメートが
真相解明に動き始める。

しかし、更紗の死をきっかけに、美少女で
人気のある女子生徒が見えない力によって、
次々と容姿を傷付けられていく・・・・。

担任の小谷舞香は、クラスを恐慌状態に
陥れたこの異変の真相を探るうちに、
この地域に伝わる「ユアフレンド」という
奇妙なおまじないの存在を知る。
自身の教育に対する思いを反省すべく、
事態の収拾を図ろうとするが・・・!

クラスカースト上位に君臨する美少女に
対する呪いの復讐劇。
マウンティング最下位の女子の仕業なのか?

残酷な怪異現象とおまじないという
ホラー小説の怖さと、二転三転する犯人像、
巧みなミスリードなど犯人当てミステリー
小説の面白さが相まってグイグイと
読ませられる!!

美人の女の子に呪いをかけたくなるほど
辛くて、彼女たちに憎悪しか抱けない
女の子たちの気持ちや心の叫びが胸に
突き刺さる。

『うるはしみにくしあなたのともだち』
著者:澤村伊智
出版社:双葉社
価格:¥1,600(税別)

おすすめホラーファンタジー「はざまにある部屋」

『フェイスレス 警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結』
シリーズ、『クラン』シリーズなど、独特の世界観で
描かれる警察小説が魅力の沢村鐵さん。
そんな沢村さんのホラーファンタジー
『はざまにある部屋』を読みました。

子どもたちが主人公で、自分たちにふりかかる
災厄を皆で協力して立ち向かう姿にうるうるでした。

小学5年生の彩香が住む町の山の中腹に建つ古い
アパートに引っ越してきた和枝。
いつも優しく包み込んでくれるような和枝は、
彩香の唯一の友だちだった。
そんな和枝が2学期から学校に来なくなった。

心配になった彩香は、担任の先生に相談する。
その日、様子を見に行った担任の先生は、
次の日から学校に来なくなった。
さらに女性教諭にも相談し、アパートに
行ってもらったが、担任の先生と同じような
状況になってしまった。

いったいあのアパートで何が起こっているのか?
彩香は一人、アパートを訪ねることに。

誰も住んでいないはずのアパートに暮らす謎の住人たち。
危険な空気を醸し出す、202号室。
不気味な烏の群れ。
そして、アパートを訪ねた街の人たちは次々と
抜け殻になってゆく!

彩香は大切な友人・和枝を助けることが出来るのか?

不気味なアパートの正体が徐々に明らかに
なってゆく過程が怖い。

ホラーテイストでありつつ、子供たちの
前にたちはだかる大きな恐怖にどう
立ち向かってゆくのか?
自分自身をとりもどす成長の物語でも
あるなと感じた。

グイグイと読ませるストーリー構成の
上手さに気がついたらイッキ読み
していました。

中高生にもおすすめのホラーファンタジー。

『はざまにある部屋』
著者:沢村鐵
出版社:潮出版社(文庫)
価格:¥800(税別)

読後、背筋がぞ~っとした!「狐火の辻」

2017年度このミステリーがすごい国内編第1位
に輝いた「涙香迷宮」。
超絶の暗号解読ミステリーをドキドキしながら
読んだが、この「狐火の辻」はホラー。
またもドキドキ・・・。

7年前に起きたひき逃げ事件
湯河原の温泉旅館街で起きた交通事故。

さらに郊外で起こった交通事故ではなぜか
車に轢かれた被害者が消えてしまった!

連続する奇妙な事故に興味を抱いた楢津木刑事は、
ネットの噂や街中で起こっている「奇妙なこと」、
・古びた洋館の裏にある沼のあたりを探検する
子供たちに、右手をよこせとなたを振りかざす怪人、
・タクシーから消えた乗客。などなどに
漠然とした繋がりを感じる。

楢津木刑事がなんとなく「繋がる」という
感を頼りに「居酒屋探偵団」なるものが
結成された。
そして楢津木は、18歳でIQ208の本因坊
という天才棋士・牧場智久を引き入れる。

都市伝説か?怪談話か?
次々と語られるストーリーが恐怖を煽り、
背筋がぞわ~っとしてくる。
この一見なにも繋がりがなさそうな話、
何がどうなっているの?
絡まった糸みたいな事件の数々。
しかし、名探偵・牧場智久のアドバイスを
受け、楢津木たちが調査してゆくとやがて
事件の構図が見えてきた!

都市伝説・怪談話がリアルな事件の
真相に繋がってゆく。
しかし、そのつながり方が偶然とは
片付けられない、因縁めいた、何か
大いなる意思が働いているとしか
思えない!

その描き方が実に巧妙で、読んだ後
物語を頭の中で整理したとき、
ものすごく怖くなった!

『狐火の辻』
著者:竹本健治
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,700(税別)

幽霊屋敷の怪?砂の恐怖!!!『ししりばの家』

映画化された「ぼぎわんが、来る」ほか「ずうのめ人形」
「などらきの首」など、今一番面白恐いホラー作品
を生み出す、澤村伊智さんの最新文庫作品
「ししりばの家」(角川ホラー文庫)を読みました。

読み始めたら、澤村ホラーの世界へどっぷりと
はまってしまい、そこから抜け出せなくなりました。

夫・勇大の転勤で関西から東京に越してきた、果歩。
しかし、東京生活に馴染めず、多忙な夫ともすれ違い、
心は次第にすさんでいった。

そんなある日、果歩は幼なじみの平岩と再会する。
関西弁トークに久しぶりに心がはずんだ。
日曜日に平岩邸に招かれた果歩は、彼の妻や
祖母と交流し心も体も癒された気持ちになった。

だが、平岩邸は何か変だった。あまりにも
心がすさんでいたので果歩は自分がおかしいのか….?
と思ったのだが。
その家は「さあああ~」という奇妙な音がする、
さらに部屋中に砂が散っていた….。

一方、平岩邸を監視する一人の男がいた。
彼は子供のころ、この家に関わったせいで
脳を砂が侵食する感覚に悩まされ、仕事もできず、
家に引きこもっていた。

悶々と日々を送る中、比嘉琴子という女性が
彼の元へ現れる…。

二つの視点から現在と過去の「砂」と「家」の
恐怖が描かれる。
そして、「家」にまつわる不可解な現象を
調べるうちに、恐ろしい事実が判明する!!
この家にはいったい何がいるのか?

また、霊媒師・比嘉琴子が真に己の能力に目覚めた
ストーリーでもある。

恐いけど、もの凄く面白い!

『ししりばの家』
著者:澤村伊智
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥680(税別)

益々面白くなる、「後宮の烏3」

段々と面白くなってきた白川紺子さんの
「後宮の烏」。シリーズ第三弾を読みました。

烏妃暗殺を目論んだ、烏漣娘娘が恐れる
「梟」とは何者か?
その「梟」が残した羽根に自らの行く末を
重ねる寿雪。

「烏妃は一人で在るもの」という烏漣娘娘
の言いつけに背き、寿雪の周りには
寿雪を慕う者たちが集まってきている。
しかし、寿雪は虚しさから逃れることが
できないでいる。

ある日、寿雪のもとへ泊鶴宮の妃・鶴妃の
侍女が訪ねてくる。
雨の夜にやってくる、幽鬼を追い払って
ほしいという。
寿雪は侍女から詳細を聞くと心がざわつく。
なにかよからぬことが起こるのではないか….?

この事件を皮切りに、不可思議な事件が
次々と起こり、やがて、政治的な思惑に
絡めとられてゆく。

そしてそのことが寿雪を追い詰めてゆく。

2巻までは、宮城内部の事件を中心に
描かれていたが、3巻からは次第に
外へと事件が広がり、スケールが
大きくなってゆくようだ。

寿雪を慕う鶴妃だが、彼女の一族は
不穏な空気を漂わせている。
また怪しげな「八真教」なるものも出現し
高峻や寿雪を悩ます。

また3巻では、寿雪と衛青のつながりにも
驚かされたり、護衛の温螢の寿雪に対する
忠誠心にキュンとなったりと読みどころ満載だ!

そして高峻は、寿雪を「烏」から開放する
一筋の光明を見出す!!!

寿雪の運命はどう動くのか?
4巻が待ち遠しい~~。

『後宮の烏 3』
著者:白川紺子
出版社:集英社オレンジ文庫
価格:¥610(税別)

最後の最後までぶっ飛びの展開!「武家屋敷の殺人」

やりすぎミステリの伝道師・小島正樹さんの
記念碑的作品!「武家屋敷の殺人」。
ついに読みました。
いや~凄い展開で驚きの連続、さらにクライマックス
は間違いなく絶叫します!

孤児院で育った女性から、生家を探して欲しいとの
依頼を受けた弁護士の川路。
手掛かりは、赤ん坊だった女性が、孤児院に置かれた
ときに残されていた日記だった。

だが、その日記には20年前の殺人とミイラについての
異様な記述があり、とても本当の事とは思えない。
早くもお手上げ状態となった、川路は友人の
那珂に助けを求める。

那珂は日記に続らていることは全て事実として
考え、記述にあったことを丹念に調べ あげ
ついに女性の生家を突き止める。
その家は江戸時代から存続する曰くつきの屋敷だった。

そして、その屋敷には、叔父と女性の母親が住んでいた。

川路と女性は、早速屋敷を訪れた。そこで女性の母親と
対面するが、彼女から異様な物語を聞かされる。

はずみで殺した男を床下の氷室に隠すとミイラ化。
首無し死体の登場、ミイラが蘇る!?
そして死体が移動!?

これでもか!?と提示される謎の数々と前代未聞の
トリックに心が躍る。こんな複雑怪奇な
ミステリーが読みたかったんだ~。

あまりにも予想外の展開に、読まずにはいられない!
読まないと損をするとばかりにいっきに読み切った。

二転三転したあげくのどんでん返し。もう凄すぎて唖然。

ミステリ好きを最後の最後まで楽しませたい、
著者の思いが伝わってきました。

『武家屋敷の殺人』
著者:小島正樹
出版社:講談社(文庫)
価格:¥960(税別)

怪談実話!超短編だからこそ怖さが増幅!「忌み地」

こんなに暑い夏は、クーラーをガンガンに
効かせた部屋で、一人怪談集を読む!
すると、さ~っと身体が冷えてくる。

土地にまつわる「怪談実話集」。

怪談社の糸柳寿昭氏と上間月貴氏が全国各地の
忌み地、いわくつきの物件を中心に取材した。

二人の取材を元に作家の福澤徹三氏が、
小説風に書きおこした、前例のないちょっと
珍しい怪談実話集。

糸柳さんと上間さんが、事故物件が集中
している場所で不思議な現象が相次いで
いることに遭遇。
その件は読むとほんとに怖い。

50編弱の短編だが、怖さや衝撃を狙った
描き方ではなく、取材したことが淡々と
描かれていて、その語り口がよりいっそう
読んだ時の恐怖感を際立たせているような
感じがする。

物語のようにすべてスッキリ回収されて
いなかったり、これどういう意味なのか?
と思ったりするけれど、そこが実話なのだ
からと改めて認識させられる。

特に怖かったのは、「うなる男」
挿入されたイラストが怖すぎた!
そして、「封印されたアパート」。

怪談好きにはたまらない、百物語。

『怪談社奇聞録 忌み地』
著者:福澤徹三/糸柳寿昭
出版社:講談社(文庫)
価格:¥600(税別)

ガツンとやられた…。「予言の島」

「ぼぎわんが、来る」「ずうのめ人形」
この2作品が「超」怖くて、「超」面白いです。
この作品を読んで澤村伊智さんにはまった私。

気になっていた、新刊「予言の島」を読みました。

エリートコースまっしぐらだと思われていた、
幼馴染の宗作が、パワハラに遭い心に深い傷を
負って故郷に帰ってきた。
その宗作を励まそうと、天宮淳はもう一人の
幼馴染・晴夫らとともに、瀬戸内海の霧久井島へと
向かった。

その霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・
宇津木幽子が最期の予言を残した場所だった。
その予言とは、幽子が死んだ20年後に島で
6人が死ぬと言う不吉な予言だった。

淳たちは島に到着したが、予約していた宿は、
怨霊がおりてくるという不可解な理由で
勝手にキャンセルされていた。

困り果てていた淳たちに声をかけたのは、
都会から移住し、民宿を営業している麻生だった。
他にも個性的な宿泊客がいた。
その中に、宇津木幽子を崇拝している女性が
いた。彼女は何かにつけて幽子の予言を持ちだす。
皆、うんざりしていた翌朝、晴夫が死体で発見される。

しかし、晴夫の死は宇津木幽子の予言に基づく
悲劇の始まりに過ぎなかった。

「ヒキタの怨霊が山から下りてくると人が死ぬ」
という怨霊の言い伝え、「くろむし」という
不気味な魔除けや風習。
そして、「偶然」(?)居合わせた、宇津木幽子
の孫娘。
祖母の死の真相を突き止めるために来たという
彼女の真の目的とは何か?

横溝正史の「獄門島」を彷彿とさせる世界観。
嵐に見舞われた脱出不可能な「島」という
クローズド・サークル。
本格ミステリーの面白さと、霊能者の予言、
そして呪いという恐ろしい描写。
この展開だけでも十分面白い!

だが、これらの面白さを超えた仰天の展開に
思わず「えええ~ッツ」と叫んでしまう。

最後の最後にガツン!とやられる。

超弩級の面白さで描くホラーミステリー。
澤村伊智さん恐るべし。脱帽です!

『予言の島』
著者:澤村伊智
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,600(税別)

バチカン奇跡調査官シリーズ、短編集第4弾「天使と堕天使の交差点」

大好きなバチカン奇跡調査官シリーズです。
短編集もなんと第4弾!!
いつものロベルト&平賀、ほかにチャンドラ・シン博士、
ビル・サスキンス捜査官、そして青年司祭・ジュリア
が登場します!

イタリアの宝石店に現れる、処刑された女性・
ベアトリーチェの幽霊を払うためエクソシストを呼んだ店主。
バチカンの神父・ロベルトと名乗ったが
それは偽ロベルトだった。その汚名を晴らすべく、
平賀とロベルトは、宝石店に向かう。
そして二人はベアトリーチェと思われる霊と遭遇
するが・・・・?

ロベルトと平賀、またバチカンを翻弄する、
美貌の青年司祭・ジュリア。彼は上司である
ルッジェリのために豪奢な宴を催す。
しかし、その宴に出された豪華な食事には
恐るべき秘密が隠されていた・・・。
神をも恐れぬ、ジュリアの奸計に絶句する!

FBI捜査官ビル・サスキンスの前に現れたのは
美しき秘密工作員、エリザベート。
彼女は、ウオーカー博士が追う陰謀にビルの両親が
関与していると疑い、さらにFBIに巣食う
イルミナティの動向を探るため、ビルに接触を試みた。
しかし・・・・!二人はどうなる・・・!?

チャンドラ・シン博士は、熱心なジャイナ教徒だ。
ジャイナ教で最も守らなければいけないことは
非暴力・不殺生である。
ある日シン博士は、仕事中のうっかりで、ねずみに
怪我を負わせてしまう。パニックに陥ったシン博士。
彼が助けを請うたのは、ロベルト・ニコラス神父だった。
いつもクールで感情を読み取れないシン博士。
しかし、博士の人間的魅力がたっぷり味わえる一編。

今回は、偽ロベルト事件から端を発した幽霊騒ぎや
チャンドラ・シン博士の意外な一面、ビル捜査官の
近況、そして天使の貌をした悪魔・ジュリアの
恐るべき所業が描かれる・・・。

ユーモアとシリアスとホラーがミックスされた
極上の短編4編が収録!
文句なく面白いです!!

『バチカン奇跡調査官 天使と堕天使の交差点』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥640(税別)

怖すぎる!「家」の恐怖を描く!「スイート・マイホーム」

発売後から、今までにない怖さ、おぞましさということで、
話題になっている、ホラーミステリー、神津凜子さんの
「スイート・マイホーム」(講談社)を読みました。
小説現代長編新人賞受賞作です!

スポーツインストラクターの賢二は、冷え性で悩む妻のため、
1台の大きいエアコンで家中を暖められる、「まほうの家」と
銘うった新居をを購入した。

だが、入居後まもなく夫の友人や、妻の友人のこどもから
家が怖いと言われる。妻も時々家の中で他人の視線を
感じるようになり、赤ん坊の瞳には、不気味な影が
映り込む!さらに地下室では長女が何者かに捕まり
泣き叫ぶ!そしてついに関係者の一人が怪死を遂げる……。

幸せを絵にかいたような家族。しかし夫には決して
妻に言えない秘密があった….。
妻は、表面的には良い妻、良い嫁、良い母親であろうと
務めている。
しかし、そのひずみはやがて家族の間に暗い影を落とす。

家に潜む狂気が、妻・子どもたち・夫の兄弟までも蝕んでゆく…..。
冒頭から漂う怪しげな不安感。
その不安感は読み進めると恐怖に変る!暗い影は、人間の狂気か、
それともモンスターか?最後の最後まで気が抜けない。
イヤミスもホラーも超えた、おぞましいミステリー。
新人離れしたストーリー展開に脱帽です!

『スイート・マイホーム』
著者:神津凜子
出版社:講談社
価格:¥1,500(税別)