戦慄のサスペンスミステリー「花束は毒」

読みたかった織守きょうやさんの
「花束は毒」を読了。
随所に仕掛けられた罠に絶句!!

中学生の時に、木瀬の従兄はいじめを受けていた。
それを解決したのが木瀬の1年先輩の北見理花。
彼女が解決してくれたおかげで従兄は
いじめから解放された。
しかし、その「解決」に疑問を持った木瀬は
心に棘のようなものが残ってしまった。

それから六年後、木瀬はかつての家庭教師・
真壁と出会う。
当時はイケメンで快活、医者志望で女子に
人気があったが、再会した真壁は別人のように
変わっていた。

それでも木瀬との再会を喜び、久しぶりに
一緒に食事をした。
近ぢか結婚する予定であることを少し
照れくさそうに話した。
ところが、木瀬が真壁をアパートに送って
行ったとき、ゴミ箱からくしゃくしゃに
なった手紙を発見する。
それは脅迫状のようなものだった。

度々脅迫状が来るという真壁の話に衝撃
を受けた木瀬は、真壁に調査会社を通して
調べてもらうことを提案する。

探偵事務所を探してたどり着いたのは、
中学時代の先輩・北見理花がいる事務所だった。

木瀬は北見に事情を話して、真壁から連絡が
きたら協力して欲しいと頼む。

しかし、真壁から北見に調査の依頼は無かった。
業を煮やした木瀬は、真壁の代わりに調査を
依頼する。
北見と二人で真壁の周辺を調べ始めると、
真壁が大学を中退し医者の夢をあきらめたと知る。
そして、真壁にはその脅迫者を追及できない理由が
あった・・・・。

二人の調査によって明かされる真壁の過去。
脅迫者とは誰なのか?
謎は深まり、混迷してゆく・・・。

何者かの巧緻な計略によって、幾重にも
張り巡らされた罠。
誰もがその罠にはまってゆく。

読み進め、真相がわかった時には鳥肌が
たってしまった。
読了した後、呆然自失。
そして徐々に背筋が凍るほどの衝撃が
襲いかかる。

更にラストに提示された深すぎる問い。
自分だったらどうするのか?
その答えは・・・・!?。

『花束は毒』
著者:織守きょうや
出版社:文藝春秋
価格:¥1,870(本体¥1,700+税)

依頼人はヤバすぎる!?「黒野葉月は鳥籠で眠らない」

織守きょうやさんのミステリー作品が
気になって「黒野葉月は鳥籠で眠らない」を読了。
一筋縄ではいかない依頼人の相談に
必死に応える、新人弁護士・木村。
しかし彼らの依頼はちょっとヤバかった・・・。

超絶どんでん返しに唖然・・・・。
4つの短編を収録。

家庭教師の男子大学生が、教え子への
淫行容疑で逮捕された。
彼の弁護を担当する、新人弁護士・木村は
示談に持っていこうとするが、彼は
示談の際に提示された条件を拒否。
困った木村のもとへ被害者とされる
女子高生が現れた・・・。
【黒野葉月は鳥籠で眠らない】

木村は旧友の妻から「夫が逮捕された」と
知らされた。妻に事情を聞くと、旧友は
実家に不法侵入したらしい。
旧友の息子が難病にかかりその手術代のため
金目のものを盗もうとしたのだ。
木村とともに父親に会いにいき、事情を
話し許しを請うつもりだったが、
逆に相続人から排除すると言われる。
そして、そのあと旧友は父親殺害で逮捕されるが・・。
【石田克志は暁に怯えない】

木村は行きつけのお弁当屋の女性店員から
相談を持ちかけられる。
女性店員の幼馴染の男性の離婚や親権に
ついて相談に乗って欲しいという。
その男性は、妻の不貞を理由に離婚して
子どもの親権を得たいということだった。
木村が男性の仕事や日常のことを聞くと
親権は男性の方にメリットがあるようだった。
女性店員からも幼馴染の気持ちに沿うように
と頼まれた。木村は彼らの依頼通りの
結果を出した。だが木村はとんでもない
思惑に気づいてしまう・・・。
【三橋春人は花束を捨てない】

大物芸術家の財産管理を任された木村。
先輩の高塚とともに挨拶に行くと、美しい
女性に出迎えられた。
木村は「奥さん」と思ったが、高塚が
の話だと「娘」とのこと。
木村はその後何度かその家を訪ねた。
そして決定的な場面を目撃してしまう!
まさか・・・と思いつつ、女性に問い
ただす木村だったが・・・。
【小田切惣太は永遠を誓わない】

新人弁護士・木村がベテラン弁護士・
高塚のアドバイスを受けながら4つの
依頼を解決する。

「絶対に欲しいものが決まっている人が
どれだけ強くて怖いものかを・・・」
高塚が木村に言った一言。

彼らは一番欲しい物を手に入れるため、
一番大切なものを守るために何をしたのか?
それが分かった時、背筋が凍る展開も
あれば、愛情の深さに心を打たれる
感動の展開もある。
常識を超えたところに解決策を見出した
超絶どんでん返しだ。

感動と戦慄の結末に絶句する、リーガルミステリー。

『黒野葉月は鳥籠で眠らない』
著者:織守きょうや
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥770(本体¥700+税)

シリーズ完結編!『女副署長 祭礼』

松嶋智左さんの「女副署長」シリーズ完結編
「祭礼」を読了。
とても好きなシリーズなので、3巻で
完結なのはちょっと寂しい気がする・・・。

Y県初の女性副署長として勤務する田添杏美は、
県郊外の佐紋署からY県で最も繁華街にある
A級署の旭中央署に異動になって2年が経過していた。

旭中央署は、6年前に夏祭りで行方不明に
なった女児をいまだに発見できていないと
いう事案を抱えていた。

そんな中、新たな署長が赴任してきた。
30代の女性キャリア・俵貴美佳だ。
杏美はまず、6年前の女児行方不明事件の
事案について説明をした。
女児の両親は毎年チラシを配り情報を
集めていた。旭中央署もずっと一緒に
動いている。

貴美佳は、署長として様々な会合に
参加し、張り切っているようだった。

ところが杏美に監察から声がかかった。
署長に関する極秘の案件だった。

同じころ、二年前の強盗傷害事件の被疑者が
動き出す。そして被疑者の関係者が転落死!
事故ではなく事件の疑いが出てきた。
ところが、旭中央署捜査一課のメンバーが
次々と体調不良で倒れてしまう。

それに伴い、県警本部捜査一課三係の
剛腕・花野警部が助っ人にやってくる。
強盗傷害事件について、意外な方向へと
展開してゆく。

6年前女児が行方不明になった夏祭りの日、
杏美は単独である人物を追った。

旭中央署が抱える3つの事案。
6年前の女児行方不明事件、強盗傷害事件関係者の
不審死、そして署長にからむ不祥事。
一つ一つの事件が非常に丁寧に描かれ、見事に
交錯し、捜査小説としての面白さは群を抜いている。

心の準備ができないまま読んだまさかの結末!
衝撃が強すぎて言葉が出なかった・・・。

『女副署長 祭礼』
著者:松嶋智左
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥693(本体\630+税)

「巨悪」に挑む男!「地検のS Sが泣いた日」

伊兼源太郎さんの「地検のS」シリーズ
第2弾「Sが泣いた日」を読了。
湊川地検の総務課長・伊勢雅行の
真の狙いが徐々に明らかになる!

特ダネを上げろと上司からプレッシャーを
かけられる新聞記者。
暴力団員の遺棄致死の裁判でのらり
くらりと検事の質問をかわす証人。
トラブルメーカーの男の弁護を
引き受けた女性弁護士の苦悩。
政治資金規正法違反の疑いのある
政治家をかばう前科のある主婦の
自白をとれと迫られる女性検事。
政治家の闇献金疑惑に関するメモが
紛失し、必死で捜索する総務課員。

そのすべての事件の裏側には、伊勢がいた。
湊川地検の総務課長・伊勢雅行は
いったい何者なのか?
長年、総務課長の席にあり、湊川地検の
すべてを知る男。
伊勢雅行という男の影の働きをほのめかす
内容だった。

「Sが泣いた日」は伊勢雅行自身が主人公。

次期与党総裁候補の吉村泰二に闇献金疑惑が
浮上した。
湊川地方検察庁は、その証拠固めを急いでいた。
その金の受け渡しを目撃し、話をすると
約束した二人のホステスが行方をくらませた。

総務課長の伊勢は、盟友である事務官の
久保と独自に調査を始めるが・・・。

伊勢と事務官の久保には悲しい過去があった。
それは、次期総裁候補・吉川泰二とその父親
に関わることが原因だった。
彼らが何をしてきたのか?
伊勢と久保は彼らが行ってきたことを
白日の下に晒すことが真の狙いだ。

伊勢にとってこの「闇献金疑惑」は
吉川泰二を潰す絶好の機会だととらえた。
しかし・・・またしても悲劇が彼を襲う!

収賄疑惑がかかる大物政治家VS地検の
影の実力者。

何が何でも「巨悪」を潰す!
伊勢は正義を貫くことが出来るのか?

切れ者たちの策謀が渦巻く。
誰が味方で誰が敵なのか?
息をのむほど「超」スリリングな展開に
翻弄される!

検察ミステリーの極致。

『地検のS Sが泣いた日』
著者:伊兼源太郎
出版社:講談社(文庫)
価格:¥748(¥680+税)

偽造運転免許証の謎を暴け!『黒バイ捜査隊 巡査部長・野路明良』

「女副署長」シリーズでおなじみの
松嶋智左さんの新シリーズ「巡査長・野路明良」
第二弾「黒バイ捜査隊」読了。
元警察官で、初の女性白バイ隊員だった
著者が描くものすごくリアルな警察小説。

警察学校の恩師・山辺佑警部補から、
運転免許センターの技能試験監督の
仕事を勧められ、運転免許センターに
異動した、野路明良は、新設された
黒バイ捜査隊の訓練も担っていた。

その黒バイ捜査隊が追跡した不審車両の
運転手が所持していたのは、精巧な
偽造運転免許証だった。
ICチップが搭載された本物の運転免許証。
しかしそのICチップが別人のものに書き換え
られていた。

そんな免許証の偽造が発覚した直後、
センター係長が庁舎から飛び降り、
重体になってしまう。

知事・公安委員らからも免許証偽造に
ついて厳しい意見がでた。

野路は、そんな精巧な免許証の偽造は
内部の協力がないとできないのではと
推理。
内部の組織的犯行を疑う野路は、仲間と
ともに独自に捜査を始めると彼の前に
謎のバイク集団が現れた!?

ICチップ書き換えの偽造免許を巡る犯行により、
運転免許センターの署員たちが次々と
事件に巻き込まれてゆく。
何が目的なのか?
黒幕の正体とは?

もし運転免許が知らないうちに偽造
されていたら・・・・。
私たちの身近である運転免許センターで
起こる絶対にあってはならない、でも
もしかしたら起こるかもしれない事案を
元に練り上げられた警察ミステリー。

大切な仲間が犠牲になったことで、
野路の怒りは頂点に達している。
どんなことがあっても絶対に真相を
暴いて見せるという野路の警察官として
意地が感じられた。

バイクを駆使し、犯人らを追い詰める
シーンは毎回手に汗握る展開!
バイクアクションの描写も見事!

本格ミステリと、元警察官という著者の
経験が警察のリアルな描写と融合し
これまでの警察小説にはない面白さが
楽しめる。

『黒バイ捜査隊 巡査部長・野路明良』
著者:松嶋智左
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥792(本体\720+税)

開署準備に追われる署員たちを襲う前代未聞の事件!?『開署準備室 巡査長・野路明良』

「女副署長」シリーズでおなじみの
松嶋智左さんの新シリーズ「巡査長・野路明良」
第一弾「開署準備室」読了。
元警察官で、初の女性白バイ隊員だった
著者の、白バイの描写がものすごくリアル!

巡査長・野路明良は、白バイ隊員のエース
で、全国白バイ安全運転競技大会で優秀な
成績を収め、Y県警本部を優勝に導いた
男だった。しかし、後輩とともに捜査中
車の事故で後輩を死なせたうえに、自分自身も
右手の指二本に障害を負い、二度と
白バイには乗れなくなった。
リハビリ後の復帰先は、吸収合併で
出来た姫野市に置かれる、姫野署の開署準備
のために臨時で作られた総務担当だった。
その異動で、野路は自棄になっていた。

四日後に開署予定の姫野署の準備は終盤を
迎えていた。
野路は、総務担当の山辺礼美らとともに
最終チェックに明け暮れている。
ところが、不審な出来事が次々と起こる
発注外の大型什器の搬入、防犯カメラの
誤作動、不審人物の目撃など・・・。
本部のお偉方を招いてのセレモニーに
暗雲が立ち込める・・・。

一方Y県にそびえる信大山のキャンプ場で
人間の白骨遺体が発見された!?
捜査本部が出来るが、身元が判明しないまま
捜査は膠着状態に陥った・・・。

開署準備に追われる野路らを放って、
ベテラン刑事だった上司の飯尾は、
白骨死体の捜査に首をつっこむ始末・・・。

だが、飯尾の行動は膠着状態だった
捜査が動き出すきっかけとなるのだ。

開署前の姫野署で続く不審な事件、
さらに白骨死体の事件が交差した時
迷宮入りしていた事件に繋がる!

しかしその事が、姫野署を大惨事に
巻き込んでゆく!

白バイが疾走し、奇跡的な運転技術を見せる
シーンは、元白バイ警官の知識と経験が
これでもかと発揮され、圧倒的な
臨場感で描かれている。

大胆不敵、空前絶後の展開で読者を
翻弄する、稀にみる面白さで迫る警察小説!

『開署準備室 巡査長・野路明良』
著者:松嶋智佐
出版社:祥伝社(文庫)
価格:¥770(本体¥700+税)

大江戸科学捜査八丁堀おゆう、第9弾!「司法解剖には解体新書を」

江戸と現代を往来する、元OLの関口優佳・
通称おゆう。
江戸で起きた事件の謎を現代の科学捜査で
解き明かす!
めちゃめちゃ面白い時空探偵ミステリー。

現代では、コロナ感染拡大第2波が囁かれる中、
優佳こと、女親分・おゆうは、南町奉行所同心・
鵜飼伝三郎と源七親分とともに、鵜飼の上司・
戸山から内偵を依頼される。

前長崎奉行の配下だった、河村右馬助の死に
不審な向きがあるという。
おゆうたちが調査を始めると、ほかにも
同じ状況で急死していたものが現れた。
唐物商の平戸屋の主人だ。
もしかして、食あたりか・・・?
しかし二人とも医師の見立ては現代で
いうところの心臓麻痺で亡くなったらしい。
二人の死の共通項を調査しているところで
また新たに急死者が出た!

おゆうたちは毒殺ではないかと疑いを持つ。
そして、おゆうは東京へもどり、事件の
詳細を宇田川に報告。
当時の江戸にはない「毒物」が使われたのでは
という推測がたったが・・・・

杉田玄白、その弟子や漢方医のほか、
蘭学医が徐々に増えている背景の中、
毒殺事件の謎を追う、おゆうたち。
毒は何が使われたのか?それを突き止めるには
司法解剖しかないが、江戸時代は禁じられている。
果たしてそれが出来るのか・・・?

歴史の事実とフィクションが見事に融合。
さらにロジカルに解き明かされる真相に驚愕!
毒の正体と、一連の事件の黒幕は誰なのか?
など「謎解き」の醍醐味が味わえる。
安定した面白さでシリーズが積み上げられてゆく。

そして、いつもやきもきさせられるのは
おゆうと鵜飼と宇田川の三角関係は
どう転ぶのか・・・だ。
宇田川のおゆうに対する気持ちは何?
気になる気になる~~~。

ということで、大変面白かった。

『大江戸科学捜査八丁堀おゆう 司法解剖には解体新書を』
著者:山本巧次
出版社:宝島社
価格:¥780(¥709+税)

刑事・毒島シリーズ第1弾!「作家刑事毒島」

先に第2弾「毒島刑事最後の事件」を
読んでしまい、しまったと思ったのですが、
順番として良かったかなと・・・。
その毒島の犯人を追いつめる毒舌の
鋭さにすっかりはまってしまいました!

刑事を辞めた後、人気作家となった毒島。
しかし、刑事として優秀だった毒島は、
刑事技能指導員として警察に復職。
作家と警察官、二足の草鞋で忙しい日々を送る。

新人賞の選考に関わる、下読みを担当する
編集者が刺殺死体が発見された。
何度も新人賞に応募しては下読み段階で
振り落とされ、その編集者に恨みを
持つ三人が容疑者として浮上するが
捜査は難航する。
そこで捜査一課の犬養刑事は、作家の
毒島を訪ねるよう、新人刑事・
高千穂明日香に助言する。
【ワナビの心理試験】

編集者としてとびきり優秀だった
男が変死体で発見された。
警視庁捜査一課の犬養と高千穂らが
捜査を開始すると、殺害された編集者は
二人のラノベ作家とトラブルを起こして
いたことが判明する。
容疑者を二人に絞ったが鉄壁のアリバイがあり、
またしても捜査は行き詰まってしまう。
高千穂は、毒島の仕事場所へ向かう。
【編集者は偏執者】

エンタメ系の賞で最も歴史のある新人賞の
授賞式。あるベテラン作家は、今回受賞した
新人作家の受賞に最後まで反対していた。
しかし、出版業界を盛り上げるためということで
受賞を決めてしまった。
デビュー後に作品を発表できない未熟な
新人作家に厳しい発言をするベテラン作家。
そのベテラン作家の無惨な死体が
彼の事務所で発見される。
シュレッダーに巻き込まれた死体・・・
事故か殺人か?
【賞を獲ってはみたものの】

書評家気取りで、ブログで作家の作品をおとしめる女性。
作家に恋愛感情を持ち、ストーカーまがいの
行動を繰り返す女性。
作家希望の女性。ある作家の作品と自分の作品の
類似点を探しその作家に自分を売り込もうと必死だ。
そんな3人は、ある作家のイベントに参加した。
おまけにイベント後の打ち上げの会にこの3人が
抽選で当たってしまった。
しかし、その打ち上げはこの3人によって修羅場と化した。
その後、作家の死体が発見される。
【愛涜者】

毒島の作品のドラマ化が決まった。
しかし、毒島側はドラマ化に際し、
原作とはおよそかけ離れた内容に納得できず
抗議文を送った。
しかしドラマプロデューサーは抗議など
無視して撮影を始めようとした。
回答をよこさないテレビ側。
毒島は回答をするまで徹底的に抗議し続けた。
強硬な態度をとるプロデューサーと毒島との
間で疲弊する、ドラマ監督と脚本家・・・。
そんな中、ドラマプロデューサーの死体が
地下通路で発見される!
【原作とドラマの間には深くて暗い川がある】

今回は、出版業界のドロドロとした闇に
焦点を充てる。
出版業界の一番はしっこにいる書店員から
見ると興味深い内容で、とても面白かった。

自分を大物作家だと思っている勘違い新人作家や、
作家の作品を勝手に変えてドラマ化する
エゴの塊のようなプロデューサーなどなど
今回の登場人物たちも、エリート意識に踏み
固められ歪んだ自尊心の持ち主ばかり。
しかし、「殺人」は許されない。

毒島は皮肉と揶揄を含んだ毒舌で容疑者たちを
極限まで追いつめ、事件の真相を暴き、
犯人を特定する。

この容赦ない毒舌、「超」痛快!!

『作家刑事毒島』
著者:中山七里
出版社:幻冬舎(文庫)
価格:¥715(本体\650+税)

バチカン奇跡調査官シリーズ最新作!「秘密の花園」

藤木稟さんの人気シリーズ「バチカン奇跡調査官」
最新刊は、「秘密の花園」(角川ホラー文庫)。
アメデオ・アッカルディ、エレイン&ジュリア、平賀&ロベルト
が登場する三つの短編が収録されている。

アッカルディ大佐は息子から「父さんみたいな
りっぱなカラビニエリの軍人になりたい」と
言われ、とても幸せに感じた。
そんなアッカルディ大佐のもとへ、またしても
不可解な事件の捜査が舞い込んできた。
「ローレン」案件だと思ったが、息子のために
今回は自分一人で捜査をすることに決める。
汚職事件の真っただ中にいる、保険大臣が
殺害された。その殺人を自白したのはなんと
獄中にいる殺人鬼。自分の生霊が脱獄して
犯行に及んだと言っているらしい。
アッカルディ大佐は、ローレンの支援なしに
真相に辿り着けるのか!?
【生霊殺人事件】

ウオール街でいくつも会社経営を行うルッジェリの
第一秘書・エレインは、彼の命令で
ヨーロッパ貴族の血をひくセレブ・ジュリアの
身辺調査をすることになった。周到な準備を整え
ジュリアに面会することに成功するが・・・。
自らもセレブになるべく、人生の全てをかけて
磨き抜いた才能を身につけたエレイン。
彼女の計画は成功するのか?
【エレイン・シーモアの秘密の花園】

奇跡調査官のロベルトは、平賀の誕生日
を祝うために食事に誘った。
その帰り道、何かを探している少女に出合った。
聞けば。飼い猫が行方不明になったという。
泣き出した少女を放っておけず、二人も猫
探しに協力することに!
二人の優しい行動に心が癒される。
【迷い猫】

シリーズ中、人気のキャラクターが登場する短編集。
猟奇殺人事件に挑む、アッカルディ大佐・フィオナ
ローレン。不可能犯罪「ハウダニット」と
犯人あて「フーダニット」。謎解きの醍醐味が
味わえる、短編ながら読み応えあり。
エレインが多彩な仕掛けと駆け引きで
ターゲットに迫る物語は読んでいて「凄い」と
唸ってしまった。
二つの短編は、殺人であったり、誰かを
騙したりという人間の暗い部分が描かれているが
ロベルトと平賀の優しさが炸裂する章で心が
救われた。

『バチカン奇跡調査官 秘密の花園』
著者:藤木稟
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥792(本体¥720+税)

お葬式がミステリーに!?『葬式組曲』

天祢涼さんの『葬式組曲』読了。
本書は第13回本格ミステリ大賞候補作、
第1章の「父の葬式」は、第66回日本推理
作家協会賞短編部門の候補作になった。
一度文庫化されたが、今回再文庫化にあたり、
全面改稿されている。
著者の思い入れの深い作品。

20代の女性社長・北条紫苑率いる「北条葬儀社」。
妙な関西弁をしゃべる餡子、寡黙で職人肌の高屋敷、
生真面目な新入社員の・新実。癖が強い社員
ばかりが目立つが、遺族からは絶大な信頼を
得ていた。
それは、彼らが故人の遺した謎を解明するという
意外な一面を持っていたからだ・・・。

父との確執で、実家から距離をとっていた
男性のもとに、父の死の知らせが届いた。
兄にすべてを任せようとしたが、
兄から「喪主は次男のお前が務めること」
それが父の遺言だと言われた。
なぜ・・・?
「父の葬式」

北条葬儀社の新入社員・新実は、生前相談に
来た女性から、祖母が亡くなった時、火葬は
したくないと言われていた。それからしばらく
あと、その女性から祖母が急逝したので、
葬儀を任せたたいと言われた。
彼女の条件は棺に拘ること、そして「火葬」
は絶対に避けたい事だった。
彼女はなぜ頑なに「火葬」を拒んだのか・・・・?
「祖母の葬式」

七歳の息子が亡くなった。父親は与党に所属する
政治家。与党は彼の息子の葬式を大々的に
執り行うと言った。政治家は党の言うことに従った。
ところが妻が反対した・・・。
通夜の前夜、霊安室で妻と息子は二人きりに・・・。
ところが、息子の遺体が消えた!
この夜一体何があったのか!?
葬儀を任された北条葬儀社は、遺体消失の謎に迫る。
「息子の葬式」

妻が友人の家で首をつって死んだ。
事件の可能性もなく、自殺と断定された。
しかし、夫は妻の死を受け入れられない。
それでも何とか生きていかなくてはと・・
夫は北条葬儀社に妻の葬儀の依頼をした。
そのころから、夫は妻の金切り声が聞こえる
ようになったという。
妻の死にまつわる謎を、北条葬儀社の面々が
解明することに・・・!
「妻の葬式」

北条葬儀社の高屋敷が亡くなった。
彼が亡くなったことで、これまでの
葬儀を振り返る・・・。
すると不可解な「謎」が浮かび上がる。
それぞれ、故人が遺した「謎」は解決
したはずなのに・・・・!!!
「葬儀屋の葬式」

一つ一つの短編には、人の死によって
起こる思いもよらない事件が描かれ、
そこには、緻密な「謎」が仕掛けられる。
心に残る4つのミステリー。
「天祢流」と呼びたくなる独特の世界観に
引きこまれる。
そして、思わず「ギョッ!」とさせる
ラストにまたしてもやられてしまう!
異彩を放つ!連作短編ミステリー。

『葬式組曲』
著者:天祢涼
出版社:文藝春秋
価格:¥825(本体\750+税)