格調高いファンタジック後宮ホラー「後宮の烏」にはまる!

文庫担当のスタッフが、「めちゃめちゃはまりました!」
と言って紹介してくれたのがこの作品。
『後宮の烏』白川紺子著(集英社オレンジ文庫)

目利きの担当者に薦められたら、読まないわけには
いきません!早速読みました。

後宮ものは結構好きなはまさきです。
読み終わるのがもったいないくらい面白かった!

「十二国記」、「紅霞後宮物語」「八咫烏」シリーズ
を読んでいるならば、絶対にはまる!

時の皇帝・高峻は、ある依頼のために
「烏妃」の許を訪れる。
老婆だと思っていた烏妃は、少女の面影を
残す、美しい女性だった・・・。

政争にからむ殺人事件の謎や、幽鬼と呼ばれる
幽霊も登場する。彼らがなんのために現れるのか?
その声を聴くのは、不思議な能力を持つ「烏妃」だ。
妃と呼ばれながら決して皇帝の妃にはなれない。
女神である烏漣娘娘(ニャンニャン)に仕える
巫女なのだ・・・。

哀しい過去をひきずりながら生きる、皇帝・高峻の秘密。
そして「烏妃」の謎。彼女は一体何者なのか?
さらに、王朝に蠢く数々のミステリーが
二人が出会ったことで、明らかになる。
「禁忌」を破るこの邂逅で一体何が起こる!?

個性際立つ人物描写で、物語に惹きつけられる。
特に、少女でありながらすでに達観している
「烏妃」の魅力が申し分ない。

ミステリー仕立てにホラーとファンタジーを
加えたことで、より物語の面白さが際立っている。

この1冊で終わりにしてしまうのはもったいない!
ぜひシリーズ化してほしい作品。

『後宮の烏』
著者:白川紺子
出版社:集英社(オレンジ文庫)
価格:¥600(税別)

今まで感じたことのない恐怖!「火のないところに煙は」

芦沢央さんの「罪の余白」「悪いものがきませんように」
などを読んで、追いつめられてゆく人間の心理描写が
とても上手い作家さんだと思った。

そして、2016年に新潮社から発売された「許されようとは
思いません」で完全にはまってしまった・・・。
様々な状況に置かれた人間たちの心の動きが
緻密なタッチで描かれ、読んでいると自分自身が
体験しているような錯覚に陥る。
思わず、のめり込んで読んでしまった。

凄い作家さんの登場だと思っていたところに、
今度はホラー小説。しかも最強の恐さで迫ってくる!
「火のないところに煙は」・・・。
怖すぎる!でも面白くて止まらない戦慄のホラーミステリー。

物語は、ミステリー作家の「私」が雑誌編集部から
「神楽坂」を舞台にした怖い話を描いてほしいと依頼
されたことから始まる。
「私」は、以前友人から聞いた奇妙な話を思い出した。
その事件絡みのあるモノがクローゼットに入れたままに
なっている。凄惨な記憶が甦る・・。
これは過去と向き合うことなのか?
その話はちょうど神楽坂で起こった出来事だったので小説に描いた。

小説を発表したあと、怖い話が「私」のもとへ集まってきた。
集まった怖い話は小説として雑誌に発表することに・・・。

この本に描かれた、6編の怪談。
いずれの怪談もひとつの小説として成り立っている。
しかし・・・!?

怪談そのものの恐ろしさと、その怪談はいったい
何が原因で起こったのかという「謎」に迫る過程が
物凄く恐い!二重の恐怖で肌が粟立つ!

想像を絶する展開と尋常でないどんでん返しの
連続に、ここに登場する怪談はフィクションなのか?
それともノンフィクションなのか?頭が混乱し、
完全に騙される!

そして今まで感じたことのない恐怖に襲われてしまった・・・。

『火のないところに煙は』
著者:芦沢央
出版社:新潮社
価格:¥1600(税別)

心霊探偵八雲のルーツを描く、シリーズ第1弾「浮雲心霊奇譚 赤眼の理」

「浮雲心霊奇譚」シリーズ、2の「妖刀の理」から
先に読んでしまいましたが、
今回、シリーズ1の「赤眼の理」を読みました。

「心霊探偵八雲」が好きで続けて読んでいますが、
「浮雲心霊奇譚」も主人公の「浮雲」に惹かれ
次々と読みたくなってしまいます。

幕末の混沌とした江戸で怪異事件が続発する!
そんな事件は、一人の「憑き物落とし」が秘密裏に闇へと葬っていた。
その「憑き物落とし」の名は「浮雲」。
白い着物をさっそう(?)と着こなし、目に赤い布を巻いている。
おかしなかっこうだと思うが誰も突っ込まない。
実は彼は、「死者の魂」を見据える「赤い瞳」を持っていた。
赤い布を巻くのはそれを隠すためだ・・・。
そして、どこへ行っても、俺流を貫く浮雲は、
この世をさまよう霊たちの声を聞く・・・。
霊たちの声・・・この世に残った想い。
それこそが真実!それこそが事件解決の鍵!

呉服屋の息子・八十八の姉が、何者かに憑りつかれた。
姉を助けるため、八十八は、ある憑き物落としを
訪ねた。落ちぶれた神社の奥にいた男は
白い着物を着崩し、目に赤い布を巻き、
居丈高な態度で八十八の前に立った。
姉を助けてほしいと懇願すると、五十両
もの大金をふっかけられる・・・。
こいつは本当に憑き物落としなのか・・・?
それでも姉のため、八十八はあきらめなかった。

「浮雲」と八十八の出会いは最悪だが、八十八の
姉についていた霊を成仏させ、さらにそれに絡んだ
事件を解決に導いた。
おまけに、父親が八十八に秘密にしていたある事実まで
解いてみせる・・・。
八十八にとっては、衝撃的な事件だったが、
それ以来、浮雲と八十八は腐れ縁で結ばれる。

その後も武家の娘・伊織との出会い、その武家で起こった
奇怪な女の霊の事件、恐ろしい絵師との出会いなど
次々と事件が起こってゆく。

「浮雲」の霊の声を聞きながらその事件の
裏にある真実を暴くという姿勢が心に響く。

「浮雲」の超俺様キャラの裏にある優しさに
事件解決のあとホッとする・・。

ものすごく面白いので、今後もシリーズを
続けて読んでいきます!

『浮雲心霊奇譚 赤眼の理』
著者:神永学
出版社:集英社
価格:単行本¥1,200(税別)
   文庫¥560(税別)

心霊探偵八雲のルーツ「浮雲心霊奇譚」第2弾「妖刀の理」。

「心霊探偵八雲」のルーツを描く怪異謎解き時代劇、
「浮雲心霊奇譚」シリーズ。なぜか第2弾「妖刀の理」
から読んでしまったハマサキ!

でもすごく面白かったです。

ペリー率いる黒船が浦賀沖に到着し、江戸の民の度肝を抜いた
幕末の頃、混乱する世を背景に様々な怪事件が起こる。
そんな中、一人の「憑き物落とし」が秘密裏に闇へと葬っていた。
その「憑き物落とし」名は「浮雲」。
白い着物をさっそうと着こなし目に赤い布を巻いている。
それは「死者の魂」を見据える「赤い瞳」を隠すため。
どこへ行っても、俺流を貫く浮雲は、この世を
さまよう霊たちの声を聞く・・・。
それこそが真実!それこそが事件解決の鍵!

夜道で辻斬り事件に遭遇した武家の娘・伊織は、
異様な殺気を放つ男の幽霊を見てしまう!

祟りがあると噂の幽霊沼。ある目撃者が憑きもの落としを
依頼するが、事態は思わぬ方向へと転がる。

また、ある時、妖刀・村正による惨劇の場に
居合わせた絵師・八十八は事件の背後に、
浮雲の宿敵、呪術師・狩野遊山の影を見る! 

心霊探偵八雲のルーツとなる「浮雲」シリーズ。
第2作目から読んでしまったが、
俺様キャラだが約束はきっちり果たす
憑き物落とし・浮雲と強すぎる正義感とまじめすぎる
性格がちょっぴりやっかいの絵師・八十八の
コンビがたまらないユーモアを醸し出す。

読み始めたら癖になる!
心霊探偵八雲ファンも必読の傑作連作短編集。

『浮雲心霊奇譚 妖刀の理』
著者:神永学
出版社:集英社
価格:単行本¥1,200(税別)
   文庫¥580(税別)

バチカン奇跡調査官最新作!出ました。「ジェボーダンの鐘」

大好きなシリーズ「バチカン奇跡調査官」の最新作を
読みました。

毎回楽しみ!今回の奇跡現象も凄い!

フランスの小さな村の教会で、山の洞穴に
ある聖母像を礼拝している時、舌がなく
長い間鳴らなかった鐘が鳴り、青い鳥の
歌声を聞いた全盲の少女の眼が見えるように
なったという現象が起き、バチカンに奇跡
調査の依頼が届いた。

奇跡調査官であり、古文書解析のエキスパートの
ロベルトは、その頃、出自不明の福音書らしき
ものの調査を行っていた。
そして奇跡調査のパートナー、平賀と共に
送られてきた奇跡現象の動画を視た。
明らかにそこで奇跡が起きている・・・!?
2人は早速現地へ飛んだ!

今回は、村の掟や古くからの言い伝えを
守りながら生活している村人たちが
多数登場する。山に潜む怪しい怪物や
精霊、妖精なども登場し、まるでファンタジーの
世界が広がる。
しかし不気味な謎も用意されミステリー好きを
ワクワクさせる。

さらに、クライマックスに繰り広げられる
ロベルトの「ローマ帝国」「キリストの登場」
「聖書」にまつわる歴史を語るシーンが
とても印象的で非常に興味深い!
そして二人の優しさ、慈悲深さに感動させられる。

著者の博学ぶりがいかんなく発揮された作品。
面白いです!!!!

『バチカン奇跡調査官 ジェボーダンの鐘』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(ホラー文庫)
価格:¥720(税別)

「恐怖小説キリカ」いっき読み!

「ぼぎわんが、来る」で日本ホラー小説大賞を
受賞した澤村伊智さんの最新刊、「恐怖小説キリカ」
を読みました。

物語は、奇想天外なフェイクドキュメンタリー?

大手出版社KADOKAWA主催のホラー小説
大賞に応募し、見事大賞を受賞した澤村電磁。
タイトルは「ぼぎわん」。
妻の霧香とともに喜んだ。
さらに、大学時代からの小説仲間で
「小説書くぞの会」のメンバーからも
お祝いのメールが届いた。

ところが、その中の一人が自分のブログで
「ぼぎわん」については作者自身の不幸な
事件から「ぼぎわん」を生み出したとか、
幸福で平凡な人生を歩んでいるやつに小説は
書けないなど自分勝手な解釈を披露
していることを知る。

ちょっと上から目線ではあったが、友人だと
思っていた人物の悪意ある評価に打ちのめされる澤村。
さらには、「ぼぎわん」の度重なる書き直しに
心が折れそうになる。
徐々に心が荒んでいく澤村を心配する妻の霧香。

しかし、この夫婦には誰にも言えない秘密があった。

平凡な夫婦の生活は、澤村のホラー大賞受賞と言う
予期せぬ出来事から予想もつかない物語へと急展開する。
澤村自らが生み出した「ぼぎわん」に平穏だった
日常を壊されてゆく恐怖・・・!

前代未聞!著者自身が自らの作品をディする小説!
フェイクドキュメンタリーと銘うって描きだされる
人間の恐ろしさ!

澤村伊智、怖いものならなんでも描ける驚異の作家です・・・。

『恐怖小説 キリカ』
著者:澤村伊智
出版社:講談社
価格:¥1,500(税別)

デビュー作で年末ミステリランキング3冠達成!「屍人荘の殺人」

今年、第27回鮎川哲也賞を受賞した今村昌弘さんの
「屍人荘の殺人」(東京創元社)が
「このミステリーがすごい2018年版(宝島社」、
「週刊文春2017年ミステリーベスト10」(文藝春秋)
「2018 本格ミステリベスト10」(原書房)
この3つのランキングで1位を獲得しました!
デビュー作の3冠達成は、前代未聞の快挙です。

神紅大学に学ぶミステリ愛好会会員・葉村譲は、
同じ大学の先輩である、ミステリ愛好会会長で
「神紅のホームズ」と異名をとる、明智恭介と
ともに、神紅大学の探偵少女・剣崎比留子を
介して、映画研究部の夏合宿に参加した。

しかし、映画研究会の夏合宿は研究会と言いながら
合コンの要素が強く、毎年小さな事件を起こしていたようだ。
そして、この夏も男女13人が参加していた。

皆が集まり、バーベキューで宴会を始めようとした頃、
そこにいた誰もが目を疑うような光景が迫ってきたのだ!

信じられない光景に全員がパニックに陥った。
冷静さを取り戻したのは探偵少女だ。
すぐに全員を合宿所に誘導し、入口をふさいだ!!

かつてないクローズドサークルで起こる連続殺人事件。
閉じ込められた中で合宿参加者たちが次々と殺害される。
一体誰が?何の目的で?・・・。
参加者たちは殺される恐怖と、合宿所の外で繰り広げられる
おぞましい状況の2重の死の危険に苦しむことになるのだ。

新本格に斬新な設定が施され、今までの新本格ミステリーでは
感じたことのなかった、凄まじいほどの衝撃展開が
読者を待ち受ける。

3冠達成も納得のミステリー作品だ。

『屍人荘の殺人』
著者:今村昌弘
出版社:東京創元社
価格:¥1,700(税別)

幽霊か人間の悪業か?どっちも超怖いホラーミステリー。「可視(み)える」

「変若水(をちみず)」で、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞
優秀賞を受賞し作家デビューした、島根県在住のミステリ作家、
吉田恭教さん。
デビュー作が面白かったので、その後に「堕天使の秤」を読み、
さらに面白かったので、怖そうな表紙の「可視(み)える」に
トライしてみました。

幽霊と猟奇殺人事件が交差する、ホラーミステリーです。

警視庁組織犯罪対策課の刑事だった槇野は、自信の犯した
過ちから警察をクビになり、元上司だった鏡に拾われた。
鏡は探偵事務所を開いており、槇野を捜査員として雇った。

ある時、「幽霊画」の作者を捜してほしいと画商から依頼を受けた
槇野たちは、その幽霊画が収められている島根県のある神社へと向かった。
世界遺産・石見銀山で有名な土地に佇む「龍源神社」で
「幽霊画」と対面した槇野は、その絵のあまりの恐ろしさに絶句する。

やがてその絵の作者を突きとめた槇野は画家に会いに
島根県松江市に向かった。
槇野は画家と話すうち、何か秘密があるのではないかと疑う。

一年後、警視庁捜査一課の東條有紀は、ベテラン刑事でも目を
背ける残虐な猟奇殺人事件を追っていた。
猟奇殺人事件の被害者が次々発見されるが、いずれも
ひどい拷問のあとがあり、次第にそれがエスカレートしていた。

同じ頃、男性が陸橋から飛び降り、通過しようとした車に
ぶつかり亡くなるという事件が発生した。
亡くなった男は、あの「幽霊画」を描いた画家だった。
警察はその状況から自殺と断定したが、例の画商から、
「彼は自殺ではない、彼と約束していた。調べて欲しい」と
槇野たちのところへ再び調査の依頼が入った。

槇野たちが調査する、幽霊画と画家の事件、
東條たちが捜査している猟奇殺人事件がある1点で結びつく。

警察に未練を残しながら、探偵として生きる槇野と
自身の出生の秘密を抱え、鉄仮面とあだ名される女性刑事
が互いの腹を探り合いながら難事件を追う。

多くの謎が配され、それらがひとつひとつ繋がり
次第に事件の大筋が見えてくる。
読者もあるところでで犯人らしい人物の目星がつくが、
そこからが想像を絶する恐怖の展開が待っているのだ。

怨念がこもった幽霊が怖いか・・・?
それとも、憎しみと、妄執と、妬みと恨みに支配された
生きている人間が怖いのか・・・?
この作品は本当にどちらも怖い、ホラーミステリー。

『可視(み)える』
著者:吉田恭教
出版社:南雲堂
価格:¥1,800(税別)

心霊探偵八雲ANOTHERFILES第4弾、味わい深い短編集。

心霊探偵八雲シリーズは、本編の第10作目が発売に
なりました。(まだ読んでいないのですが・・・・。)
ファンは待ちに待っていた作品。

その発売前に、心霊探偵八雲ANOTHERFILESシリーズ
第4弾「亡霊の願い」が発売になっています。
先日やっと読みました。

八雲と晴香、何だか久しぶりに友達に会ったっていう
感じで読んでしまいました。

八雲と晴香が通う大学では、学園祭が近くなって、何となく
ざわついている。

晴香はサークルの発表の準備で忙しい中、
友人から心霊相談を受け、八雲に助けを求めに行くが
いつものきつ~い言葉を浴びる羽目になる。

演劇部の友人からは、練習中に妙な出来事が続き、
それが霊の仕業ではないかと相談を受ける。

自分は呪われていると八雲に相談する女性。
その二人を偶然見かけた晴香は心穏やかではない。
晴香の方は男性の友人から、霊に憑りつかれている
ような気がすると相談を受ける。

映画サークルで撮影したホラー映画に妙なものが
写り込んでいた。そして怪現象が・・・。
映画サークルの友人から相談を受けた晴香。
呪いのホラー映画ビデオの行方は!?

友人からの相談に、ついつい乗ってしまう晴香。
八雲はそんな晴香から持ち込まれるやっかいな
事件にため息をつきつつも真剣に取り組む。
霊は何らかの意図があり、誰かに伝えたいのだ。
そんな霊の声を聞く。
八雲の優しさと厳しさが魂を救う。

八雲と晴香、相変わらずの関係だが・・・。
本編新作第10作目が気になるな~。
読みたい・・・。

『心霊探偵八雲 ANOTHER FILES 亡霊の願い』
著者:神永学
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥600(税別)

恐すぎました・・・。「黒面の狐」

ホラーミステリの第一人者、三津田信三さんの
「黒面の狐」(文藝春秋)を読みました。

以前、三津田さんの「怪談のテープおこし」を
読んだ時はもろ怪談だったので、恐かったのですが
この「黒面の狐」は、もっと超自然的な恐ろしさを
感じてしまい、小説なのにとても怖いなと感じました。

戦後、朝鮮から引き揚げてきた一人の青年・物理波矢多(もとろいはやた)。
居場所はなく、なんとなくやってきた町でぶらりとしていると、
炭坑の手配師らしき男に声をかけられた。
少し強引なやり口だったが、今なら炭坑夫くらいしか
仕事口はないだろうと思い、ふらふらとその手配師についていった。
その矢先、別の男から声をかけられた。
波矢多は知的で優しそうなその男に、危うい炭坑に連行される
ところを助けられたのだ。
二人は何となく意気投合し、男が務める炭坑で共に働くことになった。

ただ、波矢多は朝鮮の大学を卒業しており、
それが炭坑の上層部にばれるとなにかと目をつけられるので、
黙って炭坑夫を続けた方が良いと言われた。

毎日、暗い穴のような所で汗だくになりながら炭を掘るのは
重労働だった。
しかも、炭坑にはタブーがあり、怪事件に遭遇した男もいた。
その中で特に興味深いのは、狐の面をかぶった美しい女の話だった。
いるはずもない炭坑のなかに出没する、狐の面の美女。
その女に魅入られると男はみんなおかしくなり、消えてしまう。

波矢多が仕事に慣れた頃、大参事が起こった。
ガス漏れが原因で炭坑内で爆発が起こったのだ!
波矢多は助かったが、親友は穴の中へ取り残されてしまった。
助けに行きたかったが、ガスが充満して2次災害が起こる
可能性があるため、会社の指示に従うことになった・・・。
そして、この事故からのち、不可思議な連続殺人事件が起こった。
さらに、事件の現場で目撃される、黒面の狐の姿・・・。
一体何が起こっているのか・・?
波矢多は事件を調べることに・・・。

炭坑内で起こる不思議な怪事件と、後半に起こった連続殺人事件。
2つの事件は繋がっているのか?
調査の過程で見つかったある朝鮮人青年の炭坑での記録!
それは目を覆いたくなるような、朝鮮人に対する日本人の
悪行が綴られていた。
朝鮮人たちの恐怖は、怪奇現象でも真っ暗な炭坑でもない。
日本人こそが恐怖だったのだ。

太平洋戦争中、強制的に日本に連れてこられ炭坑夫として働かされた
朝鮮人たちの無念が物語から浮かびあがってくる。
その叫びのようなものを、このような形で著者は描いた。

まさに背筋が凍るほどの衝撃!!!
覚悟して読んでください。

『黒面の狐』
著者:三津田信三
出版社:文藝春秋
価格:¥1,800(税別)